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幸運の器  作者: ユキ。


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6/10

1-5

  三人は薄暗く圧迫されるような空間にいた。壁一面にびっしりと書物が並んでいる。とても古そうなものから比較的新しいものまで様々だ。

「にしても、まさか茶室の地下にこんなところがあるなんてな」

 物珍しげに辺りをキョロキョロと見回しながらリュウが呟く。

「確かに。いかにも重要機密が隠されてるって感じですね」

「ここにあるのは全て器に関する書物なの。どれでも好きなものを読んで大丈夫だから」

 リュウは手近にあった本を一冊取り出しパラパラとめくった。

「なるほどな。これには大した情報は載ってないけど、器に関しては何となく理解した」

「はー。相変わらずですね、リュウ。まあ、こういう時にはあなたのその才能は頼りになります」

 カノンは不思議そうに二人のやりとりを見ている。その視線を受けてリンが補足説明をする。

「リュウは、今みたいに本をパラパラ読むだけで一瞬で理解できてしまうんですよ。宝の持ち腐れ的なところもあるのですけどね」

「ひでー言われようだな。まあ否定はしねーけど。それより、とりあえず手分けして必要な情報を頭に叩き込むぞ」


 それからしばらくはパラパラとページを繰る音だけが静かな空間に響いていた。

 リュウは一人だけものすごいスピードでページを繰っている。カノンは、その様子から目が離せないようだった。リンはそっとカノンの横に立つ。少し腰をかがめてカノンの耳元に口を寄せ、なるべく小さな声でカノンに話しかけた。

「リュウは、少し軽薄そうに見えるかもしれませんが誰よりも人のことを考えてるんです。だから、今もああやって必死に少しでも情報を得ようとしてるんですよ」

 リュウから目は離さないままカノンはコクンと頷いた。

「やっぱりリュウくんはコウくんのお兄ちゃんだね。二人とも自分より人のこと考えちゃうところがよく似てると思う」

「そうですね。リュウもコウも本当によく似た兄弟です。それに、リュウは先ほどの話でコウの真意を察したんでしょう。だから、今はおそらくコウを探すよりも例のショウって子のことを考えると思いますよ」

「うん。だったら、わたしたちも何か手がかりを探さなくちゃね」

 カノンは、リュウからやっと視線を外すと決意に満ちた視線をリンに向けた。リンもその視線を受けて、頷きを返す。二人も手近なところから書物を手に取るとあとはただひたすら時間が許す限り調べ始めた。


 数刻後、三人は茶室に戻ってきていた。地下の書物を持ち出すことは出来ないらしく、ただそこには疲れ果てた三人の姿があるのみだった。

「で、だ。とりあえず結果報告だな」

「そうですね。僕の方でわかったことといえば、比較的最近の書物に書いてあった、器を独自に研究している組織があるということでしょうか」

「その組織のことならちょっとだけ聞いたことあるかも。それと、わたしが調べたことも関係あるかも」

「どういうことだ?」

「つい最近の調査書を見つけて読んだんだけど、それがその組織に属するある人物に関してのものだったの」

「ふーん。それってさ、例のショウって子と関係あるのか?」

 カノンは、驚いたように目を見開き頷いた。

「そう、なの。ツカゴシって言う研究者に関してなんだけど、ショウくんの苗字もツカゴシって言うの」

「なるほど。血縁者と言う可能性がありますね。その場合、かなりの確率でこの件に関わってそうですね」

「そうだな。じゃあまずは、やっぱりそのショウって子についてもっと調べてみた方がいいな」

「そうしましょう。それで、リュウは何か分かりましたか?」

「うーん、そうだな・・・。一つわかったことがあるとすれば」

「あるとすれば?」

「みんな器に踊らされすぎだってことくらいか?」

「どういうこと?」

「そのまんまの意味だよ。あそこの書物に書いてあったのは、まずは器ありきの話ばかりだ。まあ、当たり前だけどな。そう言うものばかり集めたって言ってたし。でもな・・・」

 リンとカノンはじっとリュウの次の言葉を待っている。リュウは、どこかこことは違う場所を見るような目でぼんやりと空間を見ている。

「人間の運・不運ってものがそんなもので決められるのが気に入らねー。それにそのせいでしなくてもいい苦労をもしコウがしているんなら、そんなもん俺がぶち壊してやるよ。それに、カノン」

 リュウの視線がカノンを捉える。カノンは、その視線に吸い寄せられるようにリュウから目が離せなくなった。

「俺は、カノンも犠牲者だと思ってる。まだ十年しか生きてねーのに使命だのなんだの背負わされてんのが気に入らねーの」

「でも・・・」

「カノン」

 リンが困惑しているカノンに声をかける。

「リュウは、口が悪いですがあなたのことを心配しているんです。賢いあなたにはわかっているとは思いますが」

 カノンが小さく頷く。そして、今まで以上に強い意志を瞳に込めて二人に向き合った。

「わたしたちの代でこの運命を変えたい。だから、リュウくん、リンくん力を貸して!」

「当たり前だろ。コウもカノンもショウも、それに空杯とかいう子も、みんな普通の子供として過ごせるようにしてやりてーしな」

「そうですね。そのためにはまずは作戦会議です」

 三人は新たな誓いを胸に今後について長い間話し合ったーーー。

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