城の中へ
エリーとの別れ際、どうしても聞いておきたかった事があったので、思い切って訪ねてみた。
「勇者って何なんだろう?」
「勇者は魔王と戦う人の事でしょ?」
エリーは苦笑いしながら答えた。
「いや、俺なんかより、そこの衛兵の方がよっぽど強そうだし、大軍で魔王とやらの本拠地に攻め込んだらどうなのかな」
「魔王はね、勇者以外とは戦ってくれないの」
「どう言う事?」
「お母さんが子供の頃に、隣の国の王様が、義勇兵とか傭兵を募って、魔王の城へ攻め込んだことがあったんだって」
「どれくらいの数?」
「20万人くらいになったって」
「それだけいれば勝てるんじゃ無いの?」
「全滅、って言うか誰も帰ってこなかったそうよ」
「何だそりゃ」
「詳しくはわからないけど。でもその三年後に勇者とその仲間が魔王を退治したのよ」
「20万の兵隊が倒せなかったのに?」
「勇者と五人の仲間だったかな、倒したんだって」
「じゃ、魔王はもういないんじゃ?」
「魔王はね、倒しても数年すると復活するの」
「何だ、それなら倒しても無駄じゃないか」
「そうは行かないよ。倒しても復活するからって、放置した結果、魔物の集団に全滅させられた村とか、半壊した町なんかがあったんだから」
「ネズミとか嵐みたいなもんだな・・・・」
「そうそう、お母さんも言ってた。完全に撲滅出来ないからって放置したら、ネズミに町を乗っ取られてしまうから、それと同じだって」
「でも何で勇者が魔王を倒せたんだ?」
「私に聞いても答えられないよ。とにかく、勇者がいないと困るわけ」
「ふうん・・・・まあ、城に行けば賢者か何かがいて、その質問に答えてくれるだろう・・・・いや、ここまでありがとう」
「うん、じゃ頑張ってね」
エリーは手を降って坂道を降りていった。
俺は呼吸を整えると、城の中へと足を踏み入れた。