しばしの休息と
マキが死ぬ、それと同時刻。小さな町ムーヴの近くでそれは目を覚ます。紅に身を包む服装。手には紅き凶刃が二刀。目的は唯一つ。対になる真の存在を消すこと。
イヴと合流後、ゼロは何も話そうとしない。
「何があった?竜を使うなんて」
ゼロは一呼吸おいた後、時の番人との戦いを話した。竜を使ったことも。
「竜・・・あの時も使ったよね?」
イヴの言うあの時とは初めて戦ったときのことだ。
竜の森。世界のどこかに存在する竜のみが生存する森。人間唯一の契約者でもあるゼロとジブリール以外はその存在を知らない。竜の森には様々な竜が生きており、特殊な魔方陣を描くことにより、竜を体に宿すことが出来る。但し、それ相応の負荷が掛かるため、ゼロとジブリールの共同作業で創る魔方陣以外では宿すことが出来ない。
「で、キュアノエイデスは何か言っていたのか?」
「今の俺の体は死神の鎌で蝕まれているらしい。しばらくは森で治療をして欲しいって」
「まぁ、今は無理に体を動かす必要もないだろう。なら森に行くか」
その会話を聞いていたイヴは心配そうな顔をしてゼロを見ている。
「イヴ。一緒に行こう」
「え?いいの?」
「大丈夫だよ。イヴには色々と心配かけたし、ここらで旅も一休みするか」
イヴはその言葉を聞いてゆっくりと笑った。
「ありがとう」
イヴはふと思った。自分がこれほどまでヒトのことを心配したことがあっただろうか。多分、無かったと思う。どんな身近なヒトでも心から心配したのはゼロが初めてだった。そして、それが出来たのも自分が特別なアルカディアだから。