再び岩の洞窟4
ここまで、リアルな時間で測れば大した経過では無いのだろうが、俺にとってはえらく長い時が流れた。
目の前のヤツはいくら叩き斬っても意味が無いし、その後ろではゴブリンが怪しげな調薬をしている。
俺を助けてくれるはずのパーティメンバーは、全員手も足も出ない状況にあるし、それを救う手はずも無い。
しかも、自身の体力は急速に削られてゆく。
こんな時に火事場の馬鹿力ならぬ、勇者の力が発揮できれば全て片付くのだろうが、それも発動しそうにも無い。
絶望しかけた中、それでも頑張っていれば何れはスペシャルな力を発動出来る。それだけを信じて、俺は何も考えず、ひたすら剣を振り続けた。
しかし、それも限界に達したらしい。
何も考えず、と言うよりも、何も考えられなくなった。
体力の限界。
そこへ再びゴブリンがやってきて、フラスコをぶん投げてきた。
今度は強烈な刺激臭がして、ジワジワと集中力を削られて行く。
『マジックドレインのクラウドよ』
とロゼが俺の頭脳に直接語りかけてくるが、もう返答している余裕も俺には無かった。
どうせなら、一思いに殺れよ・・・・俺が倒れそうになった時、賢者クラウディアの幻が目の前に現れた。
「ここで諦めて惨めな敗者になるか、屈せず、例え体力を使いきって斃れても、勇者として終わるか、自分で選ぶのだ」
俺はどちらも選ばない。
無心に、前方のホムルンクスに向かって剣を横払いすると、奴らは切り口から閃光を発して消滅した。
次いで、こちらに背中を向けて薬の調合をしているゴブリンを、背後から袈裟斬りにした。
「もふーっっっっっっっ!」
ゴブリンは変な声を出してこちらへ振り向くと、手にしたフラスコを投げてくる。
俺はそれを楯で叩き落とすと、前方に強烈な閃光が発生して、ゴブリンは失明したらしく、
「眼が、眼がぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
まあ、これは意訳だが、そんな叫び声を上げながら右往左往する。
ふう・・・・よろよろと俺は蹌踉めき、何かに手をついた。
水瓶だった。
水か・・・・
『何か容器で水をすくって、こっちへ撒いて』
ロゼの声が頭に響いたので、俺は無意識に机の上にあった柄杓を取り、水を瓶から掬って、パーティメンバーの方に向かって撒いた。
さすがに、ここで体力の限界に達したようだ。
俺の意識は遠のいた。




