紅い竜と
竜の森に入ったゼロとイヴ。
「よお、死人。元気そうだな。それもキュアノエイデスのお陰か」
姿を現したのは紅い竜・ヴルメリオだった。
「体を治すため、しばらく世話になる」
「勝手にしろ。それとその機械の娘は何だ?」
一瞬で正体を見破ったヴルメリオにイヴは驚いた。どうして?と聞こうとしたイヴを。
「ふん、人間の臭みを感じない。死に怯える匂いがな」
「ヴルメリオ。レディを苛めてはいけない」
ヴルメリオの後ろからキュアノエイデスが姿を現す。
「キュアノエイデス。この娘は・・・」
「言わなくてもわかっています。貴方の大切な人でしょう?拒む理由はありません」
「ありがとう」
森の中の大きな木の傍に座った二人。
「竜ってすごいね。言わなくても全部知ってるみたい」
「世界の生まれた時から存在しているからな。お陰で無駄な話をしなくて済むよ」
風が吹く。こんな風にゆっくりと風を感じたのは何時以来だろうか。ファンタジアで英雄と呼ばれ、イヴと出会い、二人で逃げている間に本当に色々なことがあった。ただ、イヴがいなければこんな体験は出来なかった。
イヴはいつの間にか眠っていた。すぅすぅと可愛い寝息たてながら。
この寝顔を見ると、アルカディアの最強兵器だということを忘れてしまう。それほど、可愛い寝顔だった。
ゼロは寝息をたてるイヴの顔を覗く。ゼロ、とイヴは小さな寝言を言った。それを聞いたゼロは更に顔を近づけた。徐々に唇が近づいていく。
大丈夫、分からなければ問題ない。
「何してんだよ。お前は」
その声はジブリールだった。いつの間にかゼロの真横に立っていた。
「お!お前っ!い、何時からいた?」
「お前がイヴの顔を見てたときから。それよりも『試練の森』に行って来い」
「新しく道が出来たのか?」
「正確に言えば『見えた』だけどな。キュアノエイデスが案内してくれるらしい。さっさと行って来
い。イヴには俺が話をつけておく」
「わかった」
ゼロが遠くに行ったのを確認したジブリールはイヴに近づく。胸の辺りを凝視し、小さな膨らみを二つ発見する。ジブリールは頬を緩ませ徐々にその膨らみに手を伸ばす。触る瞬間に後頭部に何かを押し付けられた。感触からして、振り向かなくても分かる。しかし、一応振り返ってみる。ずばりだ。
振り返った目の前には銃口が広がっていた。しかし、誰もいない。銃が続いている先にはイヴがいる。どうやら、無意識のうちに自己防衛が発生し、銃が発現したらしい。ゼロのときは出なかったが、自分で出てしまったというと、まだまだ心を許されていないことを痛感させられたジブリールだった。
ジブリールは肩を落とし、イヴの横に座った。未だ寝息をたてているイヴは本当に人間のようだった。