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竜の降臨と

 イヴと一緒にいたジブリールは妙な胸騒ぎを覚えた。


「どうしたの?ジブリール」


 その時、街の遠くからサイレンが聞こえる。自警団が続々と街の中へと走っていく。イヴ達のいる場所まで騒ぎは広がっていた。


「何かあったんですか?」


 走ってくる人にイヴは騒ぎの原因を聞いてみた。


「誰かは知らないけど人が刺されたって!一人は女性で、もう一人はやけに髪が長い男性らしいけど」

髪の長い男性。その言葉でゼロが脳裏に浮かんだ。


「まさか、ゼロじゃ・・・・」


「まだ決まってないだろ」

 その言葉の後、ジブリールは何かを感じ取った。大気の揺れ。この辺り一帯が何かに包み込まれる感覚があった。


「まずい。森が目を覚ます」


「どういうこと?」


「今は説明している暇は無い!間に合えよ」


 ジブリールは魔方陣を描く。それはこの街全体を覆うように天空に描かれた。その魔方陣はゼロがルーネルにて使用した「別世界」の魔方陣だった。




 深い意識の中、ゼロは眼を覚ました。大きな木々に囲まれた霧の深い森。ゼロは体を起こし、ため息をひとつ。


「珍しいな、そっちから来るなんて」


 ゼロは霧に声をかけた。すると、霧の中から大きな、蒼い竜が姿を現す。


「貴方は私たちにとって、とても重要な人間です。緊急事態のため、こちらにお呼び立てしました」


 この森には竜以外の生物は存在しない「竜の森」。そして、唯一人、その森と契約をした人間、ゼロ。


「貴方の体を治すには少々時間が掛かります。そのために少しだけ体をお借りします」


 そう言うと蒼い竜はゼロの体内に入っていく。


「何だ・・・意識が」


「私に身を任せてください。そして、我が名を呼んでもらえればよろしい」


「・・・・・」


 ゼロの体に入り終えた竜。ゼロの眼が徐々に蒼色に変わっていく。ゼロの心の奥から声が聞こえる。


「ゆっくりと、息を吐いてください。そして、呼んで下さい。我が名は・・・・」


『キュアノエイデス』





 アイギスはゼロから離れ、建物の上で静かに見ていた。そして、自分のことをただ、考えていた。


「世界を監視・・・・」


 脳裏に激痛が走る。


「私は何のために・・・・・」




 死神はゼロに向かって歩いていく。完全なる止めを刺すために。


「何故かは分からないが、死を逃れている。やはり、道化師を持つこの男も危険ということ」


 振り上げた大鎌をゼロに照準を合わせる。振り下ろした刹那、ゼロの眼が覚めるのを確認した。しかし、止める必要は無い。この男には死を与えるのみ。

 大鎌はゼロに当たらず、辺りに金属音を響かせた。ゼロは少し離れたところに立っている。


「死神よ、貴方は殺してはいけない人まで殺そうとしている」


「我が誰を殺そうと勝手なり。ゼロよ、道化師と共に潔く死ぬが良い」


「今はゼロではない。少しの間、このキュアノエイデスが相手になろう」


 ゼロの眼は蒼く、体には青光りするオーラを纏っている。


「誰であろうと関係の無いこと。今すぐ楽にしてやる」


 死神は鎌を振るう。キュアノエイデスはそれを軽く受け流し、数発、打撃をいれる。だが、前と同じように黒衣をすり抜けるだけだった。真上に迫った鎌を避けると同時に大きく距離を取るようにして、家の屋根へと登った。


「なるほど、頭と鎌を持つ手以外は抜け殻ということか」


「死神に胴など要らぬ。在るのは貴様を殺す鎌のみで充分なり」


 徐々に近づいてくる死神に対し、キュアノエイデスは大きく息を吸い、蒼色の業火を吐き出す。それに気付いた死神だが、避けきれず業火をまともに喰らう。焼き終えるのを待つ間も無く、追撃の一撃を吐き出す。


「蒼火追葬」


 二度目の炎もまともに喰らい、死神の面影は無くなった。


「無駄だ。死神を殺すことなど不可能」


 依然、死神の声はどこからとも無く聞こえてくる。すると、徐々に黒い塊のようなものが一点に集まっていく。そして、死神の姿へと変わっていった。


「死神とはよく言ったものだな」


「我を殺すなど不可能と分かっただろう」


 死神はキュアノエイデスとの距離を一気に縮め、鎌を振り下ろす。真横に飛んだキュアノエイデスはすぐに反撃に移る。突然、足場が崩れ始める。先程、振り下ろした鎌は家を切り裂くほどの威力だった。体勢を崩したキュアノエイデスに止めを刺すべく、死神は鎌でキュアノエイデスを横一文字に切り付けた。だが、またしても死神の鎌はキュアノエイデスを切ることは出来なかった。


「逃げたか」


 死神は辺りを見渡すがどこにもキュアノエイデスの姿は見えない。刹那、風が吹いた。奇妙なほど穏やかで、それでいて真上から吹いた風。死神が上を向いたその時だった。目の前にキュアノエイデスが現れ、鎌を持った右腕を掴み、粉々に砕いた。


「貴様、どこから」


 休む間もなく、もう片方の腕も粉々に砕く。そして、回し蹴りで一蹴する。地面に叩きつけられた死神にキュアノエイデスは止めの一撃を放った。

 三度、吐き出された蒼い炎は今度こそ完璧に死神を燃やし尽くした。


「しつこい奴だな。何度やっても同じことだ」


 声が聞こえると同時に、再び黒い塊が現れ、一点に集まろうとしている。その時、キュアノエイデスは奇妙なものを見た。

 一転に集まる黒い塊の中、一際目立つ大きな影がマキの体から溢れ、集まっていく場所を目指していた。


「なるほど、そういうことか」


 それを見たキュアノエイデスは集まりかけた塊など見向きもせずにマキを目掛けて走っていく。そして、膝をついているマキの鳩尾に蹴りを入れる。


「ぐあっ」


 壁に叩きつけられたマキは痛みにより意識を取り戻す。


「どうやら死神も消えたようだな」


 先程まであった黒い塊は姿を消した。


「なぜ、分かった・・・」


「禁忌・死神の呼び声。時の番人であるお前がどうやって会得したかは知らないが、この術の弱点は術者が全くの無防備になること。禁忌を発動し、死神が敵を殺す。死神に目がいってしまい術の弱点から眼を背けさせる最高の術。しかし、長期戦になると弱点が露呈してしまうようだな」


「く・・・・」


「時の番人よ。貴方は決して殺してはいけない人を殺そうとした。その罪は重い。ゼロはこの世界に必

要な人間だ。たとえ時の番人である貴方でも許されない」


 キュアノエイデスはマキに向かい掌を向ける。ゆっくりと蒼く染まる掌を見つめながらマキは言った。


「竜の森。ゼロ。これがラファエルの言ったことか・・・」


「裁きを受けよ」


 掌を握り締め、マキの体を蒼い炎が包み込む。


「痛みを感じさせない優しい蒼き炎。キュアノエイデス、ゼロよ、俺は時の番人と同時に道化師の管理

者でもある。それが消えてしまえば、反存在が目を覚ますことになるだろう。せいぜい気をつけろよ」

 そう言い残し、マキは消え去った。元に戻ったゼロは胸の傷を確かめた。傷口は跡形も無くなっていた。



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