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初期練習作(短編)

最高の素材とは

 パーツの内部が曇っている。

博士は注意深くコードをいじった。

人形からはあらゆる機械が飛び出て、

内部の機構も丸見えになっている。


 「おじいちゃん、早くしてよ」

人形が声をあげて急かす。

「お客さんが来たらどうするの。

恥ずかしいでしょ、何とかして」

泣きそうである。

しかし博士も泣きそうになっていた。

全部をきれいにするには、

数時間はかかりそうだ。


 「ピンポーン」

インターホンが鳴る。

人形が悲鳴を上げる。

博士は玄関を開けた。

「集金でーす」

「ありがとう、いつもすまないね」

「どうもありがとうございました!」

やりとりが終わって博士が戻ると、

人形がいない。

あいつめ、どこへ行った。

まだ半分ぐらいのパーツは外にある。


 「おじいちゃん……もういい?」

かぼそい声が聞こえる。

博士はベッドの下を覗き込んだ。

そこには見るも無残な光景が広がっていた。

猫が空っぽの人形のお腹の中で丸くなっている!

大変だ!

毛が入ったらどうしよう!!

ただでさえ手がつけられないのに!!!


 人形が這い出てきたが、

やはり様子がおかしい。

自分の身体をペロペロ舐めだした。

やはりダメか。

しかし女子中学生の髪の毛よりはましかもな。

博士はため息をついた。


 2年後、博士は外出していた。

あの人形も一緒に歩いている。

人形はこぎれいな格好をし、

礼儀正しく人々と接している。

やはりこの素材が一番だ。

博士はおおいに笑った。

ヤマアラシの毛。

失敗が多いほど学習し、利口になる。

人形でも人間でも同じだ。


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