神々の住まう処⑤
神卓会議は既に始まっていた。俺達三人は、邪魔にならないように見守るしかない。
円卓を取り囲むのは、双子のようにそっくりな姿をした白髪の山羊の神と黒髪の獅子の神。
一際他の神と比べて背が高く体も大きく、どっしりと椅子に座る厳つい顔をした天秤の神。
白髪白髭の会議を取り締まる老齢の姿をした羊の神。
そして、その横に座るのは双子の神。
双子の神とは、初めて会うのだがその姿に驚愕した。服を纏ってはいるが、人の形を成していない。
服の隙間からこぼれ落ちる緑色の体液、目は複数あり顔のような位置に乱雑に並ぶ。口の位置には口はあるが、左側に大きく裂けている。
一種の化け物と言ってもいいが、その声だけは、渋いハスキーボイスというギャップ。
「小生の所へ向かわせたいのだが、いかかかな?」
「久々に来て言うじゃないの、双子の神」
「山羊の。おんしの所は最近行ったはずだが、口出し無用」
このままだと、双子の神の世界で決まりそうだ。俺が転移、転生を始めてから初参加という最大のメリットで双子の神は、話の中心にいた。
「暇ね、クシナちゃん」
「退屈。寝ていい?」
もうすぐ決まりそうだが、睡眠を必要としない俺と違って眠そうに目を擦るクシナ。ナゴも大きな欠伸をし始める。
(どうなっている? ナゴはともかくクシナは、俺と同じような立場のはずだ。なのに眠そうにしているし、立つのにも疲れが見えている)
『グレンくんの本当の名前は何?』
ナゴに言われた言葉がフィードバックする。俺はそもそも何者で、何故こんな事を繰り返しているのだ。
クシナとナゴは俺を挟んで凭れかかり、眠り始める。俺はその場にゆっくりと座ると二人を体に引き寄せた。
二人の寝顔を見ていると、俺も自然と大きな欠伸が出てしまった。
「まだ、会議終わってないわね」
俺は聞き覚えのある声で、目がさえる。ショッキングピンクの髪をした乙女の神の登場に俺は円卓へと顔を向けた。
俺と目が合う乙女の神は、微笑みを返して席に着く。
いつもと変わらない。しかし、今ではその自然さが不気味に思えた。
山羊の神は明らかに不快な表情をしている。
「今回、私の所に行って貰いたいわ。場所は地球よ」
「乙女の。小生、今回初参加故に──」
「あら。参加は自由のはずよ。今まで参加しなかったのは、双子の神の都合でしょ。関係ないわ」
バッサリと切る乙女の神に、双子の神は押し黙ってしまった。完全に主導権を乙女の神に取られたな。
「それじゃ、今回は私の世界にある地球ってことで、いいわね?」
乙女の神の早業に、会議史上最速で向かう場所な決まった。
◇◇◇
会議が終わり乙女の神が近づいてくる。
「というわけで、宜しくね。グレンくん」
「あ、ああ……」
「くすっ……かわいい寝顔ね、二人とも。特にそのクシナという子。今度は守れるといいわね」
そう言って乙女の神も退席していく。
「ちょっと待て! あいつ、今俺のことなんて呼んだ?」
そうだ。グレンは前に行った蟹の神の世界の仮の名前。どうやって乙女の神が知ることが出来るのだ。
考えられるのは二つ。
一つは、蟹の神の世界にアクセスして覗いていた。
もう一つは、ここに戻って来てから盗み聞きしていたか。
「後者だとしたら、山羊の神との会話も聞かれたか?」
それでいてあの微笑みが出来る不敵さに、俺の中でも乙女の神に対する不信感が膨らんでいった。
『今度は守れるといいわね』
てっきりクシナ本人のことだと思っていた俺は、その意味を履き違えていることに、このときはまだ気づいていなかった。
◇◇◇
俺は二人を起こして天使から地球に関する資料を受けとる。ついでにナゴのカードも使えるようにしておいてくれたみたいだが、その効果の一部は少し変化しているので、と注意を受けた。
「なんだこりゃ。この地球ってのはおかしなところだな。化学兵器はあるのに、文明度が二だって? 核兵器……なんだ、これは」
「核兵器というのは、爆弾の一種です。地球は戦争で、これを使用したことにより人類の百分の一まで人口が減っていますね」
天使から話を聞いて、俺は呆れる。
今まで戦争のある世界は、確かにあった。
権力闘争、国取り合戦、他種族との争い、理由は様々だが、ここまで酷いのは初めてかもしれない。
「現在は、それから百年経っていますが、復興どころか未だに争い、衰退の一途を辿っていますね。手っ取り早くとの希望なので今回は転移となってます」
「手っ取り早くって……グレンくんは、報酬として自由を与えられているのでしょ!? だったら彼のペースで進めるべきよ!」
「いやぁ、そのぉ。ボクに言われても……」
ナゴの追及に天使も困り果てている。ナゴの指摘がなければ今回も俺は、ただ了承していただろう。
俺達は、武器庫に向かい武器を選ぶ。魔法は無いみたいだから、今回持っていくのは、対化学兵器がいいかもしれないな。
俺は久しぶりに呪血銃を手に取る。もう一つは大雪斬という一本の長剣。
化学兵器が多いとなると、火器も多いだろう。
その点、この大雪斬ならば斬れば無力化出来る。斬れば容易に凍結させれるからな。
クシナには相変わらずグングニールを、ナゴには調整したカードを持たせていつもの場所に立つ。
初めて複数人で向かう為、万一はぐれないように手を繋ぎ俺達は、足元に空いた暗い闇の穴へと落ちていった。
四章プロット改正する為に少し期間が空きます。




