最初の夜と旅の目的と
一方、世間を騒がせている英雄たちは両国の新聞の一面を飾っていることなど全く知らず馬車に乗り、当てもない道を揺られ続けている。
この旅に目的はない。ただ、行き着いた街に泊まり、遊び、また次の街に行く。それの繰り返し。終ることの無いように。
日が暮れてからの馬車での移動は危ないと判断したため、今日は野宿することに決めた。二人と一匹はご飯を食べ終え、焚いた火を囲みながら他愛もない話をしていた。
ジブリールが馬たちに餌を与えている最中にゼロは思い出したようにイヴにある話をした。
「七人の道化師の話って知ってる?」
「道化師?」
「この世界に虹の色をそれぞれ持つ七人の道化師がいて何でも願いを叶えてくれるらしい」
「本当なの?それ」
「絶対にいる。俺はそう信じている」
ゼロは迷いなく、そう言った。イヴもそれをただ、信じることにした。
「もしだぞイヴ。もし道化師を見つけて願いが叶ったら、どうする?」
「願いかぁ、なんだろう」
イヴはゆっくりと考えている。ゼロもまた自身にもそう問いかけていた。少しの間を置いてからイヴが、あっと声を上げた。
「何か見つかった?」
「うん。けど秘密」
イヴは嬉しそうに笑い、口に指を当てた。その仕草はゼロにとってたまらなくかわいく見えた。
「ゼロは?願い事」
「俺も秘密。イヴが教えてくれたら言うよ」
こうして最初の旅の夜はふけていった。
道化師は踊り終え、ある本を取り出す。宙に浮かせ手を使わずにページをめくっていく。あるページを切り取り、本を消し去る。
神は世界における管理者を作り出す
神の代わりに世界を見届けるために
自身の感情を持たない道化師を
それすらも神の思い通りにはいかぬもの
それがあるから世界は愉快である
前回のちょっと補足
アリュトルム・クリャオン・マリセルア・オラキス、
そしてイヴは本当の家族だけど、一番初めに生産が始
まったのはイヴです。
最高級の素材を使ったイヴは工程に時間がかかりす
ぎ、イヴの材料の破片や部品から新たなるマシナリー
を作り出した。それがアリュトルムたちです。
実質、イヴが母親ですが、四体が造れてもまだ、イ
ヴは動くことも出来なかったためこのような家族構成
になってます。