表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸運の器  作者: ユキ。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/13

2-3

 救急隊員が到着し、念のため佐藤少年は病院へと搬送されていった。付き添いには男性教師が行くことになったが、その前にハルカは盛大なる嫌味を言われることとなった。結果としては特に問題がなさそうに見えたが、それでも一歩間違えば大変なことになってたかもしれない。だから、ハルカは自分の判断が間違っているとは思わなかった。おそらく、あとから現れた三人がいなかったら本当に無事では済まなかったと思っているが、その三人をどうしたものかとハルカは頭を悩ませていた。自分の後ろで心配そうに佐藤少年を見送っている三人を振り返る。

「ところで、あなたたちはなぜ学校にいるの?シュミットさんとはどう言う関係?」

 カノンはいいとして、あとの二人は明らかに部外者だ。自分に威厳があるとは思えないが、それでも大人として教育者として毅然とした態度をとらなくてはいけない。ハルカの問いに三人は顔を見合わせる。リンが口を開こうとするが、それをカノンが制して答える。

「さっきも言いましたが、二人はわたしを迎えに来てくれた兄たちです」

「お兄さん?本当に?でも、確か・・・」

 先ほど頭の片隅へ追いやった疑問が再び浮上する。学校に提出された書類には兄弟の類の記載はなかったはずだ。ただし、カノンが正確な書類を提出してあるかは別の話だ。

「シュミットさん。あなたは一人っ子のはずじゃなかったかしら?」

「先生。すみません。これには少し複雑な理由があるんです」

 真っ直ぐに見返すカノンの目を見て、ハルカは肩の力を抜いてニッコリと微笑んだ。家庭の事情は様々だ。必ずしもすべて包み隠さず学校に報告しているとも限らない。それに、この数か月カノンを見てきてとても優しく気配りのできる子だということは理解していた。

「そう。でも、いくらお兄さんでも勝手に学校の中に入ってきちゃダメでしょ」

「あの・・・」

 リュウが手を挙げて割って入った。ハルカは無意識で身構えてしまう。リュウは、そんなハルカの様子を見てにっこりと人懐こい笑顔を見せた。

「カノンのこと怒らないでやって。カノンが倒れたって連絡があって親の代わりに俺らが迎えに来ただけだから」

 リュウの言葉に、カノンはうんうんと頷いた。それにリンも加勢する。

「そうなんです。僕たちはただカノンを迎えに来ただけであって決して怪しいものではありません」

「リン。お前、それは怪しい奴がいうセリフだって言ってなかったか?」

「・・・何のことです?」

 すっとぼけるリンを見て、カノンが楽しそうな笑い声をあげる。その様子は、本当に仲の良い兄弟のように見える。少なくとも、カノンにとって害になる人物ではないのだろう。

「シュミットさん、体調は大丈夫なの?お迎えが来ているなら早くお家に帰ったほうが・・・」

「いえ、もう大丈夫です。さっきの出来事にびっくりしちゃって体調の悪さがどこかに行っちゃいました」

「そう・・・。そうよね。さっきはびっくりしちゃったわよね。でも、本当にさっきのことは何だったんだろう・・・」

 最後の方はハルカ自身、自問自答するような形で言葉が消えていった。

「せーんせ」

 ひょいとリュウがハルカの顔を覗きんだ。

「えっ?あっ、はい」

「大丈夫?」

 リュウが心配そうに更にハルカに顔を近づける?

「えっ?あの、だ、大丈夫だから」

 思わず後ずさったため、足を滑らせて後ろに転びそうになる。

「おっと」

 すかさずリュウがハルカを抱き抱える形で受け止めた。

「わっ。ちょ、大丈夫だから。離して!」

「こら。暴れない」

 二人のドタバタ劇をリンとカノンは生暖かい目で見守っていた。

「ねえ、リンくん。リュウくんっていつもあんな感じなの?」

「いえ。リュウは誰に対しても基本的には態度が変わらないんです。でも、どうやらあの女性に対してはちょっと違う感じがしますね」

「そうなんだ・・・。でも、たぶんそれはリュウくんだけじゃなくて、ハルカ先生の方もそうなのかもしれない」

「そうなんですか?」

「うん。なんとなくそんな感じがする」

 二人がそんな話をしているとは露知らず、リュウとハルカはお互いに表現しきれない感情を持て余しているようだった。

 ようやく一息ついたところで、「ハルカ先生」とカノンが切り出した。

「さっきの子たちは、六年生でしたよね」

「ええ、そうね」

 多少の気恥ずかしさを感じながらも、教師らしくいようと姿勢を正してカノンを向き合った。

「何があったんですか?」

「それが私もよくわからなくて。私もたまたま通りかかっただけたから」

「そうですか・・・。先生は、あの子達をご存知ですか?」

「えっ?うーん。学年も違うからあまりよくはわからないけど、塚越くんのことはちょっとだけ知ってるくらいかしら?」

「ツカゴシ・・・」

 リンの呟きを受けてリュウが納得顔で言った。

「なるほど。あの子がツカゴシショウか」

「えっ?」

 不思議そうにリュウを見上げるハルカの様子を見て他の二人は深い溜息を吐いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ