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蟹の神の世界 アクアスフィア⑪ モモの本性

 太い木の棒で後ろからナゴを襲ったマサカツ。ほんの偶然だったのだろう、偶々振り向いたタイミングで襲ってきたものだから、ナゴは躱すことが出来た。

マサカツの周りにモモの姿はない。


 人の彼氏を奪うような奴だ。マサカツを利用しているのだろう。まだ少女なのに末恐ろしい。

ナゴは、必死になって逃げ出した。

木の棒を振り回しながらマサカツは追いかける。


 ナゴは運がいい。こんな鬱蒼と茂った森の中で木の棒など振り回しても、何かしら障害物に邪魔されるか、威力が削がれる。

一度直撃食らって倒れなければ、そうそう当たらない。

そういう意味でも背後からの奇襲を躱すことが出来たのも運がいい。


「質問。どうするの?」

「そうだな……よし、ナゴを助けるか」


 俺達はナゴに向かって走り出す。

このゲームをクリア出来るのは四人まで。何事もなければ、レンカやサクラを助けてやろうかと思ったが、レンカがあの調子だと完全に俺達を敵視している。

ならば、運のいいナゴに力を貸してやるのも悪くないと思った。


「マサカツを殺すなよ、脅せば逃げるはずだ!」


 クシナに釘を刺し、俺達はナゴとマサカツの間に割り込む。


「なんだ、痴話喧嘩か? 随分物騒な物持ってるな、マサカツ」


 といいながらも、二丁板斧(にちょうはんぷ)を持つ俺やグングニールのレプリカを構えるクシナの方が余程物騒だが。


「じゃ、邪魔をするな、グレン」

「断る。こんな状況で恋人を見捨てて色香に走った挙げ句、その元恋人を殺そうとする奴なんか、邪魔をするに決まっているだろ」

「うるさい。モモちゃんは、違うんだ。とても俺に優しくしてくれるんだ! ナゴみたいにすぐ怒ったりしないんだ!」


 チラリとナゴを見るが確かに気は強そうだ。だからといって殺そうとまでするか、普通。


 まさかと思うが、木の棒で襲ってくるほど馬鹿じゃないだろうな。構えながら徐々に間合いを詰めてきているけど。

クシナも殺気をそれ以上出さないで頂きたい。

殺気を受けて自暴自棄になられても、それはそれで困る。


「う、う、うわぁあああ~~っ!!」


 叫び声を上げながらマサカツは木の棒を俺に向かって投げつけると、尻尾を巻いて逃げ出す。

軽く木の棒を払い、俺は唖然としてしまった。

獲物を捨てて、背中を見せて逃げ出すって素人か……いや、素人だったな。


 どうやら俺もこのゲームに多少なりとも惑わされているらしい。


「あ、ありがとう」


 ナゴは服に付いた枯れ葉を払いながら、礼を言う。俺はアイテムボックスから食糧を取り出すとナゴに渡してやった。


「こ、これ……」

「いいから食べろよ。最近食べていないだろう?」

「いいの? 食べちゃうよ。一体何が目的──まさか! あたしの体が目的!?」

「いや、違うから。それとクシナ、槍の先で俺の後頭部をチクチク刺すのはやめなさい」


 クシナは、後頭部を刺すのを諦め背中を刺すことに決めたようだ。

全く……俺は今は子供だが、中身は大人だぞ。いくらなんでも興味ねぇよ。


 ナゴは、自分を襲ったマサカツに対して憤りを感じながら黙々と食事をする。

見張りをしながらナゴを見ると、確かに気の強さは外見からも伺えるが決して高飛車な別けでもなく、食事を終えると礼を言える位は弁えているようだ。

恐らくマサカツがナゴに怒られるのも、マサカツがだらしないのだろうと、俺は思った。


「ねぇ、どうして助けてくれたの?」

「気まぐれ。ここからはナゴ次第。俺達と一緒に行くか、一人で生き残るか。前者だと再びマサカツと向き合うことになるし、後者だとここで俺達がナゴを殺すかもしれないな。どうする?」

「どうするも、こうするも、グレン達について行くしかないじゃない」

「いいのか? マサカツとまた対峙することになるぞ?」

「だから、構わないって。いくらあたしでも命狙った奴に情なんて無いわよ」


 それじゃ決まりだと、俺達は少し移動をして岩場の陰に隠れる。


「まずは、聞きたいことが。シノブ達のグループは分裂したようだが、何があったのか教えてくれないか」

「そうね。まずはマキが抜けた辺りからおかしくなり始めたわ」


 ナゴの話では、マキはシノブと話があると二人きりで話をしたらしい。

もちろん、二人きりだと何があるか分からないから、後をつけたら、喧嘩別れをしてマキが出ていったという。

この辺りは俺も千里眼で見ていた。しかし、それは恐らく芝居。

あの後、シノブは一人でマキと会い、そして殺した。


 三日目、モモとダイジロウは周囲を二人一組で分けて警戒中、ダイジロウがモモを襲い返り討ちに合ったと聞き、それにはちょっと驚いた。


「三日目ってことは、モモかダイジロウがジョーカーだよな。他に犠牲は出ていないし。どっちがジョーカーだったんだ?」

「分からないわ。三日目に全員のカードをシノブも含めて見たけれど、誰にも書いていなかったの。シノブはダイジロウがジョーカーだったんじゃないかって言うけど」


 カードには出ないのか。だが、ジョーカーはモモかダイジロウのどちらなかなのかは間違いないようだ。


「あと、よかったら、ナゴのカードの能力を教えてくれ。もちろん俺も教えるし、クシナ、君もな」


 俺とクシナにはカードの能力以外の手段もあるし、ナゴのカードの能力を知っておきたかった。


 まずは、俺から見せる。俺のカードの能力は“千里眼”。

言わずもがなだが、遠くを見渡せる能力。


「成る程、これであたし達を覗き見していたわけね?」

「覗き見って……失礼な」


 まぁ、あながち間違いでは無いけれども。


 次にクシナだ。クシナはリンの分と二枚ある。

まずは、クシナ本人のもの“身体強化”。

成る程、俺と渡り合ったのもこれを使ったのか。まぁ、それだけでも無さそうではあるが。

次にリンの分。“ダウンバースト”。

クシナに使わせてみたが、急転直下の風で相手の動きを止めるものみたいだ。

クシナにはダウンバーストの意味が分からなかったから、俺との時は使わなかったのだと。


 そして、最後にナゴ。

能力は“イージス”。

これはかなり強力であった。

所謂、盾を呼び出すものなのだが恐ろしく硬い上に、ナゴが扱えるように、かなり軽量。

正直、欲しい。

何で、俺だけ“千里眼”って非戦闘用なんだよ、全く。


 時間が経つのがここに来てから早く感じる。真っ暗な森になる前に他の奴らを見ておこうと、俺は“千里眼”を発動させた。



◇◇◇



 シノブには変わった動きはない。レンカとサクラは、随分と動き回っていた。俺を探しているのだろうか。


 そして、モモとマサカツ。マサカツは、ナゴの襲撃を失敗して気まずいのか、中々モモのいる場所に戻ろうとしなかったが、ようやく戻る。

何か言い争っているようにも見える。


 次の瞬間何か光、マサカツが前のめりに倒れた。モモは平然とマサカツに近づきポケットを探る。

カードを奪っていることは分かったのだが、奇妙なことにマサカツは、むっくりと立ち上がるとモモの後をついていく。

一瞬、殺したようにも見えたのだが、その後のマサカツはカードを奪われたことを気にせずモモに寄り添う。


 俺はマサカツよりも、終始笑っているモモがどこか不気味に思えるのだった。

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