Story12 勝負です。2
俺、人間としての名前はサム。
そして、もう一つの顔『医術神・イムホテプ』がある、親父ことジンのお父さんだ。
ジンが走り去った後直ぐに、『光聖龍』の咆哮が聞こえた。
「向こうから、お出でとはな」
ジンの事は正直に言って凄く心配だ。
今の実力では、恐らく倒せないだろう。だけどジンは待っていろと言った。
俺が行けば五分で『光聖龍の逆鱗』を取れるが。五分もミッシェルから離れたら、死んでしまう可能性がある。
「……信じて待つしかないよな」
「ふふ、そうよ」
俺の独り言に妻、ローレルが答える。
「じゃあ、あなた。私が調合の準備をするから、ミッシェルの事お願いね」
「おう」
ローレルは俺が冒険者をしていた頃からの仲間だ。
その頃からローレルには、調合のやり方を教えている。
俺と同じくらいには、だから調合の準備は任せても良いだろう。
「あと、落ち着いたら私に隠してる事全部話してね。ジンと一緒に……ふふ」
「……おう」
ジン。どうやら俺とお前は、後で地獄に行く事になるらしい。
だからちゃんと戻って来いよ。天国になんて行くんじゃねぇぞ。
『グォォオオオオオオ!!!』
二回目の咆哮が聞こえた。
龍の威嚇か……。
ジンなら大丈夫だと思うが、常人なら動けなくなる。
「……っ! 魔力量が半端じゃ無いな」
村の中心から、膨大な魔力を感じられる。
しかし直ぐに『光聖龍』の悲鳴に似た、咆哮が聞こえる。
『グァァアアォォォオオオオオオ!!!!!』
おお? やったのか?
いや、生命力はまだ感じられる。
『光聖龍』の生死を確かめていると、生命力と共にさっきよりも大きな魔力が感じられる。
「……おいおい。これは流石にやばいんじゃないか」
「大丈夫よ。血は繋がってなくても、私達の息子なんだから」
「ローレル……」
俺の独り言に答えたのはまたしても、妻ローレルだった。
ローレルは調合に必要な道具や材料を庭に持って来た。
「ここで準備すれば、ジンが『光聖龍の逆鱗』を持ってきて直ぐにできるでしょ?」
「あ、ああ」
「さて、この調合は初めてだわ。指示してちょうだい?」
「ああ、まずは―――」
その時、世界が、全てが、白く発光した。
……あれ? 誰かとかぶってる?




