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天使しか居ない





私が発狂してからというもの、私はお爺様に連れられて、とにかく体を動かした。


お爺様は、昔から女性に狙われる程のイケメンで、今もそれは衰える事を知らない。

そんなお爺様は、意外と脳筋なのである。


若い頃は、王国の第一騎士団の騎士団長をしていたらしい。

同じ騎士達には、物凄く慕われており、騎士団を退いた今でもお爺様を尊敬し慕っている者は多いのだそうだ。



そして残念な事に、私はお爺様に似てしまったらしい。主に見た目が。


そのせいか、どうもお爺様には、私が男に見えているようで、乗馬や体術、剣術までもを叩き込まれている。


一応、貴族の娘の筈なんだけど…。


お父様とお母様も、初めは止めてくれていたが、今では諦めてしまっているようで、お母様など私に「もし嫌なのなら、お爺様を倒して帰って来なさい。」などと言われた。


もうお分かりだろう。お爺様は、お母様のお父様なのだ。

つまり、お母様もどことなく脳筋。



そんな感じで、私は家でのお勉強の合間に、お爺様から貴族の子息が習う様な稽古をつけられたのだった…。


なので、益々天使の様な弟との時間が減った…今の癒しは、馬の世話と刺繍だ。


令嬢が馬の世話?と思うだろうが、私が頼み込んでさせてもらっている。

お爺様も、喜んで了承してくれた。


なので、お爺様から頂いた私の愛馬《大福》ちゃんは、私がブラッシングなどをしている。


そのお陰か、馬の世話をしている使用人とも仲良くなった。

短髪の癖のある茶髪に、同じく茶色の瞳をした背の高い男性だ。

ぱっと見強面で無口なのだが、馬…というか、動物全般を愛している優しい人だ。



そんなこんなで私は八歳になった。


当たり前なのだが、六歳の頃よりもぐっと背が伸びた。


髪も腰の辺りまで伸びて、今はハーフアップにしている。しかし、重くて仕方ない。つまり邪魔。



そんなある日、私はとある方のお誕生日を祝うお茶会に招かれた。


その招待状をお父様から受け取った時から、私は喜びでどうにかなってしまいそうだった。


剣術の稽古で、お爺様の腕に模擬刀を当てた時程興奮していた。



もうお分かりだろうが、私の愛する推し!ナターシャちゃんのパーティーだ!!


はぁ…生でナターシャちゃんに会えるのね。

この時が来るのを待っていたわ。八年も待ったのだもの!興奮しても仕方ないわよね!!

でも、明日は朝早いから、早く寝ないと…ん〜!嬉しい!嬉し過ぎて眠気がこない!!



布団に入って横になるも、眠くない。

そんな感じでごろごろしていたが、いつの間にか寝ていたらしく、メイドのリタに起こされ、出かける準備を済ませてから王都の屋敷へと向かった。


王都へはパーティーの前日に着くことが出来た。



そして翌日。

私は準備を整えて、ロゼライン公爵邸へと向かった。






「本日は、お招き頂きありがとうございます」


私は、目の前の可愛らしいナターシャちゃんに挨拶をした。

ゲームの時は、既に十五歳だった為今よりももっと大人びた感じの少女というよりも、女性に近かった。まぁ、美しい…が、可愛いになっただけだ。


私は、天使の様なナターシャちゃんを見つめる。



ブロンドのサラサラヘアーをくるりと巻いて、宝石の髪飾りとリボンを付けている。瞳は海の様に青く、澄んでいる。

天使を具現化したら、こんな感じなのではないだろうか?

まぁ、今ここにいる貴族の子息令嬢は皆天使の様に可愛いが、ナターシャちゃんは抜きん出ている。



そんなナターシャちゃんは、私を見て鼻で笑った。



「あら、貴女の様な方もお父様は招待されたのね。まぁ、みすぼらしい貴女には縁のない様なパーティーだけど、楽しんでいって頂戴」



生の嫌味だ!しかも幼女の!!


私の心は踊る。

こんな可愛い天使が、私に悪態を…可愛い!めちゃくちゃ可愛い!!



「えぇ!楽しませていただきますわ!!」

「っ!…ふんっ!」



彼女は一瞬たじろいで、私に背を向けて行ってしまった。

私としては、もっと話したかったのだが、今日の主役を引き止めてはいけないだろう。まだ学園でも会えるのだから、また少しの我慢だ!


私は今日、ナターシャちゃんをこの目に収める為に来たと言っても過言ではないが、実はもう一つ目的がある。


それは、可愛い天使ちゃん達とお近づきになる事だ!!




私は、可愛いらしい天使ちゃん達に自然を装い近づき話しかける。だが、何故か上手くいかない。


そして途中で気づく。可愛い天使達がコソコソと影で囁く声に。



「見まして?あのお姿」

「えぇ、まるで男の方みたいですわ」

「あんなに大きいなんて可哀想に」

「あれでは、貰い手は限られますわね」



なんと!8歳前後のご令嬢達が、私の話をしている!!

確かに、ここにいるご令嬢の誰よりも背が高い私。しかも、ご子息の中にも私より小さい方が普通に居る。

そのご子息からも、なんだか睨まれている気がする。


可愛いから、睨んでいるのか分かりにくいが、たぶん睨んでいるのだろう。子猫の威嚇の様なものだ。

つまり、只々可愛い。



私は自然と笑みを浮かべる。


はぁ、来てよかった。

こんな可愛い天使達に会えるなんて、ストレスも消し飛ぶわ!



私は、早々に友達づくりを諦め、天使ちゃん観察に移行した。


パーティーの為に並んだケーキや軽食を軽くお皿に盛り、座って周りを観察する。



女の子は皆、色鮮やかな可愛らしいドレスを身にまとっている。まるで妖精さん。男の子達も、ワンポイントで個性を出していて可愛らしい。



そんな風に周りを見ていると、ある一点に目が止まった。



会場の様に、小さな集団が何かを囲んでいるではないか。


私はそれが何か気になり、立ち上がってお皿をテーブルに置いて、小さな集団の元へと向かった。






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