乙女の神の世界 地球⑦ 穏健派の進攻
祐介から穏健派について話を聞き終えた俺達は、ひとまず部屋で休むことに。広い部屋と少し狭い部屋。
俺は考えごとがあるからと、狭い部屋に籠る。
広い部屋には、クシナとナゴ、そして新たに美里を加えた三人で使ってもらう。
ベッドで木目調の天井を見上げながら、俺は改革派について整理をしていた。
リーダーの隼人を中心に妹の美里、隼人の親友の祐介、無口な白という人物、そして浩……だったか。
まだ他にも改革派のメンバーはいそうではあるが、主にこれらが中心的なメンバーだろう。
祐介から聞いた話では穏健派は随分と小賢しいイメージだった。
人を欺き、騙し、襲う。これが、奴等の手段なのだろう。
美里の暴走とはいえ、話し合いは決裂に終わっている。
その一方で、穏健派から改革派に人は流れてきている。
仄かに香る裏切り者の存在、そして穏健派の手口。
「不味いかもな」
俺はベッドから起き上がり部屋を出ると、そこにはクシナとナゴ、それに美里までが待ち伏せしていた。
「おいおい、休めっていっただろう」
「充足。問題ない」
「わたしもね。それよりさ、人が増えるのはいいと思うけど食糧とか足りなくなってるのでしょ。それって不味くないかな……って。そもそも気分悪い穏健派が黙って人の流出を放っていることも気になるし」
「ぼ、ボクだって、そう思いついたから兄さんに報告しようかなって。その前に、えぇ……と、グレンにも言っておこうかな……て」
相変わらずのクシナに、かなり鋭い指摘のナゴ、美里は……まぁ、ナゴの受け売りだろうが。
「わかった。四人で隼人の所に向かおう。それに、早く手を打たないといけないかもしれないしな」
俺達は、ろくに休むことなく再び隼人の家に向かった。元は美里の家でもある。ノックなぞ不要とばかりに勢いよく、扉を開くとそこには先客が二人。
浩と白の二人。浩は俺を見るなり睨み付けてくるし、白も白で一瞥だけすると、再び視線を戻す。まるで、俺達には眼中にないようであった。
「どうした、美里。それにグレンも」
てっきり家で休んでいるものだと思っていたのか、隼人は美里を心配している様子だった。
俺は、三人の会話に割り込むように間に立つ。
「話があるのは、俺だ。隼人、少し急いで戦闘準備をして警戒した方がいい。俺なら武器も食糧も人が増えすぎている今を狙う」
「ちょっと! 部外者は黙ってくだ──隼人さん!」
浩は俺が気に食わないのか、すぐに突っかかってきたが、隼人がそれを強引に引き留めた。
隼人には逆らえないのか、浩は黙ってしまい引き下がる。
しかし、浩はチラチラと美里へ視線を移したり落ち着かない様子。
(ああ……俺に突っかかってくるわけだ)
俺が知っている中心的なメンバーで一番年下に見える浩。美里と変わらない年頃で、お年頃っていうわけか。
そう言えば、美里が俺の婚約者になったと聞いて怒鳴っていたな。
俺にその気は無いんだが。
クシナさんや、俺の尻にグングニールの穂先を突いてくるのを止めてもらえませんかね。
「いきなり戦闘準備とは、穏やかじゃないな。俺としては、まず話し合いをだな」
「何を悠長な……美里の件で話し合いは、決裂しているだろ。まだ、そんなことを言っているのか!?」
いや悠長というよりは、改革派のリーダーとしてなるべく被害を出さないように考えているのかもしれない。
しかし、それは……。
「隼人。改革派のリーダーならば、見極めを間違えるな。このままだと、被害は増えるだけだ」
「その理由は? 根拠がないと俺も動けないぞ」
一番の懸念は裏切り者の存在。それもかなり初期の段階で。だが、誰が裏切り者かすらもわからない。
今、話すべきではないと俺は判断した。
「穏健派の目的を考えろ。大義名分は、人口の増加だ。つまり今の状況は、穏健派にとって不味いんだよ。人の流出は止めなければならない。ところがだ。実際は止める気配がない。矛盾しているんだよ」
「スパイ……か」
白が初めて喋るのを俺は聞いた。低く渋い声。年齢自体は隼人達と変わらないが、その声を聞いただけで老けているように思えた。
「可能性はあるのか? 白」
「緩やかに改革派の人口は増えた。あまりにも緩やか。気づかれないように」
美里と祐介が隼人の両腕としたら、この白が、隼人の頭脳ってわけか。
それにしても、今まで気づかないなんて……頼りがいがないな。
「ん? なんの声なの、これ?」
ナゴが一瞬の静寂の隙間に喧騒が外から聞こえてきたという。
俺達は、まさかと思い玄関の扉を開いて外に出る。
そこには、小型の自動操銃で、無惨に殺される改革派の人々がいた。




