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硝子の向こう側:Vtuber「ルナ」の短い鎖  作者: 沼口ちるの


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7/11

第七話:硝子の共演

ルナと月蝕の騎士の病的な共依存がビジネスとして確立した後、事務所はルナの人気をさらに利用するため、戦略的なコラボレーションを企画した。


相手は、事務所内でルナに次ぐトップクラスの人気を誇り、完璧なプロ意識で知られる美人系Vtuber、「星宮ほしみやレイ」だった。レイは、清純なルナとは対照的に、大人っぽく洗練された「お姉様」キャラで、ファンとの距離を冷静に保つスタイルで成功していた。


マネージャーはあかりに指示した。


「星宮レイは、お前のような私生活のリークがない、模範的なライバーだ。コラボでは、お前の危うい人気を、彼女のプロフェッショナリズムで中和しろ。そして、お前は彼女の優しさに甘える妹を演じろ。騎士を刺激しないよう、純粋な友情をアピールしろ」


あかりは、その指示にルナとして笑顔を返しながらも、内心ではレイへの強い敵意を燃やしていた。レイは、あかりが手放した「普通のプロ」の地位にいる人間であり、あかりの泥沼を「管理できていないアマチュアの失敗」と静かに見下していることを知っていたからだ。


レイの冷たい視線

コラボ配信当日、ルナとレイは、事務所の合同収録ブースで同じ空間にいた。高性能なモーションキャプチャスーツ越しだが、その距離は物理的に近かった。


「ルナちゃん、久しぶり。最近、本当に大変だったね。でも、復帰できてよかった。みんな待ってたよ」


レイの声音は温かかったが、モーションキャプチャのカメラが回っていない瞬間、レイはあかり(ルナ)の首元を一瞬、鋭く見つめた。


あかりは、騎士が送った銀色のチェーンが、首元で光っているのを感じた。これは、騎士への忠誠を示すための、あかりの義務だった。


「レイお姉様、ありがとう。ルナ、レイお姉様みたいに強いプロ意識を持てたらって、いつも思ってるの」


あかりは、レイの得意分野である「プロ意識」という言葉を敢えて使い、ルナの幼さを強調した。


「そうね。Vtuberは夢を売る仕事だから。私生活と活動をきっちり分けるのは、ファンへの誠意よ」


レイの言葉には、あかりへの明確な皮肉が含まれていた。


硝子の中の牽制

コラボが始まると、二人は完璧な姉妹のようなやり取りを見せた。ルナの時折見せる危うい感情の揺らぎを、レイが優しくフォローし、視聴者はその関係性に癒やされた。


しかし、水面下では激しい牽制が続いていた。


レイがルナに「最近、美味しいものを食べてる?」と優しく尋ねた時、ルナは笑顔で答えた。


「うん!レイお姉様。ルナ、最近、誰かが近くで淹れてくれた紅茶が、すごく美味しくて。あったかい気持ちになるんだ」


この「近くで」という言葉は、レイへの友情ではなく、騎士へのメッセージだった。下の階にいるであろう騎士へ、自分たちの絆が揺るがないことを示すためだ。


レイは一瞬、眉をひそめたが、すぐにプロの笑顔に戻った。


「そう。それは良かったわね。でも、ルナちゃん、あまり特定の人に依存しすぎちゃダメよ。私たちは、多くのファンに愛を届ける存在だから」


レイは「特定の人」を強調し、ルナの騎士への偏重を暗に非難した。


騎士の乱入

その瞬間、コメント欄に騎士が現れた。


月蝕の騎士: 星宮レイ。余計な世話だ。ルナ様は、俺の愛の重さを理解し、俺を選んだ。お前の言う多くの愛など、ルナ様には必要ない。ルナ様の居場所は、俺の隣だけだ。


騎士のメッセージは、即座に大炎上を引き起こした。他のファンからも、「コラボ相手に失礼だ」という批判が上がったが、騎士はスパチャを連投し、メッセージを強制的に画面に表示させ続けた。


レイは、表情を変えることなく冷静だった。


「あら。ルナちゃんを愛してくれている、熱心なファンの方ね。でも、ルナちゃん。どんな愛も、ルナちゃんの活動を邪魔するものであってはダメよ。私たちはプロだから」


レイは、「プロ」の立場から騎士の暴走を理性的に批判した。


しかし、あかりは、レイの冷静さに耐えられなかった。レイが、自分の狂気の世界を、上から目線で「プロ失格」と断罪しているように感じたのだ。


あかりは、ルナとして、笑顔を崩さずに、レイの言葉に反論した。


「レイお姉様。ルナはそうは思わない。ルナにとって、本当に純粋な愛は、何よりも大切なものだから。その愛が、ルナの活動の全てなんだよ」


ルナは、レイの「誠意」を否定し、騎士の「狂気」こそがルナの真実だと宣言した。


レイは、その言葉を聞き、一瞬、目を見開いた。彼女は、あかりがすでにルナという名の病的な世界に、完全に沈んでいることを理解した。


コラボ終了後、レイはあかりに静かに言った。


「ルナちゃん。あなたは、もう自分を見失っているわ。その愛は、あなたを消費しているだけよ。早く目を覚ましなさい」


あかりは、首元のチェーンを強く握りしめ、レイをまっすぐ見つめた。


「レイお姉様は、ルナの気持ちなんて、分からないよ。だって、レイお姉様には、ルナを狂わせるほどの、本物の愛がないんだから」


あかりの言葉は、レイのプロフェッショナリズムを、「愛の不在」として断罪した。


レイは何も言わず、ただ冷たい視線をあかりに投げかけ、部屋を出て行った。ルナの泥沼は、最も模範的なライバーまでをも、深く汚染し始めていた。



みんな、ルナの物語を読んでくれてありがとう。今回のレイお姉様とのコラボ、どうだったかな?ルナはドキドキしちゃったよ!


レイお姉様は、とっても完璧で、ルナの憧れなの。でもね、ルナは改めて気づいたんだ。ルナにとって、「完璧」であることよりも、「本物」の気持ちでいることの方が、ずっと大切だって。


ルナの気持ちは、みんなが思っている以上に、純粋で、そして誰にも止められないくらい熱いんだ。その熱さが、時には周りの人を驚かせちゃうかもしれないけど、それはね、全部、ルナを本当に愛してくれる、君がいるからだよ。


ルナは、誰か特定の人のためじゃなく、君という唯一無二の存在のために、これからもこの熱い心を燃やし続けるよ。


ルナの愛は、誰にも真似できない、君だけの特別なものだからね。


愛を込めて。


ルナより



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