猿を追う者(アホの子、猿を追う)
見てくれてありがと
伏見とチョコレートの話題で、猿の話しを思い出した。
猿嫌い。
情けない思い出話しで、もやっとするかも。
ある晴れた秋の午後、私達は郊外の住宅地を走っていた。免許を取って数年、二人でお気に入りの曲を聴きながらあてないドライブをたまにしている
時に隠れた醤油屋さんや、カフェ、雑貨屋何かがポツンと住宅地にあって其がアタリハズレの降り幅でかくて何か好きだった。方向音痴な私はアタリの店にもハズレの店にも二度と行けない難点が有るけれど、とにかくドライブが好きだった
家と畑が混じり会うのどかな道を、最近珍しいミッションの中古軽自動車は伏見チョイスのサックスジャズと私チョイスの時代劇セレクション江戸の黒豹を微妙に垂れ流してゆっくり走る
と、畑の中に茶色い影が横切った。野生の猿を発見
私は思わず、ブレーキを踏みサイドブレーキも引いた!
「うおらー猿は許さーーーん」
猿を見かけた瞬間、ぶちギレで猿を追いかけた。
走る私の背に伏見笑い声が聞こえる
「あいつの足、遅ぉーあははははは。おっそい。小走りで猿追いかけた。足遅いヤバい、あはははははもー止めて腹痛い、くく、あっあはは」
伏見あのやろ、こちとら全力疾走じゃい。体感的には風になっとるわ!
私は猿が嫌いだ。特に民家に出てくる野生の日本猿が嫌いだ。本当に嫌いなのだ。奴等とは因縁がある。今回それは置いといて
畑で憎たらしくも、農作物を荒らす猿は丸く育った茄子を両手にしムシャつきながらさっと屋根にのぼった
素敵な古いお家の土塀の瓦屋根に、大きめの一匹狼ならぬはぐれ猿、その下にミュールとフエルト生地の巻きスカートの何か芋い感じの女が跳ねる
「降りてこんかーい!殺ったろやワレぇーー」
空しく響く声、昼下がりの住宅地、車から漏れるお洒落なジャズは切り替わり、私のチョイスした江戸の黒豹が伏見の腹筋をより苛烈に苛めにかかる
「え江戸の黒豹、あははは、足おっそいのに、黒豹チョイス。も、もうダメ」
ぴょんぴょん跳ねつつ猿にメンチ切る私、ちなみに私は人間とケンカとかしない運動神経無さすぎて、相手が普通に武術の奥義、後の先とかが出来てしまう(後の先とはカウンターの日本語的なやつだよ)猿に対する憎しみだけでやってる
にらみ合いの後ろが笑いでうるさいので、振り返て見ると助手席の伏見はインストルメンタルパネル(インパネ、何かフロントガラスの下のとこ)にインポート物の馬毛ブーツに包まれた長い足をのせ笑い転げてる。あいつマジ車から降りて加勢する気ゼロやな。てか、私のいっぱいくんを蹴るなよ(愛車に、いっぱいいっぱいって名前付けてた)
猿はメンチ切られたら殴りかかってくる習性を持つのに、屋根の上のはぐれ猿はアホを見る目で此方を見下ろし盗んだ茄子を食ってた
猿降りてこず
微妙な引き分けでこの戦いは終了
後で伏見に説教した
あのあとめちゃくちゃ説教したのに、すればするほど笑う。あのやろ
あまりにテイストが違うので別の短編に猿を嫌いな理由を上げました。アホの子シリーズにまとめましたので、気が向けばご覧下さい