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血統

 ――亡命都市デリー、西大陸は南部山脈地帯にある亡命者による都市。


 住民の大部分は十年前、ダーガの左腕と称された竜将バルカスによるフィフア侵攻から逃れてきた者たちで、この地にあった古城を利用し、南に広がる市民自ら開墾した小麦畑の作物(さくもつ)を北の深い森を抜けた先の街道を走る行商人に売り渡し活況を(てい)す。


 南部山脈地帯の北辺に位置し、山地を挟んで敵軍と接する前線都市であるものの、上述の商業上の発展と、精強を誇る自警組織デリー騎士団の活躍によって今日までの繁栄を保ってきたのである……。




「いやあ、助かりましたよ」


 小ぎれいな服に身を包む小太りの男は額の汗を拭きながらデリー騎士団駐屯地の応接室でオコナー騎士団長を前に答える。


「我々はキャメロットの役人です。各地を回って勇士をスカウトをしておりました――中央は大規模な反攻を計画しているのですよ」


「ついにですか……」


「ええ。ですが、北辺の街道沿いを進む途上、突然に襲撃をうけ護衛も担っていた反攻軍の参戦者たちは多くが戦死しました……」


「我がデリー騎士団にも多数の戦死、重傷者がありました。敵は精鋭を差し向けたようですな」


「実に惜しい逸材ばかりでした……。そうだ、たしか飛竜の一匹を墜とした者がいるそうですね。ここへ呼んでいただけますか」


 オコナーが指示を出すと控えていた団員は応接室を出て、数分ほどで作業用着に身を包み、少し汗ばむ三人を連れて戻ってきた。


「この者たちが飛竜を討ったアンリ、エイモン、ダニエルです」


「おお……あなたがアンリですか」


 役人は大切なものをつかむようにアンリの手をとり、感激と期待の混じった視線をアンリの顔に向ける。


「勇士たちの仇を討っていただき、感謝に絶えません。あの飛竜の首を墜とすとはまさしく騎士物語に登場する――竜殺しの勇者と呼ぶにふさわしい」


「竜殺し、かっこいいなあ!俺は竜殺し補佐ってとこか!」


「なら私は補佐2、かな」


 悔いと弔いの表情と共に、アンリの手を強く握った役人は、ふとアンリのしなやかにしてよく発達した肢体に気づきつぶやくように、敬意と期待を強めて言葉を発した。


「あなた様は、ああ、そのはずだ――神の血を引いていますね」

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