プロローグ
導入ということで短いですが、本編から四千字程度を目安に書いていきます。
────本当にまずい事態になった。
先ほどまでの同行者は血を流して動かない。その隣に倒れている自分も手足に力が入らずに身動きができない、さらにはうつ伏せの状態のため背中に足を乗せられて逃げる余地もない事態だ。
どうしてこうなってしまったと、諦めに近い脱力感とどうにもならない無力感に終わりを幻想していた。
手足が切り落とされているため激痛が走りそれらもすぐに吹き飛んでしまうが胸中にはただ楽になりたいとしか考えられない。
出血がひどくなり周囲を血が埋め尽くして本格的に意識が遠くなってきた。
───死にたくない
声が聞こえる。
僕の上に足を置く存在が、僕たちを殺した張本人が何かを聞いてきている。
何を聞いてきているのかまったくもって聞き取れないが、恐らく襲われた原因となる何かに関することだろうが───心当たりが一切ない。
初めての死、人生一度きりの終わりにくるイベント、暑さと寒さを感じ、痛みと切断による軽量を感じ、これ以上の生存は不可能であり、もし仮に生きれても暗い未来しか見えない。
人生詰んだということか、理解と共に視界が完全に暗転し、感じていた感覚全てが切りはなされていく、そして最後に残っていた意識もあっさりと手放されるのだった。
死した二つの男女を前に殺害者は残念そうに見下して興味をなくす。
今まで足を置いていた男から降りてナイフをしまい、歩き出す。
その殺害者は気づかなかった。
死への理解と体の感覚を失った時に足下の男が何をかんがえていたのか。
口の端から流れている血は男が強く食いしばって口内から出血したものだという事に。
動かなくなる直前に泣き顔から変わったその表情は────
────何も感じ取れない無表情ながら、その瞳に強い怒りを宿していたことを。
男の────福磨三吊の周回がスタートした。