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第二十二話

ブックマーク、誤字脱字報告、感想をくださりありがとうございました。

読んでいただけて大変感謝いたします。

大変遅くなりましたが、少しずつ続きを投稿いたします。

「今度の連休だけど、予定空いてる?」


唐突に和磨さんが私に尋ねてきた。急にどうしたのかしら、と思ったけれど素直に返事をした。


「来週の3連休のこと?空いてるわ。」


「よかった。なら、冬桜子のご両親にご挨拶に行ってもいいかな。」


「わ、私の両親に?」


私はびっくりして、言葉が続かなかった。


「プロポーズもしたし、ご両親にちゃんと挨拶しておきたいんだ。もし、忙しいなら都合のつくときでいいんだけど。」


和磨さんは、私のことを真摯に考えてくれているみたいだった。それなのに、私ときたら家出をして気まずいから会いたくないと、少しだけ思ってしまった。


この前の祐美(ゆみ)の言葉を思い出す。

お父様もお母様も私のことを心配しているって。


私は逃げてきてしまったけれど、全てが終わったのだから、お父様とお母様にもケジメをつけるべきだわ。


「わかったわ。お父様とお母様に連絡してみる。」


私がそう答えると、和磨さんは嬉しそうに笑った。

話しながら歩いていたら、もうアパートが目の前にあった。アパートの前には珍しいことに黒塗りの車が停まっていた。


なにかしら?

もし、迷惑になるようだったら管理人さんに相談しないと。



私は大叔母から譲られたこのアパートの大家でもある。アパートの大家である責任感から近づくと、その車から人が出てきた。

その人は私のよく知っている顔だった。


「冬桜子お姉様、お久しぶりです。」


黒塗りで強面の車とは対照的な柔和な顔。

爽やかに挨拶をしてきた細身の青年は、私の従兄弟である六条秋紀(ろくじょう あき)だった。


「秋ちゃん?お正月ぶりね。今日はどうしてここにいらしたの?今はアメリカの大学院よね?」


「そうです。とは言っても、もうすぐ卒業ですよ。そちらの方は?」


秋ちゃんに言われて私は和磨さんを振り返った。そうだわ、和磨さんにも秋紀ちゃんを紹介しないと。一人で舞い上がっている場合じゃないわ。


「和磨さん、こちらは私の従兄弟で六条秋紀(あき)くん。私は秋紀(あき)ちゃんと呼んでいるの。弟のような子なのよ。

秋紀ちゃん、この方は藤堂和磨さん。

私の婚約者よ。」


和磨さんを紹介すると、秋ちゃんは一瞬だけ顔をしかめて動きが固まった、ような気がした。

ただ、和磨さんが握手を求めると、にこやかに応じたから気のせいかもしれないけれど。


「藤堂和磨です。どうぞよろしく。」


「あぁ、あなたが藤堂さんですか。ふーん、写真の通りイケメンなんですね。さぞかし女性におモテになるでしょう。」


秋紀ちゃんは差し出された手を握り返しながら、和磨さんに話しかけた。ちょっとトゲがあるような口ぶりで、私は困ってしまった。

秋紀ちゃんって、こんなに失礼な子だったかしら?

私は(たしな)めようとしたけれど、和磨さんは気にせずに話を続けた。


「何かの記事でも見かけましたか?以前、テレビに取り上げられたことがありましたので。」


「いえ。そうではなくて、冬桜子お姉様の護衛から上がってきた報告にありました。」


そうよね。和磨さんはメディアにも取り上げられていたから、秋紀ちゃんが顔を知っていてもおかしくないわ。そう理解しかけたのに、秋紀ちゃんは聞きなれない言葉を口にした。

護衛と言ったの?


戸惑う私をよそに、和磨さんは何故だか納得したように頷いた。


「なるほど。そうでしたか。」


だけど、私は全然納得できないし、理解が追いついていなかった。


「ねえ、秋紀ちゃん。報告ってなにかしら?それに、私の護衛ってどういうこと?」


「冬桜子お姉様はご存知じゃなかったんですか?

本家の伯父さまが冬桜子お姉様を心配して護衛をつけたと伺いましたけど。」


「そんなの、知らないわ。」


隣にいる和磨さんを見ると、口を固く結んでなんとも言えない顔をしている。


「和磨さんは知っていたの?」


静かにしている和磨さんは私が詰め寄ると困った顔をしながらも、口を開いた。


「実は、一緒に住み出してからすぐに護衛の人が接触してきて。

でもまさか、冬桜子が知らなかったとは予想外だった。私でも分かるくらいに堂々と護衛していたから。」


一緒に住み出したころというと、2ヶ月くらいは前の話だわ。そんな前から和磨さんは知っていたなんて。


「全然気がつかなかったわ…。私ったら本当にだめね…。」


「いや、流石にプロなので気配は消してるはずだし、普通の人は気がつかないと思いますよ、冬桜子お姉様…。藤堂さんがおかしいんです。」


あまりの事に頭がぐるぐるする。

秋紀ちゃんが何か言っていたけど、耳に入らなかった。

家出をして自由になったと思ったのに実は護衛をつけられていたなんて。

そういえば、さっきは写真とか言っていたかしら?


「ねえ、秋紀ちゃん。さっき写真って言ってたけど、それってなにかしら?」


「えーと、そうですね。護衛の業務報告書みたいなものですよ。」


「それってどこにあるの?見せてもらえるかしら。」


「お見せしたいのは山々ですが、あいにく僕は持っていないんです。

おじさまにお見せしてもらっただけなので。」


「お父様がお持ちなのね。

なら、お父様に会いに行くわ。ちょうど、和磨さんと挨拶に行こうと話していたところでしたもの。

秋紀ちゃん、お父様と連絡をとっているんでしょう?

お父様に伝えて。次の連休に行くので時間を空けてくださいって。」


「その必要はありません、お姉さま。

今日伺ったのも伯父様からのご伝言を伝えるつもりで来たんです。

伯父様が今度の連休に2人揃って本家に来るように仰っています。」


「お父様が、私たちを?」


「そうです。藤堂さんも必ずお越しになるようにと言われています。いかがでしょうか。」


秋紀ちゃんは和磨さんの方を見た。挑発的な目線だった。断るはずがないよな、という。

和磨さんは答えた。


「元よりそのつもりです。」



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