城門の前
目の前に大きな城門があった。
いわゆるファンタジー世界に出てくる、石造りの西洋式城門だ。
「あー、最近異世界に飛ばされるタイプのラノベとかアニメとか見たりしていたから、夢にまで現れた」
しかし・・・・土埃の匂いとか、日差しの眩しさとか、やけに生々しい。
「お前、新人の勇者だな?」
背後から『日本語』で誰かが俺に問いかけてきた。
「え?」
振り向くと、ゲルマン魂迸る面構えのフルプレートの騎士が、馬上から俺を見て哂っていた。
「もう王には会ったのか?」
なんだか分らないが、取り敢えず首を横にふる。
騎士は更に嗤って、「そうか、勇者は不足している。まあ頑張れよ」と言って城門の中へ消えた。
「何で俺が勇者なんだ?」
さっぱり分らない。
だが、さっきから白人のガキが俺の方を指差して、
「おい、勇者だぜ」
「勇者だ」
と嘲笑っている。
取り敢えず、俺の姿形をチェックしてみよう。
鏡が無いので、目視できる範囲で。
まず、緑色のポロシャツを着ている。
多分麻のチノパンを履いている。
厚手の軍手みたいなグローブをはめている。
革製のブーツを履いている。
ロングソードを背負っている。
パジャマの時に被る様な、三角帽子を被っている。
背中には木製の丸い盾も背負っていた。
それと腰には頭陀袋。
「うーむ」
背中の剣を抜いてみる。
抜けない。
腕のリーチが足りないのだ。
「参ったな」
一旦革製のストラップを外してから、左手に剣を持って、右手で柄を掴む。
「抜けない」
そうだ、多分鯉口みたいなものがあって、親指でそれを・・・・
「駄目だ、抜けない」
回りの視線が気になった。
そう言えば、先ほどから往来の真ん中でバカな事をしていた。
俺はコソコソと道の脇に移動する。
丁度大きな木があったので、その木陰に入って、もう一度ロングソードを確認していると、
「何だ、抜けないのか」
右手の方向から渋い声がした。
「あ、はい」
俺はマヌケな返答をして、声の主に振り向くと、そこには明らかなドワーフが座っていた。
「見せてみろ」
俺の返事を待たずに、ドワーフは剣を取り上げてしまった。
「何だ、鞘と剣のサイズが合ってないな、待ってろ」
ドワーフは柄を掴んで、無理矢理剣を鞘から引き抜いた。
「ほれ」
その剣を無造作に放り投げてきたので、俺はへっぴり腰でそれを受け取った。
次いで、ドワーフはヤスリを取り出すと、鞘に何やら細工をして30秒。
「これでピッタリハマる」
と言って、またもや俺に鞘を放り投げる。
これも俺はへっぴり腰で受け取った。
「ど、どうも」
俺の声は上ずった。
「最近、勇者の数が増えてきたので、初期装備の剣も粗悪品が増えた。嘆かわしいことだ」
そう言ってドワーフもまた、城門の中へ消えていった。
「ど、どうも」
今度は普通に発音出来たが、お礼のタイミングを完全に外していた。
「おっとそうだ」
俺は早速剣を鞘に収めてみた。
スムースに入る。
逆さにしてみる。
落ちない。
軽く力を入れて抜くと、スーッと剣が抜ける。
「おお、凄いぞ」
俺は感動した。
ここまで学んだ事で大きいのは、剣は重い、と言うことだ。
「こんなものを振り回せるのか?」
しかし、夢にしては随分と剣の重さがリアルだ。
「ここで昼寝すれば・・・・起きたら元の世界に帰るさ」
俺は木陰の芝生に寝転んで眼を閉じた。




