執行(3話)
この球体はなんなのだろうか。転送機械か?まあそんな事はどうでもいい取り敢えずこの世界から逃げたい。
「これが契約書です。」
俺は願望が書いてある契約書を渡した。
「確かに受け取りました。では前へ来てください。」
男はそう言うと、球体に手をかざす。すると、球体から板が出てきた。
「伊藤さん。これは最後の確認です。この世界から離れ、願望が叶う世界で一生を過ごしますか?」
「はい。」
「かしこまりました。」
男はその板に契約書を載せ、板が球体に入っていった。と思えば俺は家のベッドにいた。
「夢…か?」
午前6時半。いつも俺が起きる時間。
「なんだ、夢かよ…」
そう言って、朝のルーティンを済ませて、学校へ出かけた。辛い。苦しい。だけどそれもまた日常。それを受け止めて毎日を過ごすしかない。結局苦しみから楽に逃れる方法なんてなかったのだ。だんだん近づいていた教室についに着く。
「あ、来やがったwww」
「ほんとだwwwきめぇwww」
いつものことだ。言われ慣れている。ただ、今俺は怒っていた。結局俺は夢にまでからかわれていたのだ。そんな思いで俺は奴らを睨みつけた。するとなぜだか変だ。いつもなら俺をきしょいとかいって煽っているはず。なのにそれをしない。逆に怯えているようにも見える。何故だろうか。考えを巡らせるとある事が脳裏に巡る。そう、契約書だ。こうなれば話は早い。奴らは俺をどうしても怖がってしまう。なぜならこの世界のルールを反するからだ。怖がらせたいように怖がらせればよい。俺は一歩一歩歩み寄った。逃げる奴ら。
「おい、浜!!!」
奴らの動きは止まる。
「今なんて言った?」
「くそ、逃げるぞ!」
最高に気分が良い。なぜなら溜まっていた鬱憤を解放できたからだ。これほど心地よいことはない。それからというもの、俺は得た力を使いまくった。途中で俺は忌み嫌っていた奴らと同じことをしていることに気づいたがもはやそんな事関係ない。俺には害がないからだ。時日が過ぎ高校卒業。俺は、勉強熱心な陰キャだったが、あの快感を覚えて以来そんな事はどうでもよくなってしまった。だから、大学受験を見送り、就職。俺は力を使えば良いと思ってそんなに重く見ていなかった。だが、それでもいい。この力がある限りは。
願望の国っていう大層な名前付けちゃったせいでタイトル詐欺みたいになってないかが不安ですね。タイトル詐欺じゃないですからね!?人間の中身を想像しちゃう力が働いてるだけですからね!?
この物語はフィクションであり、実際の人物、団体は関係ありません。