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神々の住まう処④

 シャワーを浴び終えたクシナとナゴを座らせて、俺が転移、転生を使って色々な世界で、停滞や荒廃した文明を動かすべく行動していることを話す。

クシナは知っているのか、興味がないのか、わからないがつまらなそうに足をプラプラとさせていた。


「なんで、そんなことしてるの?」


 なんでと言われ俺は言葉に詰まる。神々に言われたから──それもあるが、何か違うような気がする。


「仕事……だから?」

「仕事? お金貰ってるの?」


  俺は報酬は特に無く、支障がない程度なら自由にすればいい事が褒美のようなものだと、ナゴに伝えた。


「それって、おかしくない? 例えばわたしのいた世界だと浮島が落ちた時点で仕事は終わりでしょ?」

「……浮島?」

「ええっ! 覚えてないの!?」


 俺はナゴからサクラとかモモとか聞くが花の名前がどうかしたのか尋ねると、驚き戸惑っていた。


「俺はここに戻された時点で、記憶を別の媒体に移し替えるから覚えていないんだ」

「それって、変だよ」


 ナゴから第三者から言われて俺に疑問が生じる。ナゴの話だと、俺は浮島というのを落とした時点で、こちらに戻されたと言う。


「ねぇ。自由にしてもいいって言われても、仕事終えた時点でここに戻されるのでしょ? だったら、全然自由に過ごせてないよ」

「いや、だから、支障がない程度になら……」

「グレンくんが、わたしの世界に来たのって、ゲームが始まる直前だよね? そこからゲームに巻き込まれて……ほら、全然自由じゃないじゃない。ねぇ……もしかして記憶消えるのって、そういう都合の悪い事を思い出せないようにしているんじゃないの?」


 いや、まさか……と、思いつつも確かに辛かったり悲しかった思い出がない代わりに、楽しかった思い出もない。

俺は記憶を移したからだと考えたが、ナゴの指摘が正しいのではないかと思い始めてきた。


「グレンくんって、向こうでの名前でしょ? 本当は何という名前なの?」

「わからない……」


 俺にも名前があったはずだ。本当の名前が。だけれども、俺の記憶に残っている最古の名前は、初めて転生した時のもの。


「どうして、こんなことをしてるの?」

「わからない……」


 気づけば、転生、転移を繰り返していた。きっかけがあったはずだが、記憶の中には、それはなかった。


「本当に神様達って、グレンくんの味方なの?」

「わからない……わからない! わからないっ!!」


 俺は床に両手を付きながら、床を何度も叩きつける。何度も、何度も、何度も。

ナゴは、そんな俺の手を掴み心配そうな顔でこちらを見ていた。


「ごめんなさい。色々聞いてしまって……。これからはわたしもクシナちゃんも付いている。あなたは、もう一人じゃない。だから泣かないで」


 情けないが俺は気づけば、ボロボロと涙を溢していた。ナゴは俺の頭をそっと包むように抱き寄せる。更にクシナは抱きつくように飛び付いてきた。


 まだ少女の二人に慰められては、奮起しなくてはいけない。そうだ、わからないなら調べればいい。

その結果、神々に逆らうことになったとしても、この二人だけは守ると強く誓う。


 俺達三人は神卓会議を行っている場所へ向かうことに。


「あっ、すまないがナゴ。カード全部出してくれ」


 ポケットから、カードを取り出して俺に渡してくる。そこで、ふと、疑問が湧いた。

俺は何故、このカードの事を覚えているのだ。

そして、このカードはこのままじゃ使えないと思っているのは、何故だ。


 俺は少し膨れっ面の天使にカードを渡す。


「すまないけど、このカードを何処でも使えるようにしておいてくれ。出来るか?」

「出来ますけど……」

「言いたいことはわかるけど、武器のメンテナンスは君たち天使の仕事だろ? やらないと困るのは君たちだろう?」


「わかりました」と、顔も姿もそっくりのもう一人の天使がやってくる。

少し目を離したら、もう、どっちが今一緒にいた天使かわからなくなってしまう。

全ての天使は、意志疎通の必要なく全て共通した感覚、思考を持っている。

全て合わせて一個体らしい。


 少し緊張する中、白い円卓が見えてくる。神々は俺達を一瞥すると、すぐに視線を戻す。


(乙女の神が居ない……?)


 聞きたい事があったが、不在のようだ。この後姿を見せるかもしれないが。


 俺達三人は、次に向かう世界を決めるべく神卓会議を始めるのを見守るのであった。

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