街を守った結果と
ゼロが目を覚ましたのはベッドの上だった。小さな部屋でベッド以外に何もない。予約していたホテルではない。辺りを見渡していると、目の前の扉が開きイヴが入ってくる。
「起きた?もう大丈夫?」
イヴの話によるとゼロは道端で倒れこんで気絶していたらしい。火事の被害は大きく、都市の三割が灰と化してしまった。現在でも救助活動は行われている。ふと、話をしているイヴの表情が少し曇る。
「どうかしたか?」
「あのね、ゼロと話したいって人がいるの」
扉が開き、男が入ってくる。白色に輝くマントを羽織、厳粛な衣装に身を包む男にゼロは見覚えがある。
「リヒル」
「久しいな、ゼロ」
男はシャクラムスを統治しているリヒル卿だった。部屋に入ってきたリヒルはゼロに話の内容を告げた。
「お前が、ファンタジアから指名手配されている」
その言葉を聞くまで、ゼロは自分のした事が祖国にどれだけの影響が出るかを知らないでいた。いや、知っていたが、認めたくなかったのだ。
「やっぱりか」
「懸賞金は三億。国家反逆罪の罪では最高額だ」
「それで、俺を捕まえに来たということか」
「お前が、ただの反逆者だったらな」
それはまるでゼロを捕まえないような台詞だった。
「少なくとも、お前はこの街を救ってくれた。そのことは感謝している。ついて来て欲しい」
リヒルはそう言い残し、部屋を後にした。ゼロとイヴは何も言わぬまま、リヒルの後を歩いていく。
部屋を出て、外に続く扉を開けたリヒル。
「お前の目で、自分のした事を確かめろ」
言葉の意味を理解せぬまま、二人は外に出た。そこには、想像できない光景があった。
たくさんの人が集まっており、大きな歓声と拍手が鳴り響いていた。けがをして包帯を巻いている者でさえ喜びに満ち溢れた顔をしている。その歓声と拍手はゼロとイヴに向けられていた。
ありがとう、聞こえてくるのはその言葉。自分が反逆者であると知りつつも笑顔で御礼を言っている。
「この街にいる間だけお前は街を救った英雄だ!誰も捕まえたりはしないぞ!」
歓声の中からそんな声が聞こえた。ゼロの肩に手を添えるリヒル。
「お前を捕まえるわけがないだろう。たとえ、俺が捕まえようとしても街の皆は反対する。この街にい
る間は安心すればいい」
リヒルの言葉はゼロの胸の奥まで響いた。こんなにも人から感謝されたことはなかったから。ゼロはただ、嬉しく思うだけだった。
「ありがとう。でも、俺にはやりたいことがあるから。この街には長く居られない。すぐに旅に出るさ」
「そうか、なら見送りだけでもさせてくれ」
ゼロとイヴの後ろをリヒルが歩き、その後ろを街の人々が歩いていく。ゼロは振り返らずにシャクラムスから出ることにした。リヒルを含めた街の人々もシャクラムスからは出ない。去り行くゼロの背中にリヒルは叫んだ。
「ゼロ!体には気を付けろよ」
ゼロは何も言わぬまま、手を大きく振った。それから再び大きな歓声が上がった。