1.社会不適合者
来ていただきありがとうございます!
社会不適合者が、まさかの転生!
異世界で特別な存在として数々の試練に挑みます!
ぜひ最後まで読んでいただけたらなと思います!
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クラス適正。
相手の属性によって、魔法で与えるダメージが増減したり、相手から受けるダメージが無効になったりする。
それが、いわゆるクラス適正な訳である。
ある世界には大きく分けて五つのクラスが存在する。
最もバランスが取れているクラスである騎士。
防御力に特化したクラスである重装兵。
防御無視特効が可能な格闘家。
遠距離からの狙撃を得意とする銃撃手。
魔術によって敵を打ち砕く魔術師。
この五つのクラスによって、基礎クラス適正が決まっている。
上の図のように、騎士には得意なクラスと不得意なクラスがある。
故に、戦闘で優位に立ちたい時は、それ相応のクラスでなければ勝ち目はないのである。
◆
「――またやらかしたのか適豪! お客様から苦情の電話が止まらないらしいぞ!」
「それは向こう側が悪いです! 突然、『私の考えていたルームランナーとは違ったから返品する』なんて言ってきたんです! だから僕は『使ってもないくせに返品するなんて有り得ない』と言い返しただけです!」
と、適豪は上司のハゲに言い返す。
「それがやばいって何回言ったんだ! お客様は神様だぞ! お前はただ謝って頭を下げてればいいんだ!」
「神様ですと?! それではこちらからも言い返します! 僕の神様は声優の『釘峰理絵』様だけです! 私はそれのみを崇拝しているというのに、どうして僕は製品を使いもしないデブどもに頭皮を見せなければならないのか!」
「〜! 適豪! 上司の私に言い返すとは、どうなるか分かっているのだろうな!」
上司のハゲが机に手を叩きつけると、際どい角度で付いていたカツラがさらにズルズルと落ちていく。
「分かりません! 僕の神様は釘峰様のみです! 客が仮に釘峰様だったのなら、僕は何度でも製品を交換しましょう! それが、僕の流儀です!」
適豪は上司のところへと行き、グッと頭を掴む!
「っ! なんだ!」
「それと、カツラがズレかかってます! 僕的には、カツラよりも植毛の方が良いかなと思いますよ!」
適豪は、上司のカツラをグッと掴んで剥がし取ると、ちょうど良い角度に付け替えたのだ!
「〜! この社会不適合者がっ! お前は今日でクビだぁ! 覚悟しておくんだな!」
――と、適豪を突き飛ばす上司。
上司の怒りはピークに達し、まさに怒髪天といった状態!
……いやいや、怒髪天とは言葉だけである。
なぜならば、上司の髪の毛は天に辿りつくほど生えていないのだから。
◆
一人寂しく暗闇の道を行く男がいる。
名は、適豪誠哉。
今年で23歳になる。
彼女無し、両親とは疎遠になり、友達も特に多くはない。
見た目も普通、モテたこともあまりないといった感じ。
フィットネス系の商品を提供する会社に勤めるセイヤは、わずか入社一年目で解雇処分が下ることが決まった。
「なぜだろう、僕は間違ったことは言ってないのに」
呟きながら暗闇に一歩と足を踏み出すセイヤ。
そう、セイヤにとってはなに一つ間違った行為はしていない。
家に置けなくなったから返品。
子供が勝手に買ったものだから返品。
想像していたのと違うから返品。
そんなこと、会社側からしたら全く知る由もない客側の勝手な都合である。
セイヤはそれをただ言い返しただけのこと。
それが原因で、セイヤは上司に目をつけられてしまった挙句、会社をクビにされるのである。
「――神様は釘峰様だけだ。僕は断じてそれを譲るつもりはない!」
誰もいない狭い路地で叫びながら歩くセイヤ。
そんな彼の前から、突然一人の男が姿を現した。
「……金を出せ」
強盗である。
右手にはナイフを持ち、覆面を被ってジリジリとセイヤに近寄る!
「……あれ、今日ってなんか呪われてる日だったりするのか?」
「黙れ。声を出したら刺し殺す」
――近寄る強盗!
震えた手でナイフを持つ強盗を哀れに思ったセイヤは、
「そんな小鹿みたいに震えて何ができる? 僕はこう見えてある程度の体術はできる。ここで僕を見逃せば警察には言わないでやるさ」
「おおっ?! このナイフが見えないのか! 死ぬんだぞ? 死ぬんだぞお前!」
「知ってるか? 手が震えてるのは予めから人を殺す勇気が無いって証拠。やめとけよ」
「――今、俺を馬鹿にしたのか? 俺がお前を殺せないと?」
「あぁそうだ。どうせ俺を殺したって金なんてビタイチモンもねぇよ、相手が悪かった――」
と、突然強盗は刃物を振りかざし、セイヤに飛びかかる!
「うっ! このやろう!」
セイヤは振りかかる刃物を受け流し、瞬間右手を掴み抑える!
「がはっ!」
唸る強盗!
「だろ? 僕は体術が出来るってわけ。なあ、やめようぜ? 不毛だってのが分からないか?」
「――うるさいっ!」
強盗は思いっきり体を捩り、壁に押さえつけられる身を力強くひねった――。
が。
ナイフは行方を失い、強盗はその場に倒れ込む。
どこに飛んだかと辺りを見渡す強盗。
――が、そのナイフは。
「……ま、まじかよっ!」
セイヤは弱々しく呟きながら、自分の胸を覗き見る。
「はっ……嘘だ! あぁぁあ!」
強盗は走り去り、叫びながらその場から逃げていく!
「ちょ、待てっ! 救急車を……」
手を伸ばすが、もう既にセイヤには声を出せるほど肺に空気は残っていなかった。
――セイヤの心臓に、果物ナイフがぶっつり刺さっている!
お気に入りのスーツに真っ赤な鮮血がこべりつき、力なく背中から倒れるセイヤ。
「はっはっ……まじかよっ」
徐々に虚になる視界。
まさか、こんな場所で人生の最後を迎えることになるとは思っていなかったセイヤは、
「……ダイイングメッセージとか書くか?」
と、コンクリートの壁に自分から出た血で文字を描き始める。
意外と彼は冷静だった。
特に自分が死んで悲しむような人間など周りにはいないし、仕事もやめたし。
故に、セイヤは死んだとていくらでも代わりがいるのである。
「ダイイング……メッセージか。どんなんにしよっかな?」
『この社会不適合者がっ!』
セイヤの脳裏に焼き付く言葉がふとぽっと思い出される。
「社会不適合者か……。これってさ、絶対にこの社会の方が悪いよな」
――セイヤは呟き、そっと目を閉じた。
彼は壁に文字を描き終えたことによって、魂が燃え尽きたのである。
そして、セイヤが最後に書いた言葉――。
『かんおけにくぎみねさまのCDをいれてくだ――』
書き損じ、セイヤは人生を全うしたのだった。
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それでは、まだ本日も投稿する予定なので、よろしくお願いします!
騎士
適性度
騎士 ★★★☆☆等倍
重装兵 ★☆☆☆☆弱点
格闘家 ★★☆☆☆準弱点
銃撃手★★★★☆準強手
魔術師★★★★★強手