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異世界魔王は現代勇者  作者: 佐村井コージ
グランベル編
10/11

第9話 波乱の新学期

夏休み明けの教室では、久しぶりに会う友達との楽しそうな話し声で賑わっている。

「俺、休み中海外行っててさ…」

「私、夏休みに彼氏が出来て…」

「やべぇ、宿題終わってない。誰か見せてくれ」

など、各々の夏の思い出を楽しげに話している。

そんな中一人ポツンと席に座り、勉強に励んでいる私は、本間美咲。

今年受験生であり、難関大学を目指しているので一秒も無駄には出来ない。

それに、今日は実力テストがあるので最後の追い込みをしているのだ。

決して友達がいないというわけではない。

すると、朝のチャイムが鳴ると同時に先生が教室に入ってくると、急いでみんなが席に着く。

朝のホームルームが始まる。

「みんな、おはようございます。夏休み中は元気にしてたかな?こうしてみんな登校して来てくれて

先生おても嬉しいです。それで、突然だけど今日このクラスに転校生がきます」

そう先生が言うと、クラスはザワザワとし始めた。

「では、入って来て」

と、先生が告げると教室の扉が開き、金髪の男の子が入って来た。

「はーい、みんな静かに。今日からこのクラスの一員となる、一ノ瀬ユウキ君です。では、一ノ瀬君一言挨拶して」

「一ノ瀬ユウキです。よろしく」

無愛想に自己紹介をした。まばらな拍手が起こる。

この人、転校生だったのか。

昨日も学校の図書室で勉強をしていると、綾瀬先生と一緒に歩いているところを見たのだった。

「じゃあ、一ノ瀬君の席は窓際の一番後ろね」

なんとも気怠そうに歩き席に座る一ノ瀬君。

すると、席についてすぐにイヤホンつけ、カバンからゲームを取り出した。

クラス中唖然としている。学校で堂々とゲームをするなど考えられない。

「ちょっと、一ノ瀬君!?」

先生も驚きだ。当たり前である。

こんなのことする人は見たことがない。常識がないにも程がある。

しかし、何故か不思議そうに彼は顔を上げ、

「なに?」

と、問いかけてくる。

「なに、じゃなくて学校にゲームは持って来てはいけません。常識でしょ」

先生も大変だなと、ひと事のように思っていると、

「常識ってなに?これが俺にとっての常識だけど」

と、とんでもないことを言い始めた。

「この学校ではゲーム機の使用は禁止です。すぐにしまいなさい。今日は初日なので多めに見ます。明日からは持ってくるのもダメですよ」

はぁ、とため息をつきながら先生が言うと、

「じゃあ、帰る」

と言い、席を立って帰ろうとし始めた。

『えっ……』

クラスのみんなが驚き彼を見る。

「ちょ、ちょっと、何をいっているの!?まだ来たばかりよ」

先生も驚きつつ言うが、一ノ瀬君は無視し本当に教室を出て行ってしまった。

この時クラスの全員が思った、やべえ奴きたと…

オホン、と一つ咳払いをして気を取り直しホームルームを再開する。

が、あんな衝撃的な事があった後では話が入ってこない。

「えぇ、ひとまず彼のことは置いておいて、今日は実力テストを行います。その後、全校集会があり、それで今日は終わりです。本格的な授業は明日からなので、また気を引き締めていきましょう。では、ホームルームを終わります」

そう言い終えると、先生は急ぎ教室を後にする。一ノ瀬君の後を追ったのだろう。

本当に大変だな、あんな生徒の面倒まで見なきゃいけないなんて。

そう少し思った後、またテストに向け勉強を再開した。



教室を出て、窓の外を見ると一ノ瀬君が校門に向かっているのが見えた。

走って彼の後を追う。

やっぱり、彼は一ノ瀬くんじゃない。そう思えた。

いくら似ていてもあんなことする人じゃなかった。

しかし、夏休み明け早々全力疾走なんてついてない。

校門を出る前になんとか捕まえる事ができた。

「ちょっと、一ノ瀬君。なんで帰ってるの?まだ、学校は終わってないよ」

息も切れ切れにそう問うと、

「いや、ゲーム出来ないなら帰ろうかなって」

学校でもゲームしたいなんて、なんてゲーム好きなの。

ここまで来ると、起こる気も失せてくる。

「校則で、ゲーム機の使用は禁止されているの。学校では我慢して」

少し呆れたようにそう言うと、

「校則か、俺何かに縛られるの嫌なんだよ」

かなり嫌そうに答えた。少しカチンと来て、

「それでもダメなの、ルールはルール。後、勝手に帰るのもダメ。この後テストあるんだから」

今度は、少し怒ったように言ってみる。彼はびくっと少し驚いた様だが、

「わかった。今日は大人しくしてやる」

少しむすっとした様にそう答えた。私は笑顔で、

「うん、よかった。じゃあ教室に戻ろうか」

と彼を連れて教室へと戻る。

後ろをついてくる一ノ瀬君が、この時すこしだけ笑った様に見えた。



先生が勢いよく出て行ったかと思ったら、その後すぐに一ノ瀬君が教室に戻って来た。

彼が教室の扉を開けた瞬間、彼へと視線が集まる。

が、彼は全く気にする様子もなく席に座った。

窓の外をぼーっと眺めている。

どうやらゲームは取り上げられてしまった様だ。

あんな事があったため誰も彼に近寄ろうとしない。

しばらくすると、始業チャイムが鳴り先生が入ってくる。

「おーい、お前ら席つけ」

テストは担任の先生以外が担当する。

「テストを始めるぞ」

テストが配られる。しかし、彼はテストを解こうとしない。

「おい、君なんでテスト始めないんだ。早く始めなさい」

先生が注意する。

「書くもの持って来てない」

と彼は言う。これには、驚きを通り越し呆れてしまった。

彼は完全に学校というものを舐めている。

「何を言っているんだ。君は学校に何しにきているんだ。まったく、もういい。本間、彼に筆記用具を貸してあげなさい」

と前の席に座る私言ってきた。正直貸したくない。

どうして私がこんなに意識が低い人に貸さなきゃいけないの?

だが、先生から言われたのであれば仕方ない。シャーペンと消しゴムを貸す。

「ほら、これ始めれるだろ。本間にお礼を言っておけ」

「助かる」

一言お礼を言ってきた。

しかし、助かるってありがとうじゃないのか。とも思ったが今はテストに集中する。

テストが始まり十分後、

「先生、終わったので退室していいすか?」

後ろからそんな声が聞こえた。早すぎる。終わっているわけがない。

先生が確認する。

「回答は全て埋まっている様だが。ちゃんと解いたんだろうな?当てずっぽうじゃダメだぞ」

これだけ早いのだ、疑うのも当然だ。だが、

「勿論、真剣にやったよ」

間をおかずにそう言い放つ。

「まあ、いい」

えっ、いいの?内心驚きを隠せない。

「これでひどい点だったとしても自己責任だからな」

諦めた様に先生は言うが、

「いいよ、別に。全部あってるし、このテスト簡単すぎるから」

などと言う。聞いていてムカムカしてきた。

「退出するなら、静かに行きなさい」

と、先生は言い彼は教室から出て行った。

その後、彼は残りのテストも全て途中退出して行った。

全校集会が始まる頃にはすでに学校にはいなかった。

「ふざけた奴……」

それが私が一ノ瀬ユウキという生徒に抱いた印象だった。

それから、彼が学校に来ることはなかった。

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