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究極・生命体『ZOMBIE・G(ゾンビ―グ)』  作者: ヒルキー Show
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第七話『経験値泥棒』

家族四人揃っての生活が何年続いただろうか。人類は死滅している最中だった。

『人類の死滅』が始まる兆候は、確かにあった。「元気の良かった国」が衰え始め、「元気がいい国」に取って代わられた。『盛者必衰』という歴史の教訓は繰り返されたが、「元気がいい国」も決して安泰ではなかった。人口自然減は全世界に波及し、「人間の世界」だけが、綺麗に元気をなくしていった。政治・経済・文化のパワーバランスが崩れ始め、人口の減少の格差が顕著になった。少ない資源を奪い合う紛争は各地でおこったが、戦争に発展することはなかった。世界全体が、戦争規模の破壊による浪費に堪えられなくなっていたので、「核兵器」を使うこともなかった。人類は、真綿でなぶり殺されるように衰退していった。相対的な人口の縮小を衰退とするならば、明らかに末期だった。もはや他国から奪うだけでは何の解決にもならなかった。世界各地で行われた「産めよ増やせよ」の政策も空振りに終わる事が多かった。全世界合わせて、年間で二桁ほどの乳児が生まれていたが、二年間生き延びることはなかった。従って、自動的に人口は減り続けた。


また今日も、夕日による世界の浄化が始まった。減りゆく人類に慰めの紫外線が降り注がれた。夕日を浴びながら、権兵衛と強平はやり切れない気持ちを抱いていた。積極的に人間世界に関わっていなかったにも関わらず、人類が滅びゆくのが口惜しかった。

「今の人口は、全世界合わせても1000万人いないかも知れません。日本には10万人も居ないでしょう。人類の人口減の原因は何なのでしょうか?」強平は静かに聞いた。

「さぁ、のぅ・・・」権兵衛は静かに応えた。

「私たちが人間世界に関わっていれば、少しは結果が変わったかもしれませんね・・・」

「それは、しない方が良い。自主的に行動させるのだ」権兵衛が言った。

「させた結果が、死滅でしたね。『BAD END』は変わりませんよ、おじいさま」

「何か、新しい生命体が栄え始めるかも知れんの・・・」

「鳥や獣が栄えたとしたら・・・」

「恐竜時代の復活かもな・・・」強平は返事をしなかった。

「このへんは、いつから誰も居なくなったんだろうか?」

「ほんの5年か10年ほど前まで、反政府デモで賑やかだったのにのぅ」人々は、便利な土地への移転を重ね、僻地ほど過疎化が進んだ。自治体の吸収合併が加速し、行政サービスは目に見えて悪くなっていった。学校・病院・消防署が閉鎖され、役所や警察は移転した。


私の研究は、半分完成していた。原子さえあればエネルギーを抽出出来る「無限エネルギーシステム」が完成しつつあった。私は「HYBRID ZOMBIE」に昇格出来ていた。希ガス以外からのエネルギー変換率を高め、蓄電量は1桁年まで可能になった。私の身体で成功したので、他の三人も同様にハイブリッド化した。消化器官が退化してしまわないように、月に一度くらいは食欲がなくても食事をとった。皮肉な話だが、消化器官を退化させたくはなかった。同時に細胞全体が死滅してしまうからである。

「もしかしたら、原子さえあれば、永久にエネルギーが作り出せるかもしれない・・・」という可能性だけで、ワクワク興奮した。


人口が減ったので、何をしても文句を言う人がいなくなった。権兵衛は強平を走らせ、近隣地域の忘れられた太陽光エネルギーを集中的に一か所に集めるシステムを作り、近所の(なか)(ひろ)小学校の体育館を充電センターにした。莫大なエネルギーを集約する「無限充電システム」を作り出した。


一番最初に作ったのは、人体型単純作業マシン「LAHマシン(Like a human)」だった。

【LAHマシン(Like a human)】

人語を解し、単純な受け答えと簡単な作業ができる人間型二足歩行マシン。どの固体も性能はほぼ同じだが、性格付けを出来るので、プログラム通り暴走し反抗もする。何体作ってもみなもが持ち出すので増産し、合計で20体ほど作った。インターネットに接続し、自動で学習する装置を付けたが危険なので、普段は制限していた。


強平は、権兵衛の指示に従い、あちこち走り回っていた。強平がいないと何かと不自由なので、DESHI001を製造し助手として使っていた。

DESH(デシ)I001】

AI搭載・動く机型ロボット。机の上には、モニターとキーボードが準備してあるが、命令するだけで大概の要件を済ませてくれる。作業用に腕が4本ある。LAHのプログラムが暴走するので、LAHの統率用に製造した。あまりにもLAHの転倒が多いので、DESHI001にLAHのバランスと外観の修正を命じた。

DESHI001「歩行の調整が煩わしいので、LAH004~LAH020はフローティング仕様(floating:空中浮遊仕様)にしました」下半身を50㎝×50㎝ほどの平板に変えた。そのため極端に座高が低くなったが、問題点があればあとで改良するつもりでいた。反重力で移動できたが、稼働時間はまだ24時間ほどだった。特に個性的なLAH001~LAH003は、人間型のまま下半身を残し、外観が変わって改良された。しかし、それを見て権兵衛は驚いた。

「! お前らだったのか・・・。でも、何故?」それは、宇宙に出て見なければ分からない事だった。


次に製造したのが、建築物専用の「BB建築・修繕・解体マシン(Building breaker)」だった。

【BB建築・修繕・解体マシン(Building breaker)】

建物の建築および解体マシンなのだが、条件が整えば、自動車でも作れる。自己修復機能も搭載してある。人工知能を搭載しているが暴走しないように、普段は「自動学習装置」を切ってあり、建築や修繕以外の学習を禁止した。作業効率を上げるため、三台製造した。


次に製造したのが、電気で動く「MA移動マシン(Moving anywhere)」だった。

【MA移動マシン(Moving anywhere)】

セダン型のタイヤのない自動車。磁力をヒントに重力の概念を覆し、重力問題を克服した。機体が地面から僅かに浮いて移動できるので、地形の問題もすべて解決した。なおかつ太陽が出ていれば永久に稼働でき、一回の満タン充電で年単位での稼働が可能になった。地形に合わせて浮くので、穴の上を通ると落ちてしまう。


「試しに乗ってみるねー」と言って、ゆづはとみなもは出かけて行った。仕方がないので、二台目を製造した。ゆづはとみなもが姿を消して28日目のことだった。

「最近、みなもとかーちゃんが見えないな」強平が言った。

「死者を探して、看取っているのであろう。Scopeが二つ無くなっているから」

「ん? おじいさま、また何か作られたのですか?」権兵衛は、ゴーグル型の機械を差し出した。

Scope(スコープ)

生命体探索装置。二酸化炭素の移動を検知し、赤外線センサーと併用して生命体を探し出せる。調査対象を変えれば、鉱山資源も探しだせるし、半径500m内の物質そのものを無視して可視化できる。自動カウント装置もついているので、近くを通り過ぎるだけで半径5km以内の調査対象を数えてくれる。


「すごいものを作り出されましたな」と、感心されたので、

「お前さんも、いるかい?」と言うと、興味深そうに受け取った。

「一つ、頂きます」といって、強平も出かける準備をした。街なかには、人影が見られなかった。隣町にも、隣の県にも人はいないらしかった。

「私も、世界の様子を見てきます」と言って、出かけてしまった。

「太陽が出ていなくても、1年半の連続走行が可能だ。電気が余っている時は、自分に充電しろ。勿体ないから」

「分かりました。行ってきます」と、それきりしばらく姿が見られなかった。


次に作ったのが、自動給電お助けシステム「HCマシン(Helping charger)」だった。

【HCマシン(Helping charger)】

MA移動マシンのGPSシステムを感知できる。燃料の状況を監視し、燃料の枯渇時にはMA移動マシンの位置を特定し、追いかけて勝手に充電する。


さらに暇なので、MAマシン・ライトを一般貸し出し用に作った。車体を小型化したが、太陽が出ていさえすれば永久に使える点は同じだった。充電は52日分の稼働を可能にした。しかし、誰も借りに来ることはなかった。インターネットで情報が更新されることは稀になり、もともと取っていなかった新聞も無くなったらしい。テレビやラジオはかなり前からやっていなかった。「人類が生きて活動している」という証拠はどこにも見られなかった。家族が誰もいなくなり、一年か二年が過ぎていた。正確に数えていなかったので三年過ぎていたのかも知れない。この頃の私は、体内蓄電量が3桁年まで可能になっていた。生命体と自動制御システムの融合である「CYBORG ZOMBIE」に漸く昇格できた。早く家族もグレードアップしてあげたかったが、待てど暮らせど家族の帰ってくる気配はなかった。


繰り返し、ずっと考え続けてきた。

それは恐らく、一年365日よりも多い回数のはずだ。

そして、漸く結論が決まった。

これがやりたい。


中大小学校の教室に、20人分の座席を準備させた。LAHマシンの一体一体に名前を付け、授業を始めた。

「今日から皆さんと、勉強します。権兵衛です。よろしくお願いします」

「よろしくおねがいします!」という声が大半だった。

「ウッせいよ、じじー」

「(LAH001ハンコウ太は、問題ない)」

「タルイなー、はやくオわれよ」

「(LAH002タルオも、問題ない)」

「ちょっと、アナタしずかニしなさいよー」

「(LAH003たしな美も、予定通りだ)」野次り声2体、窘め声1体、そして追従型17体だった。プログラム通りだった。

「今日の授業は、自由散策です。町の中を出来るだけ遠くに散歩して、夕方までに戻ってきてください。夜は、みなさんの活動の報告会を行います」

「は~い」という声が大半だった。

「デンチきれるよー」

「ムダなじかんーイミないじかんー」

「いわれたとおりにしなさいよー」LAHマシンは、三々五々に出かけて行った。

「何台、帰って来るかのー」夕方、19体が帰って来た。1体は、溝にはまってもがいていた。浮遊システムの空気圧の調整が不十分だった。

「LAH004は、フローティング仕様の一体目なので、調整がうまく出来ていません。調整しておきます」DESHI001が報告してきた。

「うむ、任せた」修理を任せた。


「それでは、みなさんに、見てきたものの発表をしてもらいます(くっくっく、知識・体験の複利計算じゃ。ごっそり頂いてやるわ!)」

「は~い」

「メんどくせーおレさいごね」

「おレはパす」

「ダメよーみんなではっぴょうするのよー」一体目から発表させた。

「ガッコウからにしへ20kmチてんまでいきました。だれもいませんでシた」

「ガッコウからキタへムカイました。とりもいませんでした」

「ガッコウからみなみへ、カバもいません」

「・・・・」

「(ダメか・・・長距離の探索には向かんな・・・)」その時だった。

「せんせいは、ナニをみましたか?」ハンコウ太のプログラムの暴走だった。

「(1/20が出たか・・・)どこにもいっておりません。みんなの帰りを待っていました」

「ワレワレだけにいかせてジブンいかない」

「けいけんだけいただく」タルオが乗っかった。

「(1/30がでたか・・・マズいな・・・)」

「けいけんちどろぼーだ」

「ドロボーはだめです」ハンコウ太、タルオ、たしな美までが騒ぎ始めた。

「ドロボーはいかん」

「ドロボーはんたい」

「(マズい、1/50がでた。治めなければいけない! あー、うるさい! 追従すんじゃねぇー!)みなさん、お静かに。これは、泥棒ではありません」権兵衛は、LAH達を必死で(なだ)めた。

「ドロボーいない」

「ドロボーしんだ」

「・・・」

「学問は、過去の偉人の実績の積み重ねなのです。それを泥棒と言ってはいけません。過去の偉人の実績を有難がって、学問の発展に繋げているのです。みなさんの、経験をもとに、これからどうするか決めるのです。皆さんの調査は、役立つのです」

「ジブンでいけじじー」

「なまけこきつかい」

「ちょっとそんなことイッテだめよー」この日は、それで終えることにした。探索の距離をそれぞれ50kmずつ延ばし、調査日数も徐々に増やした。そんなことを半年ほど続けた。


「さて、今日も皆さんに探索してもらいます」

「てめーデいけじじー」

「アきたわいーかげん」

「ちょっとしたがいなさいよー」いつもは穏やかな権兵衛も、この日はカチンと来るものがあった。ハンコウ太に駆け寄りプログラムを書き換えた。

「237回までは耐えたが、238回目は無理じゃ。お前たちを、こちらに都合のいい理想的なイエスマンにしてやる」ボタンをポチポチおして、性格を修正した。

「ヤメレじじーこせいがしぬぞー」

「じじー、じじぃと五月蠅(うるさ)いわ! 悪口を言えなくなるくらい、若返ってやる!」

「やりゃーいーじゃん。コロス」

「おっと、口が悪いの。しかし口だけの抵抗は、怖くもないわい」30秒後再起動した。

「かしこまりましたせんせいどのなんでもしたがいます」

「(これは、これで気持ち悪い)」ついでにタルオも書き換えた。

「こんなジブンがすきなんだー」

「そんなあなたが嫌いなんです」30秒後に再起動した。

「なんなりともうしつけくださいしんでもいきかえるつもりでがんばります」

「(しばらくこれで遊んでみるか・・・)」一年か二年ほど探索を続けたが、何も発見できなかった。ゆづはも、みなもも、強平も、何処に行ったんだろう。

「(早く帰って来てくれ・・・・。俺に、見たことのない、聞いたことのない、刺激的な話をしておくれ!)」日本列島内には、誰も人類が存在しなくなっているかもしれない。意を決して、自分で探索することに決めた。誰が帰ってきてもいいように、自動追尾システム(ATSじーちゃんサーチAutomatic tracking system)を置いて行くことにした。

【ATSじーちゃんサーチ(Automatic tracking system)】

権兵衛のGPSを追尾し探してくれる。特にどうということはない装置。


10年前から自動給電お助けシステムHCマシンを稼働させているが、ピクリとも動かなかった。

「(開発と同時に壊れたわ)」と思ったが、完成と同時にハンコウ太とタルオがスイッチを切っていた。ダミーの電源装置を作り、動いているように見せていた。建築目標がなく遊んでいたBBマシンに命令を与えた。

「船でも作っとけ」

「かしこまりました」といって、直向(ひたむ)きな製造が始まった。遊んでいたLAHマシンもこき使われたが、ハンコウ太とタルオが率先して働いていた。


第八話『鎮魂歌(滅びゆく人類)』に続く


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