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プロローグ①

宜しくお願い致します。


茜色に染まる教室。

静かに佇む天使(マイエンジェル)

このセカイには俺たち二人だけのようで……


「星宮くん、私に用事ってなに?」

コテンと首をかしげる天使(マイエンジェル)、今日もキュートだ。


俺が彼女を呼び出したのには理由がある。

放課後の教室で二人、告白?違う、これは誓約だ。


……右腕が疼く。

封印が弱まっている証拠だ。

俺の右腕には《邪王龍ダークエンド》が封印されている。

《邪王龍ダークエンド》はかつて第七宇宙において暴虐の限りを尽くし、数多の星を滅ぼした存在。

全てのセカイが滅ぼされる前に最強の竜種と謳われた《星閃竜スターライト》の化身たる俺と、俺に遣える四人の戦乙女(ヴァルキリー)がヤツを封印したのだが、あの日(原初の戦い)から幾星霜の時が流れ、封印が弱まってしまったのだ。

封印が解かれてヤツが復活したとなれば今度こそ全てのセカイが滅びるだろう。この俺も全盛期程の力はすでにない、あの戦いで負ったダメージが大きすぎたのだ!

だから《邪王龍ダークエンド》を復活させるわけにはいかない、再度封印を重ねる必要があった。

しかし封印には戦乙女(ヴァルキリー)の力が必要だ。

これは運命だ。

俺たちは再び巡りあったのだ、時をセカイをも超えて……

俺が《星閃竜スターライト》ではなく星宮流星となり、彼女が《水の戦乙女ブリュンヒルデ》ではなく姫宮雪羅となっていたとしてもだ。

彼女は今、かつての記憶をなくし普通の女の子、姫宮雪羅として生きている、だがきっと魂で覚えているはずだ、だから再び結び直そう真実の絆を……

そしてセカイを救うんだ!

俺は厳かに口を開いて……

「雪羅……君は真実を知りたくはないか?このセカイの真実(トゥルー)を……愛を」


「ほへ?」

ぽかんとした彼女の顔は印象的であった。


☆☆☆


ジリジリジリ!!ジリジリジリ!!

「ああぁぁぁあ〰️〰️〰️!!はぁはぁ、……夢か、寝汗べとべと、気持ち悪い」

嫌な夢を見た、中学2年の秋ごろだったな、あの日、あの告白のシーンをクラスメイトに見られていたみたいで、それもカースト上位のやつに、次の日から俺のあだ名は《トゥルー愛》だ。


毎日のようにいじられた。


一月シカトしてたがムカついてたので殴ってやった。

そっから喧嘩になった、相手のカースト上位グループの男子三人を相手に、おおたちまわり、ちょっと格闘技をかじっていた俺は三対一でもボコボコにしてやった、最後に「雑魚が、失せろ」なんて決め台詞も吐いてやったしな、だけど問題になった。

当然だ。親も呼ばれた。俺が殴った三人とその親御さんに必死に頭を下げている両親をみて、なんていうか目が覚めた。


俺には特別な力があって、人知れずセカイのために闘っているなんてことはなく、自分のケツも自分で拭けないただの子供だって気づいた。


気づいてしまってからは途端に恥ずかしくなったんだ。

今までカッコいいと思ってやっていた言動の全てが、だからやり直す、高校では普通の高校生として青春を謳歌するんだ!って決めた。


それから一年間、死に物狂いで勉強をした。

隣県の進学校に入学するためだ、黒歴史を棄てるために、高校では知り合いが誰もいない場所でリア充になるために!


そして、一年後、無事に志望校に合格。


今日は4月1日、入学式の日だ。


布団からでて静かにリビングへと向かう、まだ早朝、午前四時だ。両親はまだ寝ている。

通学に二時間半ほどかかるため俺だけ早めに起きる必要があったのだ。

冷蔵庫から烏龍茶をとりだし、ごくごく飲んでから、シャワーを浴びる。


熱めのシャワーで寝汗と共に黒歴史をも流してしまいたい。

「なにが天使(マイエンジェル)だよ、戦乙女(ヴァルキリー)だよ!せめてどちらかに統一しろよ!」


シャワーから上がり髪を乾かし制服に着替える。

冷蔵庫からおにぎりを取り出し食べる、昨日の夜、母さんが朝食にと用意していてくれていたものだ。具材は鮭とツナマヨ、俺の好きな具だ。

ラップにくるまれたおにぎりの下、皿の上にメッセージカードがあった。

たった一言「がんばってね」と、ありがとう母さん、頑張るよ、パンッと気合いを入れる。


洗面所で歯を磨いて、そのまま鏡の前で身だしなみを調える。

髪の毛は短く切り揃えられてある、かつては前髪を伸ばして右目を隠していた、魔眼で周囲の人間を傷つけないようになんて言って、ぐぅ。

髭もしっかり剃ってある、眉毛も整えてある。よし!


最後に笑顔の練習、爽やかな笑顔のだ。

けっして「フッ」何て言う不適な笑みじゃない!あれはカッコよくなんてなかった、ただのキモいやつだ!……ぐはっ。


家を出る前にかなりのダメージを負った気もするが、切り替えよう。

ここからがスタートだ。

家族を起こさないように静かに玄関を開けて、一歩、外へ出る。

また静かに鍵を閉めて、「行ってきます」



俺は新たなセカイへと踏み出した。




お読み下さりありがとうございます!

「面白い!」「なんかもにょもにょする」「右手が疼く」と思った方はブクマ、評価、感想、お願い致します。

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