転生
「おめでとうございます!あなたの転生が許諾されました!。」
ついに、ついにきた。
「いやぁー・・トラックにひかれたときはどうなるかと思いましたよ。」
苦笑いしながら頭の後ろに手を置くと少女は一歩前にでた。
手には羊皮紙の様なものと羽ペンが握られている。
「それではアシド ケイ様、こちらに目を通してからサインをお願いします。」
羽ペンなんて初めてみたがこれインクとかはどうするんだろう。
なんておもいながらおっかなびっくり羽ペンを羊皮紙に押し付けるとインクなど付いていなかったのに青白い不思議な輝きを放つ点がポツリと現れた。
震える手でゆっくりと名前を記入していると少女がゆっくり口を開いた。
「この間に一応もう一度説明をいたします。本来、転生されるかたは記憶も消去され、誰かの胎児として生を得ることになるのですが今回ケイ様が転生される世界は非常に危険でさらに『悪』の勢力が強くなりすぎたため均衡を取り戻すために記憶、年齢を保ったまま。さらになんと!一つ生き抜くための能力が付与されます。」
ぱちぱちとセルフ拍手をする少女。
これぞ王道展開と相槌を打っていたケイはそこでふと浮かんだ疑問をぶつける。
「俺みたいに能力をもらってその世界に転生さする人がほかにもいるってことですか?」
「そうですそうです。箱庭の維持のため・・・じゃないじゃない今のは忘れてください。」
少女は慌てたように手を前で振ると気をそらすように透明な板を出現させた。液晶画面というよりはきれいに削り出した水晶のようでそこに白い文字の様な記号の羅列があふれた。
「えーっと・・・・今のところは八人、送り出していますね。あ、あなたの世界から送ったひともいます。」
意外と多いんだな・・・と思っているとふっと目の前から羊皮紙と羽ペンが消えた。
「それでは、確認の説明も終わりましたので与えられる能力をきめていきましょう!」
代わりにあらわれたのは大きなルーレット、これも水晶の様につややかな表面で派手に色分けされた枠の中に先ほどの白い記号の様なものが書き込まれていた。
「こちらをどうぞ。」
手渡されたのは小ぶりのダーツ。切っ先は鋭くとがっており羽にいたるまでルーレットと同じ素材のようだ。
「能力はどんな感じのものがあるんですか?」
と、つい気になってしまってきいてしまう。これからその中の一つが手に入るのだ。はやる気持ちを抑えきれない。
少女は目を輝かせると
「よくぞ聞いてくれました。例でいうと『消滅魔法の伝承者』すでにその世界で伝えられなくなった太古の魔法をマスターできます。『東雲流抜刀剣』刀系統の武器全般を使用したときの剣技発動と身体能力の大幅上昇できます・・・・などなど特異な力を得たり、特定の分野や技能を極限まで極めることができます。」
期待が高まってくる。
ここまできたら魔法・・いや剣も捨てがたい。
頭の中で華麗に剣技でモンスターをばったばったとなぎ倒す自分を夢想する。
よし、剣。やっぱり剣で戦うのがロマンだ!
「それでは、ルーレットスタート!」
高速でぐるぐる回るルーレットに目でみて特定の的を当てるのは無理そうだなーとあきらめる。まあ、もともと読めないので無駄なのだが。
剣技関係の能力こい!と心で切実に願いながら投げたことのないダーツを投擲した。
ダーツは偶然か極度の集中力の賜物かきれいな軌道を描きながらバシッとルーレットに刺さった。
「おーっとこれは・・・ふむふむ珍しい」
止まったルーレットの刺さった位置を確認しながら一人でにうなずいていた少女にドキドキしながら問いかける。
「えっと、どんな技能に・・・」
「生産職です。」
耳に入ってきた言葉が頭に浸透するのに少し時間がかかった。
「えっともう一度聞いていいですか?」
頭にはてなマークを浮かばせながら少女は言葉を繰り返す。
「生産職です。正確には万物の製作者。」
「えっとさっきの話の感じだと・・悪の勢力に対抗するための戦力として転生するのかと・・・・」
「そうですよ、でも伝説級の武器を作ったりするかたたちも悪の勢力のせいで亡くなっているので生産職はすっごい大事なお仕事なんですよ!さきに転生された方たちに強力な武器を制作するのもいいかもしれません!」
と、少女はこぶしを握って力説。
ケイはというと対照的にどよんとした面持ち。
先ほどまで夢想していたものは全部・・・夢になってしまうのか。
「それでは!一分一秒が惜しい!能力の詳しい説明はむこうであるので転生を開始します。」
その時、ケイを中心に大きな魔法陣が展開されその青白い模様の数々が急速に回転し始めるのが見えた。
目の前に持ってきた手が、身体が、風景が朧気になってとけていく。
しかしその後継に素直に感動できる精神状態ではなかったケイが激しい光に包まれながら最後に思ったことは
これ転生の場所悪かったら俺、即死するんじゃないか?
だった。