表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/51

ハプニングの翌日







翌日、私は例の小瓶を持ってランニングに出た。

ランニングにはノアちゃんもついてきてくれるのだが、今日は小瓶の中身を秘密裏に処分したいのでお互いのペースで今日は走ろうという事にしたのだが、ノアちゃんが私のペースに必死についてきて離れない。


いつもなら私が合わせているのだが、今日はノアちゃんが必死に食らいついてくる。



六周程した頃、やっとノアちゃんとの距離が開いたので、ノアちゃんが見えなくなった所で林に入り瓶の中身を捨てた。


するとどうだろう。

周りの草が枯れてしまった。しかも瞬時に…。


はっきり言ってゾッとした。



こんな物を飲まされた日には、生きては帰れないのではないだろうか…。

というか、マルロはなんて物を作っているんだ!

もう少し気づくのが遅かったら死んでいたかもしれないではないか!!



私は、処分が済んだので何食わぬ顔でランニングに戻った。





その後学校に登校したが、マルロはいつも通りに登校してきた。



「おはようございます。テレサ様」

「おはようございます。マルロ様」



いつも通りだ。そう思ったが違った。


私の机に手をつき、耳元で囁く。



「俺は諦めないから…」

「!!」



顔を離したマルロを見上げると、とても不敵に微笑んでいた。仮面をしている事も相俟って、より不気味さを醸し出している。


上等じゃない…!



「あらあら、ご冗談を…。その様な戯言は、早く諦めた方がよろしいですわ」



こちらも笑顔で応戦する。

漫画なら、私とマルロの間には火花が散っているだろう。


周りも、心なしかいつもより寄り付いてこない。

私とマルロの普段とは違う雰囲気を感じ取ったのだろうか?

その辺はよく分からない。



「戯言?そんなまさか。私は本気ですよ?あの様な約束など、許せる筈がありません」

「ですが、あれは誓約です。最早違える事はできませんわ」

「…」



二人共、顔には笑顔と言う名の仮面を貼り付けているが、実際の所目が全く笑っていない。


そして、静まり返った教室に声が上がる。



「喧嘩はやめて下さい!」

「「…」」



声がした方を見ると、スーザンちゃんがこちらを見て少し赤く染めて頬を膨らませて怒っていた。

なんとも可愛らしい仕草だ。


そして、こちらに近づいてくるとマルロの腕を掴む。



「何があったかは分かりませんが、入学早々喧嘩なんて駄目です!朝からこんな気分では、皆の気も沈んじゃいます!!」

「…馴れ馴れしく触らないでくれますか?不愉快です」

「きゃっ!」

「マルロ様、女性に対して失礼ですわよ」

「男にベタベタ触れる事自体マナー違反です」



正論だ。


だが、だからと言って腕を振り払って良いかといえば否だ。

やんわり手を離させる事も出来た筈だ。



「やはり、私達は気が合いませんわね」

「そんな事はありません。私は貴女の頼みならなんでも聞けます」

「…そういう意味ではありませんわ」



何故か、昨日から病み始めてしまったマルロに頭が痛くなる。

完全に、ルイスルート中盤の病み始めたマルロだ。

こうなると、見境なく薬を盛ったりしてくるのでたちが悪い。



「朝から煩いですわよ。もう少し静かに出来ないのですか?」

「ナターシャ様…!!」



私の女神!!そして癒し!!

今日も御髪が煌めいて素敵です!!


取り巻きちゃん達を連れて登校してきたナターシャ様が、こちらを一瞥して言い放った。

その声は美しく、まさに女神。



「本当に、躾のなっていない人達だこと」

「本当ですわ」

「朝から不快です」

「こんな方達が私達と同じ貴族だなんて、思われたくありませんわ」



ナターシャ様に続き、取り巻きちゃん達も声を上げる。


私も出来ればナターシャ様と登校したいし、側に居たい。

だが、私は嫌われているから無理だろう…。


私は、ナターシャ様の言葉にうんうんと頷き、頭を下げた。



「ナターシャ様の仰る通りでした。皆様、朝から不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」

「貴女は居るだけで不快だわ」



私の謝罪のすぐあとに、ナターシャ様がそう言った。


やはり、ナターシャ様にはとんでもなく嫌われているらしい。悲しい…。


そんなやり取りをしていると、殿下も登校されてきた。


ナターシャ様はすぐさま殿下の方を向き、美しく挨拶をした。



「殿下、おはようございます」

「あぁ、おはよう。何やら、騒がしかった様だが?」

「えぇ、残念ながらマナーのなっていない方々が居ましたの」



そう言ったナターシャ様の言葉の後に、取り巻きちゃん達が私達を一斉に見た。

そして、殿下もその視線を追ってこちらを見る。



「そうか。なら、ここでしっかり学ばなくてはな」



そう言って笑うと、教室内は黄色い悲鳴で溢れた。

あんなただの笑顔の何が良いのか、私には分からない。


すると、始業の鐘が鳴りカルラがやって来た。

皆もそれを見て席へと戻っていく。


私は、朝からナターシャ様に話しかけていただけた事に感動して、今日も半日頑張れそうだ。









「ではそこまで。今日の授業はこれで終わります。スーザン・フーバー、話があるのでついて来てください」

「はい!」



カルラに呼ばれ、ぱたぱたとついて行くスーザンちゃん。

走り方も可愛らしい。


まったく! なんて可愛い生き物なんだ!


きっと、昨日私が言われたような事を話すのだろう。

私が先に呼ばれておいて良かった。でなければ、あんな汚い汚部屋でスーザンちゃんが話を聞かないといけないという地獄を味あわせてしまうところだった。


昨日の自分ナイスだ!


そう思いつつ、帰り支度を始める。

すると、そこへマルロがやって来た。



「この後、一緒に昼食でも如何ですか?」

「良いですわよ? あ、でも…薬を盛ったりしないで下さいね?」



最後の部分は、マルロにだけ聞こえるように耳打ちした。

すると、背中に視線を感じたので振り返ると殿下がこちらを見ていた。


嫌だわ。何を見ているのかしら…。


私は殿下から視線を戻した。



「まさか、そんな事はしませんよ」



マルロのとてもキラキラした笑顔に少したじろぐ。

この顔は信用ならない。

こんな顔をしていても、ゲームでは毒を普通に盛ろうとしていた。


だが、私が見張っていれば問題ないだろう。

少しでも可笑しな動きを見せたらしばく…いえ、お説教をすれば良いのだ。



私とマルロは食堂へと向かった。



食堂は、一般生徒の区画は混み合いわちゃわちゃしているが、貴族の生徒の区画は余裕たっぷりで優雅である。

一般生徒が、自分達で頼んで食事を運び、席を確保するのに比べ、貴族生徒は給仕の案内で席に着き運ばれてくる料理を待つと言った格差がある。勿論メニューを選ぶ事も可能だ。


私とマルロもそれに習い、席に案内してもらい料理を待つ。



「こんな風に、二人で食事をするのは初めてですね」

「あら、そうだったかしら? よくパーティーなどで一緒になった時に食べていた気がしますけど?」

「こんなに落ち着いて食べたのは初めてですよ」



確かに、言われてみればそうかもしれない。

パーティーでは殆ど立食だったし、軽食やお菓子が多かった。


そう考えると、こうして落ち着いて食事をするのは確かに初めてかもしれない。


だが、昔のように心は弾まない…。

やはり、ショタの方がいい…。



食堂を見渡すと、遠くの席でナターシャ様と殿下が食事をしている。

ナターシャ様は、心なしかいつもより表情が柔らかく嬉しそうだ。


そんなナターシャ様の隣にいられないことが悔やまれるが、ナターシャ様が喜んでいるのなら許せる。

寧ろ、殿下には感謝だ。



「テレサ、見過ぎ…」

「あら、そうでしたか?つい見惚れてしまっていましたわ」



料理が運ばれてもナターシャ様を見ていた私に、マルロは眉を顰めている。

そして、初めて会った時とは大違いなテーブルマナーだ。



「マルロ様は、随分テーブルマナーが上手くなりましたね」

「一体、いつの話をしているんですか…」

「貴方がまだ可愛かった時かしら?」

「…」



確かに、私の誕生日のパーティーに来た時もマナーは素晴らしかった。

だが、改めて見るとそれは際立っている。


あぁ…ずっと子供なら良かったのに…。

なんて言ったら怒られるわね。


私も料理に口をつける。



「…ん?」



口に含んだ料理から、何やら違和感を感じる。


なんか、舌がピリピリする?


それは、辛味とかそんな感じのようであり、だが、何かが違う気もする。

口の中で転がすが、やはり何か可笑しい。


ふとマルロを見ると笑っている。


…やられた!!


そう思い吐き出そうとするが…。



「テレサ。まさか一度口にした物を吐いたりしないよね?」

「うっ…」



その発言に一瞬迷ったが、ハンカチを取り出してそれに出してすぐにしまった。



「なんだ、出しちゃったか」

「…マルロ様…後程、説教ですからね」

「それは嫌だな。で、どうして気づいたの?」

「そんな情報、貴方には渡しませんわよ。それより、害は無いんでしょうね…」



そう言うと、またマルロは嬉しそうに笑って答えた。



「大丈夫。死にはしないから」

「…」



もう、絶対にマルロとは食事はしないと決めた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ