デリー騎士団派遣隊
「ダニエル!お前昨日と違う女といただろ!?よくないぜ、そういうの!」
「エイモン、君も案外ウブだね。もっと遊びなよ、今このキャメロットには大陸中の美女が集まっているんだぞ!」
そういうと、グイっと手に持つ木製カップの酒を飲み干す。日は最も高く位置し、各地から集まった人であふれるキャメロットの大通り。そこから外れた酒場で、鍛え上げられた肉体をその髪色に似た薄い緑の日常服につつむ男ダニエル=オコナーに港町生まれの特徴である赤みがかった髪と小さな体にやや不釣り合いな太い四肢を持つエイモン=ハイドは返す。
「てめえがこんなに女癖が悪いとは知らなかったぜ……なあショーン?」
「デリーでも有名だったよ?戦時の騎士様、平時の遊び人って」
切れ長の目がより細くなってエイモンに向く。鍛えられた体の上に甘いマスクの小さな頭を乗せたショーン=オブライアンの言葉にエイモンは驚く。
「ぜんぜん聞いたことねえぞ!浮いた話なんか誰もしねーじゃねえか!」
「お前に女の話をすると余計なことしでかすじゃねえか、誰も話さねえはずだ」
そう返すのは丸太のような腕にダニエル以上の体格、体中に這う傷が数多の戦闘をくぐり抜けて来たことを語る禿げ上がった頭の大男アースキン=オキャロランである。
「お前たち、酒もほどほどにしておけよ。明日はあのルビレ将軍の閲兵があるんだ」
黄金に輝く髪、真珠のように白い肌、透き通った碧い目があきれたように円卓を囲む騎士たちを見渡す。
「アンリ、お前はこれからそいつに会うんだろ?」
「ああ、他にもお偉いさんに会うそうだ。同行はルイさんしか許されなかったよ」
「デリー建設を助け合った仲だ、向こうじゃ神人の別はなかったが、こっちじゃ純血は特別らしいからな」
アースキンがそう言い終わると同時に日が天頂に達し、真昼を告げる鐘が鳴った。
「俺はそろそろ行くよ」
「おう!ルビレ将軍にデリー騎士団をよろしく言っとけよ!」
背に受けたエイモンの言葉に軽く手を上げアンリは酒場の戸をくぐった。