29_私もお役に立てるように、頑張りたいです。
長らく更新が止まってしまっていて本当にすみません……!
ここから第一部完結まではなるべくどんどん更新できればいいなと思っているので、お付き合いいただけると嬉しいです~!♡
私の言葉を聞いたセルヒ様は、パッと表情を明るくし、頬を紅潮させた。
「ル、ルーツィア嬢!それなら俺が片時も離れずに君の隣にぴったりと寄り添って──」
「うーん、それなら、しばらくは私がルーツィア嬢の面倒をみようか」
私は思わずぱちぱちと目を瞬いた。
今、セルヒ様は何か言いかけていなかったかしら?
けれど、いつもの私ならきっとセルヒ様がなんて言おうとしたのかが気になるはずなのに、今の私の心はそれ以上に、セルヒ様の言葉を遮る様にオーランド様が言った内容に強く惹きつけられた。
……今の流れで、面倒を見てくださると言うことは、それって私の勘違いでなければ、オーランド様が私に魔法を教えてくださると思っていいということ、だよね……!?
なんてこと!
「オーランド!?ルーツィア嬢は俺が──」
「本当にいいんですか!?天才魔法使いと言われるセルヒ様の、お師匠様に魔法を教えてもらえるなんてっ!本当に、本当にいいんですか!?──あっ、すみませんっ、セルヒ様、なんておっしゃいました?」
しまった!興奮のあまり今度は私がセルヒ様の言葉を遮ってしまったわ!なんて失礼なことをしてしまったんだろう?
そう思い慌てて頭を下げたのだけれど、セルヒ様は眉を下げて固まってしまった。
「…………いや、君が喜ぶなら、オーランドでも……許そう……」
「ええっと……?」
どうしよう。不躾にも遮ってしまったばかりに、セルヒ様が何を言ってるのかさっぱり分からない。
戸惑う私をよそに、オーランド様は吹き出しながらセルヒ様の肩をポンと叩いた。
「ぶぶっ!いやあ、我が弟子が振られる姿は面白いね〜!まあ片時も離れずルーツィア嬢のそばにいたい上に、いかに相手が私と言えども可愛い彼女のそばに男がいるのが嫌だという気持ちはわかるけどね?ここはどう考えても私が適任だと思うよ〜??」
「オーランドうるさい」
「ルーツィア嬢が基本的な魔法を使えるようにするのがまず第一だからね。それにどうにも彼女は規格外のようだから、いろんな事態に対応できるスペシャルな魔法使いの私がこの魔塔の誰よりもふさわしいよねー。お前はしばらく現場に出ることが多くなるんだから、諦めなさい!」
「オーランドうるさい」
「ちなみにお前が見たこともないほど感情をあらわにしていて私はとっても驚いているよ」
セルヒ様は不満そうにムスリと顔を顰めて、うるさいとしか返さなくなってしまった。まあ!いつだって私の前では優しくて紳士的なセルヒ様も、お師匠様の前ではなんだか少し子供のようになってしまうのね!
意外な一面を見れたことが嬉しくて、つい顔が綻んでしまう。
それにしても、オーランド様がおっしゃった『現場』って、どういうことだろう?
私の疑問を読み取ったかのように、セルヒ様を揶揄っていたオーランド様は私に向かって微笑むと、説明してくれた。
「ルーツィア嬢はまだ知らないかな?外での仕事、特に魔物を相手にする仕事にでることを現場に出ると表現したりするんだよ」
「ま、魔物の相手ですか」
ということは、セルヒ様はしばらく魔物の討伐のお仕事をするということだろうか。
オーランド様は困ったような顔でハア、とため息をつく。
「最近ねえ、なんだか変異種の魔物がとても増えていてね~。どんな魔物の相手でも危なげなくこなせるセルヒが対応するのが一番なんだよねえ」
オーランド様によると、魔塔の魔法使い様が現場に出ることは常日頃から少なくはないのだけれど、通常は対する魔物によって、その相手をするのに適した属性を得意とする魔法使い様が対応に当たるらしい。
けれどさっきもおっしゃっていたようにここ最近なぜか変異種の出現が増えているために、魔物の特性や弱点がハッキリしないことが多く、必然的に全属性を使いこなし、どんな魔物の相手でも可能なセルヒ様が現場に出ることが増えているのだとか。
「変異種が増えているって、つまり異常事態ということですよね……?」
いくらセルヒ様とはいえ、そんな中で怪我をしてしまったり、危ない目にあってしまう危険はないのかしら……?
そう不安に思う私に、心配ないのだとセルヒ様が答えてくれた。
「最近の任務としては討伐というよりなぜこの事態が起きているのか調べるのがメインなんだ。つまり魔物の相手自体には余裕があるから、俺が危険な目に遭うような事態にはならないよ」
「そうですか……よかった……」
「──っぐ、うっ、俺の心配をするルーツィア嬢、尊すぎないか……!」
「あはは!セルヒ、よかったね~!弟子が幸せそうで私も嬉しいよ」
「オーランドうるさい」
「なんで!?」
とにかくセルヒ様なら大丈夫だということでホッと安心はしたものの、それでも異常事態というからにはやっぱり大変であることには違いない。
それなら、頑張って早く魔法を使えるようになって、少しでもセルヒ様のお手伝いができるようになったらいいな……!
密かにぐっと両手を胸の前で握り、意気込んだ私は、これからのことに思いを馳せていて。
私やオーランド様と話しているセルヒ様の様子が今までとあまりにも違う、と、他の魔法使い様たちが言葉を挟むことも忘れて唖然としていたことには、全く気づかなかったのだった。