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飛竜堕つ

 飛竜の一匹がギロリとアンリに目を向ける。


「ほう……(かち)の兵か、しかもたった一人のようだな……。時間切れかと思ったが、なんという僥倖(ぎょうこう)!」


 それまで地上で口を真っ赤にして食事していた飛竜の一匹は、突然はばたきアンリの方へ飛び込んでくる。


「向かってくる!……いいだろう、来い。近づいてくると同時に叩き斬る!」


 アンリは両手剣を軽々上げると頭上に構え、飛竜の攻撃を待った。アンリに近づいた飛竜は大きく上げた前足をその勢いを保ったまま振り下ろした。鉤爪が迫る、直前――


『斬れないッ!』


 咄嗟(とっさ)に右に転げて避けたアンリが瞬間前にいた場所に鉤爪は叩きつけられ、土地(どち)を深くえぐった。


『なんという鱗の厚さだ、こんな剣で斬れるものか!』


 飛竜はなおも鉤爪を振り下ろす。第二撃、第三撃と続く攻撃も、避けるので手一杯であった。第四撃を避けた直後、アンリは何か決心したような表情の後、デリーへ続く森の道へ走り去った。


「自ら袋小路に追われるか、いいだろう、そこで殺してくれる!」


「待て、そこまでだ」


 戦いを見ていたもう一人の竜騎兵が叫ぶ。


「既に任務は終わり、撤退命令が出ている。無駄な追撃はやめろ」


「……あと一人だ。あと一人殺せば、褒賞として、故郷(くに)に帰れるんだ……!」


 飛竜は一層はばたくと、森の道へアンリを追った。走るアンリに、飛竜はすぐに追いついた。アンリの背中に鉤爪が迫る――


「くッ!」


 外れた鉤爪は舗装された道を砕き、石とコンクリートの破片が舞う。


『攻撃を避けてもすぐに飛び上がるから体勢を整えて反撃ができない……!』


 地上から3メートルほどの高さをアンリを見下ろすようにはばたく飛竜が起こす風に森の木々がざわめく。


「可哀想だが……ここで死んでもらう。何か言い残すことがあれば聞いてやろう、それが死にゆく勇士と戦った時の礼儀だ」


 一瞬はっとした表情をとった後、アンリは上に構えていた剣を下ろす。


「――いや、どうやら俺の勝ちだ」


 二騎の騎兵が飛竜の背後から近づく。


「アンリ!!」


 槍を携えて駆けてくるのは、ダニエルとエイモンであったッ


「なにッ!?……木々のこすれる音で馬蹄の音が聞こえなかったかッ……それに、まずい!狭すぎて向きを変えられん……我が飛竜が、腹をさらしている!」


 二騎の(つわもの)は飛竜の下に入ると、その鱗が薄いやわらかな腹へ通り抜けざまに槍を突き上げた。耳をつんざく絶叫を上げて、飛竜はついに地上へ堕ちる!


 アンリは高く跳躍する。地に()しただ絶叫を上げる飛竜とその上でうろたえる敵兵を眼下に頭上に高く構えた剣はアンリの自由落下と共にその勢いを増す。そしてそれが、飛竜の首に叩きつけられると、固き鱗を砕いて貫き、胴より離れた竜頭はぼとりと地に落ち鮮血をばら撒いた。


「――決着だ」

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