始めての迷宮②
10階層のボス部屋の前にまでたどり着いた。
ここまであまりにも順調に進んできてしまったため、当然のごとくボスに挑戦しようという声があがる。
中にはボスへの挑戦は次回でもう少し連係を深めてからにしようという意見もあったが少数派であった。
工藤をはじめ生徒の大半がボス戦へ意気込んでいた。
護衛の騎士達はその様子をなにも言わずに見守っている。
おそらくここらで一度躓いておいた方がよいと判断しているのだろう。
「僕たちは魔王を倒さなくてはならない、こんなところで立ち止まってなんかいられない!進もう!」
最終的には剱崎の一声でボスへ挑むことになった。
剱崎と白峰が二人がかりで重厚な扉を押す。
ギィと音をたてて少し扉が動くと、俺達を誘っているかのように自然に開いていった。
「でけぇ」
誰からともなくそんな声が漏れた。
全長はゆうに50メートルは超えているだろう。
ただただ巨大な骸骨がそこにいた。
「「「憐れな者どもに安らぎを【浄化の輪光】」」」
「「「炎よ槍に形成せ【炎の槍】」」
開幕速攻。
勇者剱崎と聖女雪羅と聖騎士の椎名栞の放った浄化の光が骸骨巨人を包み込む。
そこに畳み掛けるように火炎魔術師の澪と賢者の紫音が炎の槍を放つ!
爆炎が包み込み、ドンガラガッシャンとけたたましい音をたてて骨が崩れ落ちていった。
骸骨巨人が崩れた衝撃で辺りを土埃が舞う。
「やったのか?」
土埃が落ち着き遮られた視界が晴れた。
目の前にあったのは大量の骨の山。
「やった!勝った!」「ボスと言っても所詮は10層、ただの木偶の坊だったな」「俺、何もせずに終わっちまったわ」
勝利のムードに包まれる。
しかしまだ戦いは終わってなどいなかった。
崩れ折り重なった骨が動きだし人型へと組まれていく。
骸骨巨人が再び立ち上がったのだ。
凪ぎ払い。
骸骨巨人はただ右手を無造作に凪ぎ払ったたげだ。
それでもその巨体故に、必殺となる。
虚を突かれた俺たちの中で反応できたのはただ1人、雪羅だけだった。
「守って!【絶対障壁】!!!」
彼女が叫んだスキルは、聖女のみが使える特別なスキル。
効果はいたってシンプル3秒間無敵の結界を貼るというものだ。
白銀の光が俺たちを守護する。
雪羅の作ったわずかな時間。
皆すぐさま詠唱を開始する。
先ず、前に出たのは盾騎士の鈴木。身の長以上の盾を構えて骸骨巨人の凪ぎ払われた腕へ突っ込む!「この身、この盾、鋼の如く!【鉄壁】!!」
「拒み阻め拒み阻めよ【守護結界】!!!」
大司教の安東が更に守りを固める。
「草木よ大樹となりて彼の者の動きをとめよ!【大樹呪縛】!!」
大樹の魔術師たる楪夏希が大樹を操り骸骨巨人の肩に脚に巻きつけ動きをとめる!
「ーーーー【魔力強化】【筋力増強】!!!」
吟遊詩人の近衛恋歌が支援する。
「「うおぉぉお!!!」」「はぁぁぁ!!」
襲い掛かる骸骨巨人の腕を必死に押し返す!
工藤、斎藤、白峰も骸骨巨人の腕に突っ込みその拳で押し返す。
「「「うらぁぁぁぁ!!!」」」
剱崎が聖剣で斬劇を飛ばす!
魔術師など遠距離攻撃手段をもつ者たちが骸骨巨人の頭蓋骨へ魔法をぶつけていく!
骸骨巨人の動きがとまり、その頭蓋にヒビがはいった。
その空っぽの瞳の奥、青く妖しく光る球体があった。核だ。
侍、政宗凜が大樹の幹を駆ける!
そして、核を間合いにおさめ、「【刀術・斬桜】」一太刀で切り伏せた。
骨が崩れる、今度は動きださない。
勝利だ!
「「「「「うおぉぉぉお!!!」」」」」
喝采があがった!