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そこは、どこにでもあるような公立の小学校の前だった。夏休みまであと数週間といったところで、夏の日差しに照らされた木々がキラキラと輝いているようだった。そんな眩しい日差しとは裏腹の表情を浮かべている学生服姿の少年が二人いる。
そのうちの一人の少年は、リュウと言う。目鼻立ちがはっきりとしており、薄茶色のふわふわのくせっ毛は陽の光を受けて金色にも見える。もう一人の少年は、リンと言いサラサラの黒髪を学生らしくセットし落ち着いた雰囲気を醸し出している。
「なあ、リン。俺はやっぱり学校が怪しーと思うんだよな」
「確かにほかに原因が考えられないので当たってみる価値はあると思いますが・・・」
二人が小学校の前で話し込んでいると、一人の年配の男性教師が近づいてきた。
「君たち。我が校に何か用かい?見たところ聖嶺学院の学生さんのようだが・・・」
二人は顔を見合わせると、最初にリンが口を開いた。
「僕たちはこの学校に通う生徒の家族なのですが、最近何か変わったことはありませんでしたか?」
教師は一瞬険しい顔を見せたが、すぐに柔和な表情に戻ると取り繕うように二人に接しだした。
「何のことかな?何もおかしなことなど起こってなどいないよ。それより、今日は学校は休みなのかな?まだ夏休みには早いようだが・・・」
そのあからさまな態度が逆に不信感を募らせることに気がついていないのだろうか?リュウが一歩前に出る。
「兼田幸生。って言えばわかる?」
その言葉に、教師の顔がさっと青ざめる。
「ははは。何を言っているのかね?私には何のことだかさっぱり。担任の神谷先生にでも聞けば・・・」
「へー。一生徒のことなのに担任の先生まで知ってんだ」
「いやいや。教師であればそれぐらい・・・」
「あなたは、全校生徒の名前と学年、クラスまで把握しているのですね。素晴らしいです。それなのに、何のことかわからない。それって、矛盾していませんか?」
しどろもどろになっている教師に対して、リンが畳みかけるように正論をぶちかます。リュウは、少し教師のことを気の毒に思いながらも、引く気はないので言葉をつなぐ。
「センセ。知ってること全部話しちゃってよ」
「だから、私には何のことかわからんよ!もう帰りなさい!!」
「帰るわけないでしょ?俺ら、コウのこと探してんだからさ」
「しつこいぞ!騒ぎ立てるようなら警察を呼ぶからな!」
「だーかーらー」リュウは、教師に一歩近づく。
「そんな警戒しないでよ」
教師は一歩後ずさる。
「き、君たち!いい加減にしなさい!身分もはっきりしないような、しかも子供に学校内部のことなど話せるわけがないだろう!」
「俺らは怪しいもんじゃないって。なあ?」
リュウは同意を求めるようにリンを見るが、少しあきれ顔のリンの顔が目に入った。
「リュウ。そのセリフは怪しい人が言うやつですよ」
「はぁ?じゃあなんて言えばいいんだよ」
リュウは拗ねたようにリンを睨めつけるが、リンは意に介した様子は無い。
「大変失礼いたしました。彼も悪気があったわけではないんです。許していただけますか?」
先ほどの自分の発言はどこ吹く風で、リンは涼しい表情でそう告げる。リンのその謝罪しているのに、どこか相手を圧倒するような雰囲気に飲まれ、男性教師もタジタジになる。
「ま、まあ反省しているなら大事にはせんが・・・」
「それでは・・・お話を聞かせていただけますね?」
男性教師の返答を聞いて間髪入れずリンは詰めよる。
「ちょっ、リン、てめぇ俺よりたち悪ぃじゃねえか」
「何がです?」心底不思議そうにリンはリュウのことを見る。
リュウは、ヤレヤレと軽く頭を振ると男性教師の肩にポンと手を乗せ同情するように言った。
「コイツマジでヤベーから知ってること全部話した方がいいぞ。センセ」




