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82_世界は私を中心に回っている②(リゼット視点)

 

 嬉しくてフォーに抱き着くと、フォーの尻尾がゆらゆらと揺れているのが目に入った。

 フォーも私が大好きで、こうして一緒にいられてご機嫌なんだと分かってますます嬉しくなる。


 それにしても……。


「お母様やお父様のことも気分悪いけど、もっと最悪なのはルーツィアよね」


 神官たちは私の耳にルーツィアのことが入らないように気を付けているみたいだけど、それでもたまに漏れ聞こえてくる。


「あの子、調子に乗って魔力マッサージ?なんてことをやってるんだって。おまけに神官騎士にまで手を出しているらしいわ」

『ほう?リゼットを傷つける無能が、客を取っているのか?』

「そうなの!まあ、お金はさすがにとっていないみたいだけど。でも、そのおかげでルーツィアのマッサージ、結構評判がいいとか言っているのを聞いちゃったのよね」


 瘴気だまりから離れたところからの討伐帰りに、神官騎士たちがそう噂していたのを聞いてしまった。

 私が瘴気だまりを解消するから、その他の場所の討伐には神官と神官騎士たちだけで行くことが増えているのだけど、どうやらその現場に魔塔の魔法使いも参加していたらしい。私に気を使って黙っていたのか、そのこと自体も知らなかった。


 その討伐終わりに神官騎士にまでルーツィアが接触していると聞いて、ものすごく嫌な気分になっているのだ。


「私が羨ましくて、私みたいに認められようと必死なのかしら?ルーツィアがいくら頑張ったって私みたいに聖女になれるわけがないのに、馬鹿みたい!」


 評判がいいって何よ?タダだから、それならやらせてあげてもいいかなって人が多くいるってだけでしょ?


 ていうか、魔力マッサージってなに?たかがマッサージでしょ?

 おまけに落ちこぼれダメ令嬢のルーツィアがすることだもの、どうせ馬鹿みたいにくだらないことなんでしょ?価値なんてあるわけないじゃない!


 いっそ、ルーツィアのマッサージを受けた人が、逆にもっともっと体調不良になったり、マッサージを受けたせいで大変なことになったりしちゃえばいいのに。


 そもそも私が神教会に迎えられたら、神教会と仲が悪いうえに聖女を側に置けない魔塔の人達があまりに可哀想だと思ったの。だからこそ、この私が神教会と魔塔の懸け橋になってあげてもいいかなって思ってわざわざセルヒ様に私の護衛をお願いしてあげたのに!

 ルーツィアは、セルヒ様にそれを断らせるっていう卑劣な手段で、私の善意すら無下にした。


 そうじゃなければ、私の護衛を嫌がるわけがないもの!


 聖女である私を傷つけるルーツィアが、ほんの少しでももてはやされるなんてあっていいわけがない。


『リゼット、嫌な思いをさせられて可哀想に』

「フォー!そうなの、本当に最悪!」

『リゼットの近くにいる者や、リゼットに頼っている者ならば、その女に関わることは良しとしないだろうが、リゼットに直接会うこともできないような立場の者は本物を知らぬから、悪徳者に騙されてしまうのだろうな』

「まさにそうなの!下級神官や平民出身の神官騎士、市井の平民たちとかね」


 つまり私のおこぼれみたいなものなんだけど、それでもルーツィアが少しでもいい思いをするなんてムカつく。


『ならば、本物と触れ合う機会があれば、格の違いが理解できるのではないか?』

「え?」

『オレを連れた聖女リゼットの姿を一目見れば、市井の者の目も覚めるだろ?』


 それって……私がフォーと一緒に街にいって、市井の人と話したりするってこと?


『今のリゼットは力も桁違いだ。偶然会った市井の人間の一人二人にに気まぐれに回復魔法でもかけてやれば、自らもその幸運に預かりたいと誰もが思うだろう。そこにその悪徳者の真実を教えてやれば、いつか来るかもしれない機会を潰したくないと、そいつを相手にする者は減るんじゃないか?』


「それは……すごく素敵ね!フォーと私が一緒に現れたら市井のみんなはきっと驚くわ!」


 神教会に私の治癒を受けに来る人たちの中には、運よくフォーの姿を目にすることができた人もいるけど、それもほんの少し。

 そんな人達もフォーを見ると必ず圧倒されて、息でも止まっちゃうんじゃないかってくらいありがたがっている。


 市井の人は私のことを見る機会すらあまりないくらいだし。もちろんフォーの姿を見られることなんてほとんどない。

 回復魔法を安売りするのはいやだから、かけてあげるかどうかは迷うけど。でも、たまにはこういうサービスをして、私の名声をさらにあげておくのも悪くないわよね。


「それなら、ソレイユとギズリにもついてきてもらおうかしら?」


 上神官であるソレイユは若くて見た目もかっこいい。ギズリも神官騎士の中じゃ素敵な方で、二人とも市井のみんなからの人気も高いって聞いている。


 そんな二人と、神獣を連れた、聖女リゼット様の街歩き!きっと、すっごくちやほやされて、羨望の眼差しを向けられて、皆がありがたがるに違いない。

 想像するだけで楽しい!


 思い立ってすぐ、私はソレイユを探して声をかけた。


 ◆◇◆◇


「あれは……?」

「神官ソレイユ様と、神官騎士ギズリ様がいらっしゃるぞ!それに……なんだあの動物は……」

「すごいオーラだ……そして一緒にいるあの方の衣装……おい、ちょっと待て。ここからじゃあまり顔が見えないが、ま、まさか、聖女様じゃないか!?」

「ええっ!?じゃあ、あの見慣れない動物は、まさか神獣様!?」

「うそ!こんなところに聖女様と神獣様が来てくれたの!?」


 ──ああ、やっぱり、さいっこうだわ!


 ソレイユとギズリに挟まれて、フォーと一緒に歩いていると、たくさんの興奮した声が聞こえてくる。


「ふふ、フォーの言ったとおりね!」

『リゼットが嬉しそうで何よりだ』


 こっそりとフォーに話しかけると、フォーは私に鼻先をすりっと擦りつけてきた。

 その親愛を込めた仕草に、市井の人達はワッと歓声を上げ、ますます盛り上がっていく。


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