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シャクラムスと男の噂と

 朝日が昇る前に、一行は旅立った。次なる街を目指して


「聖都市シャクラムス」ファンタジア領地


 由緒あるカリム家のリヒル卿の納める都市。ファンタジア十権天皇の一人であるリヒル卿は威厳があり、ファンタジア領地での統治力が随一である。犯罪率も少なくなっていく。しかし現在、リヒル卿はバーディミアンに招集されているため都市内では少し不穏な空気が流れていた。

 街の一角に飲食店で食事をしているゼロ達。ゼロ達のような外部のものでもこの都市の空気に違和感を覚えた。何かが起きるような予感さえ出来た。

 勢い良く店のドアを開けたのは大きな体格をした男だった。その後ろの数人の連れを引き連れ店の中へと入ってくる。


「おい!酒だ!」


 怒鳴り散らすような声でそう言い、席に着く。店のウェイターは大急ぎで大量の酒を持ってくる。他のウェイターも次々に料理を運ぶ。


「なんだ?あいつら」


「ここら辺を仕切っているギャングですよ」


 水のお代わりを持ってきた店主はゼロにそう言った。


「リヒル様がいる時は目立った行動をしてなかったけど、いなくなった途端調子付いちゃって」


「リヒル?ここを収めている十権天皇の?なぜいないんだ?」


「何でもバーディミアンから招集がかかったらしくてね」


 ゼロは、自分が絡んでいることを感じた。国王バンガーノだろう。 ファンタジアではよほど大事として扱っているらしい。しかし、当の本人はそんなことなど気にも留めていない。


「それより聞いたか?あいつの噂」


先程の男連中の話がある話題で持ちきりになった。


「あぁ。『紅い男』のことか?聞いた、聞いた」


「何だ?『紅い男』って」


 店主の話によると、ここ数日各地で相次いで盗賊による被害が起きている。貴族や地主などの資産家のみを狙う盗賊で紅い衣装に身を包み、紅いマントを羽織っているため『紅い男』と呼ばれている。その『紅い男』がこのシャクラムスにいるとの噂が流れているらしい。そして『紅い男』が狙っているターゲットは。


「やっぱカリム家だろうな」


偶然、店主の話と男連中の話が重なった。この都市において、カリム家の存在は圧倒的であり、当然『紅い男』の標的となるであろう。

 このシャクラムスにおいてカリム家以外には資産家と呼べる家柄は存在していない。これはリヒト卿の政策であり、一つの王族が他の住民を統治するため、かつて資産家と呼ばれた一族たちの財産をカリム家がコントロールするというものであった。その代わりに犯罪数が少なくなったのである。



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