①聖女よ「私じゃなくて王子を見てください」
聖女はこの世界の光、この国の象徴と言っても過言ではないのだが……
なぜ私にかまうのですか?
「ローランド様、一緒にお食事でもどうかしら?」
「クッキーを焼いてみたのですが、お口に、あいませんでしたか?」と頬を赤らめながら言う
いや、あっちの王子が婚約者だろう
王子もなぜ、止めないほほえましい顔で俺を見るな
王子こちらも、文句のない国の長で誰もがうらやむブロンドの髪で青い目をしているそんな、温かい目で俺を見るな
俺はそんな王子に使える騎士だが、目つきが悪く、人相も悪いのになぜだ
黒髪で黒目の何の変哲もない男だ
「いや、あの、いい。」とそっけなく、何度も断っているのにめげない聖女に
今、頭を抱えている
「今日も、会いに来てしまいました」っという聖女は花畑の中に行っても、くっきりと浮かび上がるくらいきれいなのだが、雪のように白い髪、綿あめのような
柔らかさを持つ彼女はいつも言う「ローランド様がいいのです」と
かくいう王子にも、庶民の女性に恋をしているようで、いつも留守の家を任されている
魔王もいなくなり、平和な世界で、なぜこんなに頭痛がするのだろうか?
幼馴染でもある王子は、今日もまた留守にしている。
「今日は、何をお話ししましょうか?」という彼女は、聖獣とともに一緒に来る
「なぜ、俺なんだ……」と彼女に問いかける
「私が、異世界転生をして、不安になっているとき、あなたはただ私の話を静かに聞いてくれました。異世界の日本の話を……それが、とっても嬉しかったのです。ただの私としていさせてくれる。聖女じゃない私を見てくれるあなたの事が好きになったのです。」という彼女は、いつもの力強い目と違って揺らいでいる
「そうか……」とただ答える俺に満足そうに「はい」と答える聖女に
(意外とこの時間は、嫌いではないな)と、コーヒーに口を付ける
明日も、きっと聖女は来るだろう
そんな彼女にほだされ始めているのかもしれないと思う俺は
いやいや、(聖女よ 私じゃなくて王子を見てください)という言葉を飲み込む
王子が帰ってきて、「本当に仲がいいな、公約破棄するか」と問う王子に
「はい!!」という聖女を止める今日この頃だった
まだ確信を得ていない感情で決めるのは失礼だからだ
そんな顔を見て王子が「やぶさかではないな~これはチャンスかもよ」
「そうかしら、そうよね私、まだ頑張りますわ」という聖女を止めるのが、いつもの日課だ