第1話 陰キャだけど友だちは普通にいる
お久しぶりです!
新作ラブコメどうぞ!!
平穏な高校の昼休み。俺は自分の在籍する二年生の教室で、目の前の椅子と横の椅子に座る数少ない友人らと一緒に自分の机で昼食を食べていた。
他のクラスメイトの談笑する声にそっと耳を傾けながら今朝コンビニで買ったハムレタスサンドイッチを一口齧り咀嚼していると、高校入学時に知り合った、今では親友の松岡が神妙な顔をして唐突にこんな言葉を言い出した。
「―――つーか女子の見せパンってエロくね?」
「いきなり何言ってんだ浩太。とうとうこの夏の暑さで理性が溶けた?」
「同意。死ね松岡。死ね」
「ストレートに二回も言わなくて良くありませんかねぇ鈴原さん!? あと千歳も酷くね!?」
俺の机に肘を付けて手を組んでいたコイツ、松岡 浩太は手をわなわなさせながらそう俺らにツッコんだ。俺の横の椅子に座る小さな女子生徒―――鈴原 雪音はそんな松岡にジトッとしたとても冷ややかな視線を向けており、先程の話題に嫌悪感を抱いているのが分かる。
この二人こそが俺が認識してる数少ない唯一の良く一緒にいる友達なのだが、彼女のキツイ言葉にめげず松岡は言葉を続けた。
「だってよく考えてもみろよ、見せパンだぞ!? 見せるパンツだぞ!? ラッキースケベが起きてアニメや漫画では謎の光によって遮られてしまうパンツでも、見せパンによって正々堂々見ることが出来るんだ!! これが正義じゃなくてなんという!!」
「変態じゃない?」
「そう、千歳の言う通りそれは変態という名の変質者。変質者は駆逐されるべきであって人権はない。慈悲もない。つまりギルティ。そして松岡お前は死ね」
「え、俺鈴原さんに何かした? ちょっと過剰なほど殺意増し増しなんですけど?」
そう言って、うーんと腕を組んだ浩太は困惑しているがそれは当然だと思う。現在大きなお弁当をもぐもぐと食べている雪音さんは女子だし、そういった話題には少し敏感な年頃なのだろう。
そもそもそんな話題を女子の前で行なう時点で雪音さんや今この教室にいるクラスメイトの女子への配慮が欠けているのだけど、残念ながらそのことにこいつは気付いていない。……おっ、鈍感な浩太の背後で女子ズが拳をパキパキ鳴らしてる。良いぞもっとやれ。
(……まぁ、普段陰キャな俺がこうして普通な高校生活を送れるのはこの二人のおかげなんだけどね)
俺は心の中で二人に感謝を伝える。
浩太は少し空気を読まない所があるが憎めないイケメンだし、雪音さんはぶっきらぼうではあるが実はとても世話焼きな銀髪クール無表情系美少女。正直こんな二人と正反対な、目立たず! 平凡で! 普通な! 俺が親友になれたのは奇跡に等しい。
ふと視線を窓に向けると雲一つない晴天の青空が見えた。その蒼さに思わず目を細めて最後のサンドイッチの一片を口に放り込む。うん、うまい。
シャキシャキレタスとハム、マヨネーズの相性抜群な美味しさを噛みしめていると、いつの間にか浩太が俺のことをじっと見ていた。ん、どうしたん?
「お前いま自分のこと平凡とか普通とか目立たないって思ったろ?」
「何故わかったし」
「千歳は分かりやすい。けどそこが良い」
「……はぁ。あのさぁ、いっつも言ってるけど平凡とか普通とか目立たないヤツが―――」
浩太が何かを言いかけた瞬間、教室の扉ががららっと音を立てて勢いよく開いた。その方向へ視線を向けると―――、
「あ、あのー、二年生のクラスで『お悩み相談』してくれる先輩がいるって聞いたんですけど……ここで合ってますか?」
一人の後輩らしき女生徒がそう訊ねると、教室中にいるクラスメイトの視線が一斉に俺へと向けられた。その威圧感から逃げるようにサッと目を背けるも既に時遅し。
あぁ、またこれだ……っ。
思わず頭を抱えると同時に視界の端にちらっと見えたのは、俺の方へとすたすた歩みを進める後輩だった。
……そう、何故俺が先程心の中で"目立たず"、"平凡"、"普通"と強調したのか。それは―――、
「―――学年問わず他の生徒から『お悩み相談』なんて受けるわけないだろ」
おいその半笑いとやれやれってすんのやめろ浩太。せっかく現実逃避してたのにっ……! あっもう後輩女子が俺らの前に立った。きっと男子だということは訊いているのだろう。彼女の視線は俺と浩太、どちらが『お悩み相談』役なのか分からずきょろきょろしてる。
よし、これはチャンスだ……!
「それでそのー、どちらの先輩が相談に乗ってくれるのでしょうか……?」
「コイツ」
『こっち』
浩太のみならず雪音さんまで指差して……ッ! あと雪音さんは可愛いけど浩太、お前がてへぺろしても全ッ然可愛くないからな。はったおすぞ。
……………はぁ。
「……念のため場所移動しよっか。教室じゃプライバシーも何もないから」
「は、はいっ……!」
観念した俺は気持ちを切り替えて立ち上がる。
さて、どこで話を聞くかだけど……うん、昼休みの時間ならば図書室に誰もいないだろう。大声なら速攻アウトだけど、小声ならギリギリオッケー。
こうして俺とその後輩女子は教室を出て、図書室へと向かったのだった。
『………………………………………』
ある一人のクラスメイトの女子が教室を出て行く俺らのことを注視しているなど、一切気付きもせずに。
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