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蟹の神の世界 アクアスフィア⑦ ジョーカー

 俺達はペナルティを食らい、その後の食糧に関してのアドバンテージを失う。

それどころか千里眼の能力すら使えないために、他の奴等の居場所すら分からなくなった。


 俺は比較的周りより高い木に登り、辺りを見渡す。島の全貌までは分からないが、森の木々を越えた幾つもの杭は見ることが出来た。

今いる俺達の場所は比較的杭の近くで、次の日になれば危険だと予想出来、木から降りた俺はクシナと共に島の中央へと移動を始めた。


「この辺りまで来れば大丈夫か。クシナは平気か?」

「肯定。クシナはあなたを守る」

「ありがたいけど、自分の身は自分で守れるさ」


 三時間ほど歩き続け俺達は木の根元に腰をおろす。あまり体力を使う訳にはいかない。飲料水も残りは少ない。なるべく一口ずつ口を湿らす程度で我慢していた。


「あと、まだ十八時間も残ってるのか……」


 カードが刻むカウントダウンを見る度に、遅い時間の進みに苛立つ。実際には普通に時を刻んでいるのであろうが、こういう時は、総じて遅く感じてしまうものだ。

そう心の中で繰り返し、自分を諌めるのであった。


 もうすぐ二日目が終わろうとする。辺りは暗く俺とクシナは交代で周囲を警戒しながら眠りにつく。

こういう時、クシナは非常に頼りになる。

彼女の気配を感じ取れる範囲は、かなり広く俺と同等くらいであった。


「起床。誰かいる」

「何処だ?」


 俺とクシナは小声で話す。クシナが指を差した方向を探ると確かに人の気配が感じられた。


「一人か?」


 気配は一つ。しかし、それは妙で近づいてくる様子はないが、ずっと此方を見ているような気がする。

監視かとも思ったが、初日に自分の能力をペラペラ喋ったやつの中には俺の千里眼のような能力は無かった。


「疑問。クシナ達から仕掛ける?」

「いや。警戒はするけど、十中八九罠だろ。近づくのは止めておこう」


 三日目の朝が来た時には、その気配は消えていた。まだ十二時間位残っているか……そう思いカードを見たとき、一つのルールを思い出す。


 それはジョーカー。


 ルールではジョーカーに選ばれたものは、誰か一人を殺さなくてはならない。

俺、それにクシナもどうやらジョーカーではない。

ジョーカーが狙うならサクラレンカ組か俺達だろう。

果たして、誰がジョーカーなのか……。



◇◇◇



 深夜突然、眠っていたあたしのカードが突然震え出し目が覚めた。


「どうかしたのか、モモ?」


 マサカツがあたしの心配をしてくれる。マサカツはナゴの彼氏だけど、今はあたしに傾きかけている。

別に大した男の子じゃない。

ナゴもこんな男の子の何処がいいのか甚だ疑問を浮かべる。


「大丈夫。ちょっと……離れるね」


 まだ皆眠っている。起こさないようにソッと立ち上がる。


「何処行くんだよ。ついていこうか?」

「ばか……トイレよ、トイレ」


 バッと目線を逸らして恥ずかしがるマサカツ。(うぶ)なやつ……。


 あたしはカードを確認すると、そこには“ジョーカー”の文字。

あたしが三日目のジョーカーに選ばれた。

これで誰かを殺さなくてはならない、気が滅入る。


「ん? これは、なに?」


 ジョーカーの文字の隣には矢印が点滅しており、指で触れると画面が切り替わって書かれた内容を見たあたしは思わず笑みを浮かべてしまっていた。


 成功報酬。人を殺すことに成功すると貰える報酬、それはカード。


 一見、大した報酬ではないけど、これで三つ揃うのは大きい。

あたし、殺した相手、成功報酬。

期間まで生き延びればこの島から脱出確定。


「じゃあ、マサカツはダメね」


 真っ先に浮かんだ殺しやすい相手。ほぼ、あたしの側にいるし狙いやすいけど、あたしはもっと先の事を考えていた。


 それは、揃ったカードが奪われないこと。


 あたしがジョーカーだったとバレたり、カードを三枚揃えている事が判明したりしたら、あたしは孤立してしまう。


「一番理想なのはシノブだけど……」


 自己が強く、一見リーダーシップを発揮しているけれど、何か胡散臭いのよね、あの男。

だとすれば、彼の戦力を割いた方がいいかも。


 ミツルとダイジロウ。厄介なのは、体格も大きく力の強いダイジロウね。


 あたしは標的を決めると再び仮初めの群れの中へと戻っていく。

さぁ、あたしの能力『針千本』で串刺しにしてあげるわね。



◇◇◇



「お前らの中にジョーカーは居ないか?」


 あたしは戻ってくるなり、失念していた。カードを調べられたりしたら、あたしがジョーカーだとバレる。

シノブのやつ……あたしを吊し上げる気みたい。


 シノブは、まず自分のカードをじっくりと皆に見せる。

そして、自分がジョーカーでないと分かると、一人一人カードを確認していく。


 不味い、不味いわね……。戻ってくるんじゃなかったと、後悔する。


「モモ。次は君の番だ」


 駄目だ上手い言い訳が思い付かない。


「どうした? 早くしろ。それともジョーカーなのか?」


 皆があたしに視線を向けてくる。奇襲をかけて逃げた方が賢いのかもしれない。

震える手で、あたしはカードをシノブに手渡す。


「……モモも違うのか。だとすれば、ここにいない残りのだれかか」


「えっ!?」そう、声に出しそうになる。カードを見ると、そこにはジョーカーの文字は消えていた。


 配慮ってやつね。まぁ、いいわ。

あとは、ダイジロウと二人きりになるだけ。その時は、すぐにやって来た。

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