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1、引き継げと言われても。

まだまだ説明ありません。

ごめんなさい。

 油断していたんだ。パニックに陥っていた。

非日常過ぎて焦って判断をミスったんだ。……言い訳でしかないけど。



 小動物は好きだ。つい愛らしさに目線を合わせる為、屈むと可笑しなことに気がついた。

「あれ?」と、自分の手を見る。何だか小さい手のひらに細い腕。着けていた筈の腕時計は無くなっている。ジーンズを履いていた筈なのに素足が見え、スカートの裾が見える。足元を見ればローヒールのパンプスはサンダルに変わっていた。身体を確認すればワンピース。多少邪魔だった胸はペッタンに。腰に手を当てればくびれは無く、すとん。要するに子どもの体型だ。頭を抱えるとショートカットだったはずの髪の毛が肩まで伸びている。

「何があった?」と、呟くが自分の口から出た声まで子どもの声だ。

いやいやいやいや、可笑しいだろ!?

 パニックに成っている自分を余所に羊モドキはスピスピと鼻を鳴らし摺り寄る顔を両手で掴むと、「なに?」と問うような目で見てくる。

「ココドコ?」

羊モドキに聞いてみる。端から観たらどう思うだろうか?変な人だと思われるだろうが辺りには人が居なかった筈だ。

「どうしてこうなった?」

続け座間に羊モドキに問いかける。羊モドキが答える訳がない。内心自問自答しているだけなのだが。

「知りたい?」

羊モドキから声がする。しかも、良い部類の声音だ。

「しゃべった!?」

「この仔じゃなくて、私だよ。」

羊モドキの上から聴こえる。人が居ないと思っての行動に固まってしまった。嫌な汗が背中に流れた。

「どうかした?」

固まる自分へ声の主から問いかけ。身体を動かさず羊モドキから目線をずらすと、羊モドキの後ろに人の脚が見えた。手のひらにまで汗が出てきた。恐る恐る顔を上げ声の主を見上げるが、屈んだままでは胸の辺りまでしか見えなかった。

「もう少し上だよ。」と、声の主。反応するよう立ち上がり顔を見上げる。声の主は中々の長身の男性、子どもの身長ではかなり見上げる事になる。

「説明要る?」

「要る要る。」

当たり前じゃないか、要るに決まっている。

「もう陽も沈みきる、場所を移そう。」

声の主である男性が歩き始めると羊モドキがそれ伴いつい行く。良いのか?この流れでついて行くと何だか面倒な予感がするが……。

「おいで。」

動き出さない自分に気付かれたのか、戻ってきて手を掴まれると、引き摺られる様に何処ぞの家?まで連れていかれた。


 こじんまりしたログハウスにたどり着く。年期の入った家だ扉の立て付けが悪くなっているようで音を立てる。人が住まなくなってそれほど経ってないだろうが、足を踏み入れる溜まったいた埃が舞うのが分かる。突然灯りがついた。

「暗いままじゃ困るからね。」

自分の手を引いていた男の空いたいた手のひらに光の玉が光っていた。どんな原理だろうか。しかし、灯りがあるので男の顔が漸く見えた。声だけだと年齢としては青年とは言い難い感じだったが、若い。二十代半ばと言ったところか。欧米風の顔立ちに整った顔、美形。金に近い銀色の髪を後ろに束ねているが短い、尻尾のようだ。

「見惚れた?」と、微笑まれた。観察したのがバレた。

目を剃らし、室内を眺めると現代日本とはまるで違う創りに目を引いた。入口の扉のから直ぐに水回り。蛇口ではなく大きな水瓶。横には洗い場とかまど。作業台に中央にはテーブルと四脚の椅子。壁の棚には大量の薬品らしきビンと本。幾つかの籠と乳鉢などの道具類。例えるまでもなく魔女の家と。若しくは薬術師か。知らない草花がドライフラワーに成っている。埃のなかにハーブの薫りが混ざっているのはそのせいか。

「私の家ではないが、まぁ、座って。」

良いのか人の家に勝手に上がって?不信に思いつつも進められた通りに向かいの席に着く。テーブルの上には埃がない、いつの間に拭いたんだ。羊モドキまで隣の席に着いて毛繕いし始めている。テーブルの中央には光っている玉が数センチのところで浮いている。

「じゃあ、始めましょうか。」

と、ニコリと微笑まれ、反射的に営業スマイルをし、頷いた。

「手を出してもらえますか?」

素直にテーブルの上に手を出すと、その手を光る玉に置かれた。

「え……?」

何だ?頭のなかに誰かの膨大な記憶なのか、記録が広がっていく。短時間で映画を何本も観ているような感覚に神経が目眩を起こした。拒絶するべきなんだろうがすんなり入ってくる事に驚いた。

「────適合。」

男の声に何かの鍵が開く音がすると同時に身体に熱が籠る。訳の解らない感覚が駆け走る。追い付かない感情。


 誰もいない。

小さな世界。

どこまでも白い光のなか。

小さな小さな自分。

突如現れた人。

しわしわの手が頭を撫でる。見上げれば深いシワを刻んだ老人が笑う。優しい笑顔。心地好い一時。

抱き付きたくなる懐かしさに身体が動く。

世界が紅く染まる。足元には紅い紅い水。

鉄臭い匂いに血だと気づく。

血溜まりの中央には先程の老人。

自分の胸に突き刺さる刃物。

老人の胸にも同じ刃物。

声にならない叫び、頭のなかに点滅する警告。

"まだいる"と、何かが感じた。

振り向くとよ人影が不気味に嗤う。


『これで──は傾いた。』


───い、イヤァァァァァァァァァ!!」

「覚醒。」

男の声に感覚が戻る。気が付けば大量の汗と涙が流れていた。

「……わかる?」

優しい声色、触れられている手から温かさ。震えと血の気の引いた自分の手は痛いくらいに冷たい。

「引き継ぎは完了したね。」


すみませんが、意味がわかりません。考えが追い付きません。


男の眼を見る、瞳の色は形容しがたい色をしていた。

目の前にいるのは"ダレ"だ。人なのか。ナニモノだ。

疑問だらけだ。自分は何をしている。

解らないモノについてきたものだ。

流れてきたのは老人の記憶。この家の住人だった人。

懐かしいと感じたのは自分"だった"から。


ここはファーレン。『日本』と言う国がある世界とは異なる平行世界。

ファーレンの東の人となった。

自分の名前がまだ出ませんでした。どうしよう。

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