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蟹の神の世界 アクアスフィア⑤ 記憶の無い再会

 ここは何処だろうか。俺は寝ていたのか。


 記憶が混濁した中、必死に思い出そうとすると頭が何かで突き刺すように痛む。

それでも、少し思い出してきたのは、クシナという少女と俺が戦闘中だったこと。

どっちが勝ったんだっけ?

倒れ込むクシナに見下ろす俺。しかし、そこで俺は頭が痛みだして……。



 俺は慌てて目を覚まし体を起こすと、「きゃっ」と誰かが小さく悲鳴を上げる。


「生きてる?」


 体を確認すると脇腹には傷はあるものの、他に特には問題はない。

それよりも何故だ。

何故、俺と戦っていたはずのクシナが俺の枕元に座っている。

恐らく、膝枕をしていたという位置に。


「クシナ、お前……俺を殺さなかったのか?」


 さりげなくポケットを探るがカードは残っている。それすらも取らずにいたのか。


「不殺。理由が無くなった」

「理由? ここを出るにはカードが必要なんだぞ。それは理由にならないってことか?」

「肯定。クシナは人を探していた。そして見つけた!」


 突然、クシナが俺に抱きついてきた。その目にはうっすらと涙すら浮かべて。


「ちょっ、ちょっと待ってくれ。探したって俺を? 何処かで会ったっけ?」

「肯定。クシナを助けてくれた。こことは違う世界で」


 違う世界……もしかして、このクシナも転生者、か? いや、そんなはずはない。神々の許可なくして転生など出来るはずが──いや、いた。仮面の男が。


「もしかして、転生者なのか?」

「秘密」


 いや、もし転生者なら、これは神々の違反にあたる。口止めされて当然か。

俺は、話せる範囲でいいのでと前置きしてクシナに俺との出会いを聞いてみた。

転生者なら、以前の記憶は消されるはずなのに、クシナは何故か鮮明に覚えていた。


 話し方が独特なクシナの話をまとめるとこうであった。


 俺はクシナの命を救ったらしい。そして認識番号しか無かったクシナにクシナと名前を与えたのも俺だと言う。食糧を見つけてこれからっていう時に俺は突如クシナにグングニールのレプリカを渡し消えてしまったのだと。

それから数ヶ月の間、クシナは俺が戦っていた時のことを思い出しながら、グングニールを振るい鍛えたと。

ところが敵に見つかり奇襲で倒したものの深手を追ったところに、手を差し伸べたくれた者がいるという。


「懇願。クシナに貴方を陰から助けて欲しいと言った」

「助ける? 俺を?」


 確かに記憶を探ると該当する記憶はあったが、直ぐに頭が痛み出す。

映像から何故か文字列へと変わっていた為、目の前のクシナが本当にそうなのかが分からない。が、クシナの手にはグングニールのレプリカが握られているし、一つ思い出した事があった。


 この世界にくる前に、山羊の神が乙女の神に突っかかっていた事だ。

たしか、山羊の神の世界に乙女の神がアクセスしたとか。

あの時、介入していないと言っていた乙女の神……。


 嘘かよ! 思いっきり介入したんじゃないか。どうする、どうやら俺の為にしてくれたみたいだが。黙るか告るか──それは、戻ってから考えればいいか。


 不思議そうに俺の胸に抱きつきながら見上げてくるクシナ。悪い気はしないどころか、心が安堵する。まるで何か無念だった想いが晴らされたかのように。


 俺はクシナに正直に話す。クシナを覚えていないが、記憶には確かにクシナらしき人物との接触が見受けられると。

覚えていないと言われて少し悲しい顔をしたクシナだが、それでも構わないとクシナは再び俺の胸に抱きつく。まるで親に甘える幼子のように。



◇◇◇



 その後、もう一つ俺との関連性が見つかる。クシナの槍術だ。

俺の戦っている姿を見ていたらしいが、それだけでは説明がつかない。

最初は教えてくれなかったが今となっては、簡単に教えてくれた。


 狸顔の師匠──間違いなく俺に槍術を教えてくれた人。その人の世界に一旦連れていかれ、そこで槍術と言葉を習ったという。


 納得してしまった──確かに師匠は、クシナみたいな話し方をしていたと記憶を探り思い出す。


「そう言えば、今は何日目だ? 俺はどれくらい寝ていた?」

「微量。一時間くらい」

「そうか。で、クシナはいつまで俺についてくるんだ?」

「永遠。離れない」


 永遠かよ。さっきまでとはうって変わって、クシナは俺の腕にしがみつき、まるで恋人のように振る舞う。


「質問。名前教えて欲しい」

「名前? 今はグレンだけど」

「否定。本当の名前を」

「そうか、クシナは俺が転生者と知っているからな……悪いけど無いんだよ、俺には名前が。ずっと昔はあったとは思うのだけど、今の俺にはグレンという名前しか。だから、グレンでいいよ」

「了解。グレン」


 しかし、クシナは何故記憶を消されていないのだ。確かに何度も転移転生を繰り返し永いときを生きてきた俺には記憶の量を整理するためだが。何か不公平な気がするが。


 俺は、ひとまずクシナと行動を共にすることに。


「千里眼!」


 辺りをぐるりと見渡すと、レンカとサクラが交代で眠りについているのを見つける。残りはどうしているか探してみる。


 シノブのグループを見つける。しかし、シノブは深夜に何か言い争いのような事をしていた。相手は三つ編みで眼鏡をかけた少女、たしか名前はマキ。

他の皆とは少し離れた場所でマキが凄い剣幕で怒っているようにも。

シノブの方は、逆に冷静のようで相手を馬鹿にしたように聞き流しているようにも見えた。


 あ、マキがシノブのグループから離れていく。どうやら仲違いをしたようだった。


 もうすぐ夜が明ける。一日目から色々ありすぎだな。リンという少年は死亡して、俺とクシナ、サクラとレンカ、シノブをリーダーとした六人組、そして、一人となったマキ。


 まもなく、二日目が始まる。

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