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君が為  作者: 末永彩琉
3/11

邂逅(沖田視点&土方視点)

話に早々の矛盾が出そうですが、読み返し手直し予定です。

-沖田視点-



彼女を見つけた時、どこかのお姫様かと思った。屯所の前に倒れていた愛らしい女の子。僕にでも判る上等な着物に、彼女に良く似合う髪飾り。透き通るような白い肌に、薄紅色の艶のある唇、見たこともないような色をした髪は、ふわふわしていて柔らかそうだ。

「左之助さん、僕土方さん呼んでくるから、この子少し見てて?」

「おう、任せとけ!」


副長の部屋に向かいながら、倒れていた女の子を思い浮かべる。

とても愛らしい娘だったな……。ああ、土方さん呼ぶの左之助さんに任せれば良かったかもなぁ……。

副長室に着くや

「土方さん、屯所前に女の子が倒れてるんですけど~?」

言いながら障子戸を開く。部屋の主は、

「いきなり開けるんじゃねえと、何度言えば解るんだお前は!?」

「まぁまぁ、そんな事より女の子が……」

「はあ?そりゃ、どういう事だ?」

「まぁ、とりあえず付いてきて下さいよ。今、左之助さんが付き添ってくれてます」

「仕方ねぇな………」


我等が副長様を連れて、彼女の元へと戻る。左之助さんが移動させたのだろう。日陰に横たわる彼女は、見つけた時よりも顔色が幾分か良くなっているように思う。そんな彼女の姿を見て、思案顔の土方さん。すぅっと息を呑んだのは、気付かないフリをしてあげた方が良いのかもしれない。ほんの僅かな時間考え、土方さんは

「俺の隣の部屋に連れて行け」

それだけ言うと、屯所内に戻る。近藤さんに報告に行くのだろうと思い至り、僕と左之助さんは彼女を言われた部屋に運んだ。

僕よりは力のある左之助さんが彼女を抱き上げる。幾分かは良くなったとは言え、血の気のない顔色は心配を煽るには充分だ。部屋に着くと、既に布団が敷かれており、そこに寝かせる。島田くんあたりかな?なんて考えながら、彼女を看病しようと近くに腰を落ち着かせる。何とも準備の良い事に、水の入った桶と手拭いが枕元に置いてある。手拭いを濡らして適度に絞り、眠る彼女の額に乗せる。ピクリとも動かない少女を何ともなしに見つめて、ふと思い出す。おそらく彼女の物であろう、行李のようなものを手繰り寄せる。しかしながら、行李のようなものとは言うが、それは不思議な形をしているし、とても小さい物だ。開け方が解らず、しばし四苦八苦したが、漸く開けられた。開けたそれの中身は、見たこともないような物の数々……。唯一判るのは、化粧道具と思われる物くらいだ。それでも、島原の遊女達が使っているようなものよりも小さく、色も沢山ある。これらの物を使っているからか、眠る彼女の顔はとても美しい。今まで見たどの女よりも綺麗だと思う。無垢な美しさと言うのだろうか。初めて僕は女性に対して、そう思った。中身を改め戻した後、障子が開く。左之助さんはいつの間にか出て行ったようで、居なくなっていた。かわりに顔を出したのは平助だ。

「あれ、平助どうしたの?」

「ん~………、何となく気になって?」

二へっと笑う平助。

「まだ目を覚まさないよ?それに、一応女の子の部屋なんだけど」

「いや、まぁ……、そうなんだけどさぁ……」

「まぁ、いいや。暇なら桶の水変えてきてよ。動けなくて困ってたんだぁ」

「は?俺が見ててやるから、自分で行けば良いだろ?」

「え、面倒くさい」

「…っ!!……………はぁぁぁ、仕方ねえな。騒がしくするよかマシだから、行ってやるよ」

「ふふ、ありがとう」


戻って来た平助にも、一応先程見ていたものを見せておく。情の深い平助ならば、僕と同じく彼女の味方になってくれるだろうと思う。

「………これ、本当にこいつのか……?」

「多分ね……。僕が見つけた時は握り締めてたし」

「とりあえず、目を覚ましてからだな。有益な情報を得られるかは判らんが……」

そうだね、と同意の言葉を述べて彼女に目を向ける。変わらず青白い顔は、苦しげに歪んでいる。そんな表情さえも美しい。

僕はそれ程までに、彼女に興味をひかれたのだ。守ってあげたいと、強く強く思った。

ねえ、早く目を覚ましてよ。その形の良い唇から紡がれる言葉を、君のその声を、早く僕に聞かせて。



僕のささやかな願いが届いたのか、程なくして彼女は目を覚ました。

「あ、気が付いた?良かった~。屯所の目の前で倒れていたから、連れてきちゃったんだけど……」

「……そうでしたか。ご迷惑をお掛けしました…」

まだ少しぼんやりしているのだろう。ほんの少し俯きながらも、凛とした声で答える。

「今、近藤さん達呼んでくるから待ってて」

上体を起こしながらコクリと頷くのを見て、平助と共に一旦部屋を出る。多分土方さんも、近藤さんの所に居るだろうからと、局長の部屋へと向かう。

「「失礼します」」

言うが早いか、返事を待たずに開ける。予想通り、土方さんも居る。

「原田から報告は受けている。様子はどうだ?」

土方さんが問う。

「顔色はまだ悪いままですが、先程目を覚ましました」

「そうか……」

大方の報告を土方さんから受けていた近藤さんは、

「では、その娘の所へ行こうか。話せる状態であれば、聞かねばならぬ事もある」

そう言うと部屋を出る。もしかしたら、彼女にとっては酷な事実を突き付けられる形になるだろう。だけど大丈夫。僕が守ってあげるから。だから今は大人しく言う事を聞いていてね。




*****************




-土方視点-



「土方さん、屯所前に女の子が倒れてるんですけど~?」

毎度毎度、返事を待たずに部屋を開けやがる。

「いきなり開けるんじゃねえと、何度言えば解るんだお前は!?」

右から左に抜けると解ってはいるが、言わずにはいられなくて、今日もまた同じ小言を繰り返す。

「まぁまぁ、そんな事より女の子が……」

やはり聞く耳は持たねえようだ。

「はあ?そりゃ、どういう事だ?」

そう問えば、付いて来いと言う。仕方無しに付いて行けば、見たこともねえような綺麗な着物を着た、人形みてえな娘が横たわっていた。


「俺の隣の部屋に連れて行け」

屯所前で行き倒れられていては迷惑だ。総司や原田が言いたいことも解るだけに、捨て置けないとの判断は間違いねえだろう。

指示した後、俺は真っ直ぐ近藤さんの所へ向かう。途中、島田に部屋を整えるよう伝えておく。水桶と手拭いも準備するように指示し、近藤さんの部屋へ。

「ちょっと良いか?」

入室許可を得る為に声をかける。

「……ん、トシか。構わん、入ると良い」

「失礼する。……少々面倒な拾い物をしちまってな」

言い方はアレだが、あながち間違ってない。

「どうした?トシにしては珍しい物言いだな」

言われてみればそうなんだが、それ以外にどう言えば良いか、俺には判らん。

とりあえず、先刻の出来事を掻い摘んで報告する。

「身なりから、身分の高ぇ娘だと思ったんだが、髪色が珍しくてな……」

「ほう……。どこかの藩の姫君かもしれん。トシの判断は正しいだろう。とりあえずは目を覚ますのを待つしかないだろうな」

そう話していると、外から声が掛かる。

近藤さんが入室を促すと、入ってきたのは原田だ。

「娘は言われた通り、副長の隣の部屋に運んで置いた。今は総司に任せている。俺達が最初に見つけた時よりは、顔色もマシになってるが、今のところ目を覚ます気配はないようだ」

昔馴染みの気安さから、砕けた口調で報告をする原田。

「そうか。手間をかけたな」

「いや、俺達が見つけたからな。手間じゃないさ。当然の事だ」

「総司に任せていると言ったな?総司はどうしているんだ?」

「看病、と言えば良いのか、甲斐甲斐しく世話をしようとしていたから、俺は報告をと思ってな」

原田の報告に頷くと、続けて

「あの娘が目を覚ましたら、総司が報告しにくるだろ。それと、運ぶ途中で平助とすれ違ったんだが、もしかしたら興味を持ったかもしれねえ」

と、ため息混じりに言った。

「全ては娘が目を覚ましてからだ。原田、ご苦労だったな」

労いの言葉を掛けると頷き、部屋を出る。

とりあえず、娘の身元が判らない以上はどうしようもない。

「なあ、トシ……。もし、その娘に帰る場所が無いなら、ここに置いてやらないか?」

「……素性も判らねぇ奴は置けねえだろうが」

「そうなんだが………。何となく、行く宛のない娘のように思うんだよ……」

困ったように微笑み、言外に頼むという言葉を滲ませる。

溜め息を吐きつつ、頭を掻く。

「………娘の身元が判ればな。共に居た者もいるかもしれねぇしな。探してやる事も頭に置いておいた方が良いだろ」

頭が痛てぇなぁ………。だが、ほんの小娘が1人でとは考えられねえのも事実だ。何処から来たのか、誰と居たのか、これからどうするのか、まだまだ考えねえと……。

他の幹部連中にも説明しなきゃならねぇし、置いてやるなら部屋も用意してやらなきゃ、年頃の娘は困るだろう。それでなくても男所帯だ。屯所内で規律違反もあるかもしれねぇ。

「すまんなぁ、トシ。俺にもしてやれる事はあるだろうか?」

「……なら、一般隊士の抑制を頼む。幹部連中は問題ねえだろうが、一般隊士ば若い娘に色めく可能性が高いからな」

「そうか、わかった」

局長の親戚筋とか言われりゃ、手も出さねえだろう。

そんな俺の考えは、打ち砕かれる事となる。それでも良いと思えてしまうのは、近藤さんだからなんだろう。

あの美しい娘を、男所帯に放り込むのは気が引けるが、それも娘に行く宛が無い場合だ。大人しくこちらの提案に従うかも判らねぇしな……。

とりあえず、早く目を覚ませ。悪いようにはしねぇが、何も進まねぇのも困るんだ。あらゆる事を想定して、幾重にも策を練らなきゃならねぇんだ。頭脳労働は嫌いじゃねぇが、たまに思う。『山南さんが生きていたら』と。

アンタには敵わねえよ、本当に……。こんな時、アンタならどうするんだろうな………。

考えても答えが無い問いに、思考が絡められそうになった時、娘が目を覚ましたと報告を受けた。

「では、その娘の所へ行こうか。話せる状態であれば、聞かねばならぬ事もある」

そう、まずは話を聞く所からだ。近藤さんと共に部屋を出て、娘の所へ向かう。

自分の手で、居場所を掴め。その為に俺の手が必要なら、幾らでも貸してやる。そう心で呟いて……………。


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