出征
北の森を抜けた街道に三百余騎の勇士たちが整然と並ぶ。彼らの視線の先にはオコナー騎士団長とその長子ダニエルがあった。
「諸君は勇気ある決断で出征を選んだ。――これは栄光と共に苦難のある道だろう。全員が、再び故郷を目にするとは限らない……。しかし、私は確信している。諸君の勇敢なる突撃と帰郷の念が必ず大敵を砕き、フィフアの大平原に安寧を取り戻すことを」
三百余騎の勇ましい叫びが天を衝く。
「この栄えある出征軍の指揮官に、我が息子ダニエルを指名したいと思う。まだ年若いがこの十年、街のためによく働いてくれた優秀な騎兵だ」
「そんなこと俺たちが一番よく知ってますよ!」
「あのオコナー騎士団長の子だ!期待してますよ、指揮官!」
隣り合う騎兵同士が天に向けた槍を何度もぶつけ合う。自分たちの指揮官を歓迎するその声なき叫びはデリーの城壁を震わせた。
「私はフィフアの出ではない……。しかし、諸君らと同様にフィフア解放を切望している。我が第二の故郷、諸君の生地フィフアへ剣を捧げよう」
一斉に三百本の剣が掲げられ、騎士たちはフィフアの方角へ直った。ほとんどのものが懐旧と決心の思いを強めるなか、アンリはわずかにみなより高く剣を掲げた。彼が目指すのはフィフアよりさらに先、神々の住まう地――中央山脈である。