061~070
061.
「昨日の空飛ぶ箒の件を解決した」「え、凄い!」姫の居室の窓辺に、箒に跨った魔法使が颯爽と現れ、ちょっとドヤ顔で言い放つ。「不可視だが、鞍をつけてある」「お尻が痛くないですね!」「そもそも箒ではなく、魔神を変身させている」「合理的ですね!魔神さんお疲れ様です!」
062.
「密室殺ドワーフなのだそうです」「それでなんでぼくが呼ばれる」「本当に密室なのか、つまりこのご遺体となられたドワーフ氏以外に部屋の中に誰もいなかったかどうか調べて欲しいと」「魔術の干渉は完全遮断されているな」「ではやはり密室?!」「暖炉のとこに隠し扉あるけど」「えー」
063.
廃村に魔獣が出るから退治して欲しいと頼まれた。「廃村に出るなら放置でいいじゃないか」「街道まで遠征してくるそうです」「その場合街道に出ると言わないか?」廃村につくと、村中が白い糸で包まれていた。「雪が降ったみたいですね」「絹だな」「絹って…高価な…?」捕まえて飼う事に。
064.
「あのう魔法使さん…昔、近隣のけっこう強い軍事国家を滅ぼしたって本当ですか?」「どの国?」「どっ……木材を買ったって」「ああ、あれ。十年かからなかったな。あそこは製鉄も盛んですぐ森林がなくなって、土地がやせたり土砂崩れで滅んだ」「魔法は?」「国滅ぼすのにそんなもんいるか」
065.
「髪の毛をひと束くれないか」「良いですよ!呪い殺すとかじゃないですよね?」「効かないだろ。星の糸をとるための囮にする」「星の糸?」「星座を形作っている線だ。現実には存在しない」「存在しないものをとるんですか?」「ああ。綺麗なものは綺麗なものにつられて寄ってくるからな」
066.
土人形が街で暴れ狂っていると通報を受け、姫と魔法使は飛んで行った。姫の目にも止まらぬ連打で手足を粉砕され、胴だけになって転がった土人形に魔法使は手を触れる。「暴走の原因分かりましたか?」「怒りだ」「…土人形が?」最初に潰されたのは作った魔術師だと後に判明した。
067.
「魔法使さん、神を乾かして貰えませんか」「めんどうくさい。自分で絞ればいいじゃないか」「傷んじゃいますよ」「ぼくがやったって傷む」「そっとお願いします」「もういいから、とにかく少し絞れ。家の扉まで雪で埋まりそうじゃないか」「後で雪だるま作りましょうね!」「断る」
068.
「うわあ、とっても寒いですね!銀世界ですね!」「そうだな」「寒そうじゃないですね」「元々耐寒だし、火の精霊に抱きしめて貰ってる」「えい!」「おいやめろ、人の頭よりも大きな雪玉投げるな。雪だるまにしろ」「一緒につくりましょうよ」「断る」「じゃあ投げます!」「分かったよ」
069.
魔法使が小さな砂時計をひっくり返した。「世界が滅亡するまで、あとこれだけの時間しかないとしたら、どうする?」「えっ!?敵はいるんですか!?殴ればいいですか!?」「そんな単純な話じゃない」「えええっ!?そ、それじゃあ…うーん…このとっておきのクッキー食べます」「ハハハ」
070.
魔法使の家の庭に、炎のバラが咲いた。小雪が降る中、篝火のように燃え盛っている。「あったかいですねえ」「あったかいよな」魔法使と姫は手をかざして仲良く暖をとる。「すっごいきれいな焚火ですね」「育てるの大変なんだ」「贅沢ですねえ」「貴族に高く売れるけどな」「だと思ってました」