第3章28話 光り輝く星空の下で
日暮時から始まったニースィア公爵家の晩餐会も、そろそろお開きの時間となる頃。
今回は俺達のパーティーにとって初めてとなる、お貴族様の晩餐会でのミラの護衛となった。しかし予想以上に絡まれてしまって、やはりこの世界の貴族というものとの相性は最悪なようだ。
こちとら異世界のしがない平民生まれの平民育ちなもんで、もう二度と御免という気にもなってくる。
まあ、妖精のフィのように、ケータリングサービスを腹一杯無制限に食べられて、幸せ一杯な人もいるようだが。
恐らくは人一人分ぐらいの重量は、軽く食べ尽しているはずなんだが。レベルアップといつの間にか習得していた【身体強化】スキルもあってか以前のように飛べなくなることも無く、平気な顔をしてフラフラ飛び回っている。
聖獣のルーはというと、コロンが飛ばないように言い含めたのが理解できているみたいだ。いつものようにフヨフヨと飛ぶことも無く、まだ短い足でトコトコとそこら辺を歩き回っていた。
肝心のミラだが、今は休憩を兼ねてお化粧直しに行っている。当然、男の俺は同行できないので、護衛はアリスやルリ達女性陣が付いて行って晩餐会の会場にその姿はない。
それにしても、今日も立派に一国のお姫様としてのお仕事ができていたようで、本当に良かった。
「あら、あなたは……」
「ん?」
後ろから声をかけられて振り向く。すると前にニースィアの街の郊外で盗賊に襲われていたところを助けた、貴族令嬢のレティシアが驚いた顔をして立っていた。
今日は前のように旅装ではなく、貴族令嬢然とした明るめの藍緑色の生地に銀糸の刺繍をあしらったAラインのドレスを身に纏い、ガーターベルトで極限まで絞った細い腰に15才とは思えないほど膨よかな双丘が周囲の男共の視線を釘付けにしていた。
しかし、俺の脳裏には自分の胸に短剣を押し込もうとしている、どこまでも毅然としながらも余りに儚い彼女の姿がフラッシュバックしてしまう。
だからだろう、ついガラにもなく何時もよりも少しだけ優しい口調でつぶやく。
「ああ、確かレティシア。よかった、元気そうで」
「過日はこの命、お救いいただき本当にありがとうございました」
そう口にすると、スカートの先を摘まんで、やはり毅然とした気品のある所作で綺麗なカーテシーを披露してみせる。
「ああ、こんなに元気で綺麗な君を見れて、あの時は間に合って本当に良かった。それにしても、今日の服はよく似合っているな。最初は、誰か分からなかったよ」
「あ、ありがとうございます。今の私がこうしてあるのも、あなた様のおかげです。
あの後、皆様にお礼をと思って、冒険者ギルトで情報を聞こうとしたのですが、教えられないの一点張りで。お礼を申し上げるのが大変遅くなり申し訳ありませんでした」
「あ~、気にしなくていいから」
何となくだが、ロシアンブルーのネコ耳をした受付嬢のニヤニヤした顔が浮かんだので、すぐに振り払う。
すると、俺の自慢のシルバーのパーティーロゴが入った黒ネクタイを指差して、レティシアがわずかに小首を傾げながら上目遣いで覗き込んでくる。
「ところで、今日はどうされたのですか? それに、その格好……」
「ああ、仕事だ。知り合いの護衛でね、アリス達も今は一緒にお化粧直しに行っているだけだから、じきに帰って来ると思う。レティシアは一人なのか?」
先日、従者と護衛を全滅させられたはずなので、少しだけセキュリティを心配して声をかける。
「いえ、両親と来たのですが……はぐれてしまったようで」
「そうか。今は護衛対象がいないから、俺も一緒に探そうか?」
この危なっかしい少女はほっておくと、すぐに短剣を胸に刺したり無茶をしそうで、つい普段は決して口にしないようなことを口走ってしまう。
「え? ええ、そうですね。クスッ、それではお願いできますか? もしかしたら、外の庭園の方に出て行ってしまっているのかもしれませんので」
「ああ、じゃあ行くか」
最初は目を見開いたが、すぐに嬉しそうにレティシアが微笑む。
彼女が指差すテラスの先にある、暗がりに包まれた庭園に向かって歩き出そうとすると、スッとリスト丈の白いグローブに包まれた細く華奢な手が下向きで差し出されて来た。
「はい……」
少しだけビックリしたが、お貴族様の護衛というのは足元が不安定な庭園に出るときは手を引くことぐらいはするのかもしれないと思い付く。
そっとその手に下から拾うように触れると、転んだりした時に手を離したりしないよう少しだけ指先に力を籠める。
「それでは、お嬢様。参りましょうか」
「クスクスッ、ええ。ハクロー様、それではお願いしますね」
少しだけお道化たように慇懃に笑って見せると、彼女も楽しそうに微笑んでしっかりと俺の手を掴む。そうして、二人でゆっくりと屋敷の外へと歩き出す。
そういえば俺の名前も憶えていたようで、それは良いんだが――『様』付け、は止めにしてもらう訳にはいかないのだろうか。
外に出るとさっきまで決闘騒ぎでごった返していた庭園に、既に人は殆ど残っていなかった。 夜空の星が静かに瞬くだけで、とてもロマンチックなデートには絶好のシチュエーションなんだろうが。
日本でも女の子と出かけたことすら無い俺ときたら、別に洒落た会話ができるわけでも無い。唯黙って手を引くだけという、なんともヘタレなエスコートに自分でもガックシ来てしまう。
そんな感じで暫く二人で手を添えながら歩いても彼女の両親は見つからず、とうとう庭園の一番奥の方の綺麗な花が咲いている花壇の傍まで来てしまっていた。
明るい月明りに照らされた手入れの置き届いた花々が咲き乱れる花壇を背景にして、レティシアは何故か嬉しそうに黙ってついて来ている。
そのシャンパンゴールドの長髪を夜風にそよがせた姿はまるで西洋絵画から抜け出てきたようで、男子高校生的にはそれだけでドキドキするには十分だった。
そう言えば、初めてレティシアと会ったのも綺麗なお花畑の真ん中だったな。
流石にここまで来ると、人影は無い。ここには誰も居ないようだから、別の場所を探そうか。と考えていると、俺の手に触れた彼女が耳を澄ますようにしてつぶやく。
「ハクロー様、せっかくなので一曲ご一緒に如何ですか?」
そう言われると、だいぶ離れた屋敷の方からダンス曲だろう静かな楽曲が風に乗って聞こえてきていた。
「ん? ああ、でも俺は踊れないぞ?」
「んん~、では手をこうしてください。それからこっちの手はこう……そう、そうです。はい、それでは」
彼女は俺の手を肩と腰に持って行くと、自分は両手を俺の首の後ろに回す。すると身長差が20cm以上あるので、彼女は俺を見上げることになる。
必然的に身体をピッタリと寄せることになってしまうが、レティシアはそのまま夜風に乗って聞こえてくる優しい曲に合わせて、ゆっくりとステップを踏み始める。
目の前で覗き込むようにしてくるレティシアの大きなアクアマリンの瞳は、少しだけ嬉しそうに細められていた。
シャンパンゴールドの長い睫毛がわずかにかかって、スッと綺麗な鼻をこちらに向けながら、艶やかな唇の端をちょっとだけ上げて微笑む。
真夏の夜の夢のようなそんな涼やかな夜風がそよぐ中で、ピッタリと豊かな膨らみを俺の大胸筋というか腹直筋に密着させた彼女は、それでもどこか悲しくなるほど綺麗だ。
ああ、こんなにも幸せそうな笑顔が美しい彼女が生きていてくれて良かったと、あらためて心の底から思うのだった。
「……ハクロー様?」
「ん、どうした?」
「うふふ、何でもありません」
そう言って微笑むと、コツンと可愛いおでこを俺の胸にぶつけてくる。やっぱり平民の素人な初ダンスには無理があったかと思いつき、失敗したかと恐る恐る聞いてみる。
「どうかしたか?」
「いえ、本当に何でも。えっと、……秘密です。うふふふ」
怒っている訳では無いようなので、ドキドキしながらも少しホッとする。薄く頬を染めた彼女は胸にくっつけたまま、上目遣いで何も言わず、優艶に微笑んでいた。
そんな静かでゆったりした時間が過ぎて、やがて楽曲が終わりを告げる。
彼女はまた少しだけ寂しそうに微笑むと、「ここまでいないようだと、控室に戻っているのかもしれません」とつぶやいて、俺の手を取るとゆっくりと会場に戻った。
そして長い睫毛をわずかに伏せたまま、晩餐会会場の扉の外へと消えて行ったのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「あ~。ハク様、いたぁ~」
「あ、本当だ。ハクローくん、どこ行ってたんですか?」
レティシアが消えた扉をしばらくボッと見つめていると、みんながゾロゾロとお化粧直しから帰って来た。どうやら、途中で一度すれ違ってしまっていたらしい。
「いや、それが」
「クンクン、あっれぇ~? ハク様から女の人の匂いがしましゅ?」
「ええ! ハクローくん、何やってたんですか?」
突然コロンが俺の胸に鼻を近づけて来たかと思うと、首筋までクンクンと嗅ぎ始めるのを見て、慌てたルリが騒ぎ出す。
「いや、だから」
「ハクローったら、みんながいない間にどっかの女としけ込んでいたのよ」
「おい」
頭の上をフラフラと飛んでいた妖精のフィが人聞きの悪いことを言い出すので、今度はルリが俺の胸倉を掴んで鼻を擦りつけて来る。
「えええ~~! クンクン。ハクローくんが女の人と、し、し、しけ……」
「クロセくんが、他の女と何をしようが私は気にしない」
何故か達観したように、無表情のままのユウナがフルフルと首を振る。とうとうルリは叫びながら胸倉を掴んだまま、ガクガクと前後に揺らし始めてしまう。
「ぎゃあ~~~! 何してたって言うんですかぁ~!」
「いや、聞けよ」
こりゃあ当分は駄目だな、と暫く天井を眺めてからため息と共につぶやく。
「はあ~、それよりアリスとミラ達は?」
「ああ、それなら今」
まだ帰って来ていない面子のことを聞いてみると、唯一人冷静に見えるユウナが何かを言おうと口を開きかけるのだが。
「我が愚娘が世話になっているようだな」
その後ろから、高飛車な女の声が辺りに響く。
またか――今日はこんなのばっかだな。いい加減お貴族様の相手をするのも面倒になってきたので、早々にご退場いただくことにするか。
「ハクロー・クロセといったか。ハクロー、そなたに話が」
いきなり声をかけてきて、こっちの返事も聞かずに勝手に話し続けている年増の女は――どことなく、ミラに面影が似ている。しかし金髪なので母親、つまりは正妃ということなんだろう。
「クロセだ」
「――あるのだが。ふん、男として責任を取れるのだろうな」
了解も無く初対面から他人の名前を呼び捨てし始めたので訂正してやったのだが、全く聞く耳を持たずに勝手に話し続けている。
無視してやっても良いんだが、その後ろでミラが俯いて背中を丸めて縮こまっているのが眼に入ってしまった。
チッ、こいつとは話をする必要がありそうだ。悪かった機嫌が、さらに数段階ギアチェンジして究極に悪くなる。
「貴族でもない男に嫁ぐのが、この国の王族の責任の取り方なのか?」
「伯爵位ぐらいなら、訳無く授与できる」
いとも簡単なことのように手を振りながら言ってのける王国の正妃に、普段から悪い目付きをさらに険しくして睨みつけながら、鼻で笑ってやる。
「先の無い王国の元平民貴族に嫁がせることが、母親の責任だとでも言うつもりなのか?」
「無礼な」
キュッと眉を寄せて、王家の威光を背景に睨みつけて来る。だが、そんな威圧もかかっていない眼光ひとつ屁でも無い。
そもそも、だから何だと言うんだ? ミラには悪いが、こんな糞みたいな国、何時でも出て行ってやるぞ。
すると横にいた無表情のユウナが、静かに口を開く。
「王国が今のままで、いられる時間は残りわずか」
「【予言】とやらか、厄介な」
苦虫を噛み潰したような顔になる正妃に、最後の忠告とばかりに静かに、しかし憚ること無く宣言する。
「友達としての責任なら、ミラが自分の力で自信を持って自立した生活ができるように応援してやることで、必ず取ってやる」
「ふんっ、そんなことができるはずが」
顎を上げながらもわずかに泣きそうな顔をする正妃に、容赦なく言葉を被せてやる。俺は今、激烈に機嫌が悪い。
「ミラはあんたなんかより、よっぽど大した女だ。舐めるなよ」
「何?」
「え?」
訝し気に驚く正妃とは対照的に、後ろで俯いていたミラが、ハッとして顔を上げる。その後ろには、最近の明るく元気になったミラをよく知る、アリスを含めたみんなの姿があった。
「男はその上で宛てがわれるのではなく、自分の力で見つければいい。ミラが選んだ男なら、間違いはないだろう」
「え? ええ!」
戸惑いながらも俺の言葉に応えるように、ミラが先ほどよりはわずかにスタイルの良い背を伸ばし均整のとれた豊かな胸を張る。
「き、貴様! 王族別荘に居座り続ける、平民風情が!」
さっきから正妃の両隣にいるのは【解析】で視ていて、会談でも見た初老の公爵ともう一人。
18才だから息子というよりは、年齢的にはおそらくは孫といったところか。急に喚き出したのは、このお坊ちゃまの方だ。
ひとまずは、この18才にもなる公爵家のお坊ちゃまは無視することにして。
「それに、王国の監視の名目があると言うから、このニースィアに居てやっているだけだ。俺達がここに居るのが気に入らないなら、何時でも出て行くぞ?」
「そ、それは駄目ですっ!」
そこにいる正妃と公爵、そしてお坊ちゃまの三人を睨みつけたまま言い放つと、後ろにいたミラが突然前に出て来て俺に向かって通せんぼをする。
ビックリした表情を隠すこともできずに、高貴なはずの三人は口をポカンと開けている。
ミラはボルドーピンクのマーメイドラインのドレスに、ストラップレスの肩から剥き出しの両の手を横にいっぱい広げて、さらに声を荒げる。
「絶対駄目です!」
「なぜですっ、姉上! こんな下賤な冒険者、いや下郎など姉上の傍に置くに相応しいはずが無い!」
我に返ったらしい公爵家のお坊ちゃまがミラに食って掛かるが、今度は三人の方へ振り返ると、俺を庇うように前に立って静かに告げる。
「テオファヌ様、私はあなたの『姉上』ではありません。それに私の友人は、私が自分で選びます」
「そ、そんな……姉上~」
ガックリとその場に膝を着く、打たれ弱い公爵家のお坊ちゃまテオファヌくん。
俺の前に立つミラレイア第一王女がその素晴らしいプロポーションでスッと背を伸ばして、抜群のスタイルの胸を張ってモデル立ちすると、正妃と公爵は威圧されたようにたじろいで一歩後ろに下がってしまう。
「それでは、私はこれで失礼させていただきます。ハクロー様、少し奥の庭先を散歩したいので護衛をよろしくお願いしますね」
「ああ、まかせろ」
自身の母親と祖父に向かって、トンッと後ろに引いた足を鳴らして見事なまでに綺麗なカーテシーを披露する。
そうして、クルッと踵を返して颯爽とその場から立ち去るミラレイア第一王女姫殿下は、これまで秘めていたそのカリスマ性を余すことなく発揮し始めるのだった。
「ハクローの奴めぇ。あいつ、ミラを萌え殺そうとしてるわよ」
「お母さん、ハクローくんにあれは藪蛇だったかもねぇ~」
「こぉ~ん」
「フィはしらなぁ~い」
「ニャア~」
「クロセくんの寝た子を起こした、だけ?」
「ふふふ、計画通りです。いえ、それ以上と言ってもいいでしょう! クロセ様、流石です。グッジョブ!」
公爵屋敷の大きな庭園のその先の花壇に出ようと歩く後ろから、何事も無かったように現れたのは侍女筆頭のクラリスだ。
「クラリス、あんた今までいったい何処行ってたのよ……」
「あら、アリス様。ちょっと野暮用で。いえ、私は別に、何も企んでなんか……おほほほ」
「何よ、あからさまに怪しいわねぇ」
明らかに何か企んでいるクラリスに、アリスが胡散臭そうな顔をする。
「わ~ん、私だけ置いてかないでくださいよぉ。ルリ様~、待ってください~」
一番後ろから、みずいろの修道服を着て両手に料理を山盛り載せた皿を抱えた、ぽんこつフランが泣きそうな顔をして追いかけて来る。そういえば、いたのかポンコツ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
既に日はとっぷりと暮れて、星降る夜空が照らす歴史ある公爵邸の庭園にある花壇。
それぞれの属性の色にほんのりと輝く透明な少女の姿をした高位六精霊が宙を舞う、幻想的な風景がそこにはあった。
屋敷から少し離れた庭園のその場所には、抜群のプロポーションをマーメイドラインのドレスで惜しげもなく露わにしたミラレイア第一王女が、神秘的な六色の属性の光に照らされて夜の暗闇に浮かび上がっている。
そして切れ長の翠瞳を細めて微笑むその周りには、彼女が友達と呼ぶ若い男女が談笑しながら寄り添っているのだった。
その横にはさっきまで姿が見えなかった、普段は必ず傍に控えているはずの侍女筆頭のクラリスの姿もある。
この時公爵家に訪れていた人々は、まるで精霊と共に神々が集うかのようなその神々しいまでの光景に圧倒されて、遠巻きに様子を窺うだけで近づくことができないでいた。
その様子を公爵邸の室内から静かに見ていた、もう初老になろうかというニースィア公爵が思わずつぶやいてしまう。
「いい若者ではないか。それに比べて、我が本家の孫ときたらいい歳をして相も変わらず。懲りもせずに――『姉上』、『姉上』か」
「そんなことを言って。私にあんな役を押し付けておいて、どの口がそのようなことを」
初老の公爵の横で同じように、夜闇に浮かび上がる幻想的な自分の娘を眺めていた正妃が、恨めしそうに睨みつける。
「何を言う、20才にもなって自室に引き篭もっておったミラレイアが、突如として王城を出て来たかと思えば、あんなに自信に満ちた美しい乙女になっておるのだ。
いやはや、おぬしや儂のような役に立たん老害はもう必要ないのかもしれんのぉ」
「ご自分は私をあんな国王に嫁がせておきながら、よくもそのような。お父様に言われたくはありません」
呆れたようにため息をついて、実の父親である公爵に文句を言い出す正妃。
「ふぉふぉふぉ、まあそう言うな。せっかく王城から無事帰ってきたんじゃ、ミラレイアはここで守るぞ。誰であろうと口出しはさせん」
「ふふふ、まず最初に陛下をなんとかしないといけませんね。でも、それでも結局、あの子はここに大人しくしているとは思えませんが。まったく、誰に似たのか」
「わっははは、それもまた良し! 若いもんはそうでなくってはなぁ!」
そう言って豪快に笑いながら優しい眼差しを向け続ける先には、光り輝く星空の下、高位六精霊と仲間に囲まれて幸せそうに微笑むミラレイアの姿があるのだった。