表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤と黒の帳簿  作者: キロヒカ.オツマ―


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/33

第二十七章 別ルート

真がそれに触れたのは、意図的ではなかった。港区の小さな喫茶店。福祉関係者の集まりというより、昔話の延長のような席だった。煙草の匂いが壁に染み、灰皿の縁が欠けている。話題は軽く、名前は出ない。だが、言葉の間に、聞き覚えのある配置が浮かぶ。


「昔はさ、番号なんて適当だった。誰が向いてるかで決めてた」。年配の男が言い、別の女が頷く。「あの南の施設、夜はきつかったでしょう」。真の指が、無意識にカップの縁をなぞる。南区。夜勤。配置。仁からは聞いていない言葉だ。


さらに、誰かが続ける。「一度、うまく収めたつもりが、後で別のところに出た」。声は小さく、確信はない。だが、真には十分だった。失踪した職員の経歴と、母の時代の話が、同じ線上に並ぶ。


帰り道、真は携帯を見つめた。仁に連絡する理由はいくらでも作れる。それでも、指は動かない。話されなかった事実は、意図的に伏せられたのか、それとも言葉になる前に削られたのか。その判断がつかない。


夜、部屋で真は封筒を取り出す。開かない。紙越しに、同じ硬さを確かめるだけだ。仁が選んだ沈黙と、自分が拾った断片。そのズレが、静かに広がっていく。


窓の外で、港のクレーンが赤く点滅する。真は一瞬、何かに気づきかけ、視線を逸らした。その仕草は、幼い頃から変わらない。別ルートで辿り着いた事実は、まだ形を持たない。ただ、確かにそこにある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ