プロローグ_魔法使いは刺激に飢えている。冷酷な同僚の恋愛とか最高。
新連載始めます!
私の大好きな、ヒロインちゃんを好きすぎて様子のおかしいヒーローと、愛されるのが嬉しいスーパー素直ヒロインちゃんのラブコメです!
よろしくお願いします~!
月が闇の中に姿を隠し、星が空から溢れそうなほどに輝く夜のこと。
魔塔に所属する魔法使いであるノースは空を切るように指先をくるんと一つ回し、展開していた音を拾う魔法をやめると興奮気味に告げた。
「見つけた。やっと結界の外に出たみたいだ!」
「そうか」
そのそっけない返事に、報告をあげていたノースは呆れた様子を隠さない。
「お前が待ち望んでいた時がやっと来たね」
吐き出された言葉にも彼の同僚である魔塔の筆頭魔法使い、セルヒは冷たい瞳をそのままに口角をほんの少しあげただけで。
しかし、ノースは知っている。
この冷酷そうな天才魔法使いの本性を。
だから、注意深くその表情を観察しながら付け加えた。
「ついでにリーステラ家からも除籍だってさ」
「っ!……そうか」
(あーあ、怒っていいのか喜んでいいのか分かんないって感じだね……)
「で?予定通り迎えに行っていいんだよな?」
「ああ。こんな暗い中で1人で歩くなど危険極まりないからな。さっさと行け」
「……行ってくるよ」
心に浮かぶのは疑問だ。
(こいつ、なんで俺の前でも急にカッコつけてんの??)
しかし、かっこついてもいない。
その目はキョロキョロと忙しなく動き、口元は引き結ぼうとして失敗しているのだから。どちらかと言うとかっこ悪い。
おまけに書類に溢れた執務机の上をよく見ると、さも「魔法書ですけど?」とでも言わんばかりの顔で俗っぽい本が何冊も紛れている。
恋愛小説とか、
恋愛小説とか、
恋愛小説とか……。
天井まで伸びる壁一面の書棚にだって、クソ難しい「魔法理論」「魔法陣方程式」などと場所を取り合うようにして恋愛小説が並んでいる。この冷酷魔法使いと恐れられている男の趣味が恋愛小説を読むことと、小説のような運命の恋の妄想だというとんでも事実を知っている者は自分以外にほとんどいない。
(このヘタレ残念恋愛ポンコツ男め)
だから、つい揶揄いたくなるのである。
「あーあ、傷心のところをまるで王子様のように颯爽と現れて救いの手を差し伸べる俺、カッコ良すぎない?惚れられちゃったらどーしよー」
「なっ!?」
「行ってきまーす」
5階建ての塔、その最上階の窓からヒラリと飛び出る。後ろから喚くような声が追いかけてくるが自業自得である。自分で迎えに行く度胸もないヘタレなのが悪いのだ。
「ぷふふ。まー、しばらくは面白くなりそうかな」
魔法使いは好奇心旺盛な者ばかり。いつだって刺激に飢えているのだ。
堅物で冷酷で、それなのに夢見がちな天才の恋愛など、面白さしかない。
けれど、ノースは知らなかったのだ。
夢見がちな冷酷同僚が実際に恋する相手の前でどうなるのかを。それが、自分にとって想像の斜め上を突き抜ける面白さであることを……。
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