94.
「うおおお、マジで仕事が終わらねぇ……」
長い間ドゥエルにいっていたせいか大量にたまっている書類を前に俺は頭を抱える。もちろんノアが簡単なものはやっておいてくれているのだが、権利などが関係するものなど、領主の許可が必要なものは俺は処理しなければならないのである。
「マスターこちらを……」
「ああ、ありがとう。フライドポテトか……軽食にちょうどいいな」
「いえ、おそらく今日は徹夜だと思いますので、体力回復にどうかと思いまして……」
「そっちかよ……」
思わず頭をかかえる俺にガラテアが苦笑する。とはいえこればっかりは俺がやるしかないのである。そして、領主用の手紙の中になにやら見慣れない印の入った封筒を見つけた。
「これは……『商業連盟』か……」
「商業連盟……国家間を超えた商人ギルドの総称ですね。ヴァーミリオンのような武力を主とする国ではあまり目立ちませんが、ドゥエルなどでは組合のギルドもあったと思いますよ」
「ってことはソウズィがいたときのアスガルドとは交流もあったのか?」
「はい、主に父が作った発明品などは『商業連盟』を通して販売しておりました。技術も得ようとしたようですが、あいにく再現できなかったようできず……」
「なるほどな……」
まあ、商業に力を入れていればソウズィの発明品はさそ魅力的にうつることだろう。そして、アスガルドもドウェルを救ったことにより、その知名度がほかの国で活動している『商業連盟』にも伝わったというところか……
彼らの力を得ることができればアスガルドはより発展することができるだろうとにやりと笑みがこぼれる。
「ふふ、今度代表者が遊びに来たいそうだ……それならば我がアスガルドの発明品を見せてやらないとな。早速下見に……」
「マスター、まだまだお仕事が残っているますよ。街に行くのはお仕事が終わってからにしましょう」
「だよなぁ……」
案の定逃げようとしたけどだめだった。しょんぼりしている俺にガラテアが優しくほほえむ。
「そんながっかりしないでください。私もできるかぎりサポートしますから」
「ありがとう……」
そうして、俺はガラテアと一緒に仕事を頑張ることにする。ちなみにほかの連中もみんな忙しそうである。ノアにはドワーフの受け入れや労働条件の調整などを頼んでいるので彼女も俺と同様に地獄をみているだろう。ヴィグナはゲオルグの部下の戦いを見て、触発されたのか、ニールたちを引き連れてひたすら特訓をしているようだ。
アグニやボーマンも俺のいないうちに色々と発明をしたようだし、落ち着いたら「商人連盟」を招待するとしよう。
俺はまた新しく生まれ変わるアスガルドを楽しみにしながら書類の処理を進めるのだった。




