ご依頼承ります
1.ご依頼賜ります。
「あなたには忘れられない人はいますか?
思いを告げることを躊躇して、忘れられない人はいますか?
恋愛でも、友情でも、尊敬でも、あらゆる感情から惹かれた人が在る方なら、あると思います。
この店は、お手伝いさせていただきたいと思います。
お手伝いさせていただくのは、忘れること、次に進む為の処理がメインです。
店主は、恐らくこの近く。
いつでも、どうぞ。
ただし、代償はいただきます。
どうぞ覚悟をもって、ご依頼なさいますよう。 店主は覚悟あるお客様をお待ちしております。
それでは」
看板も何もない店らしくない、和風の屋敷に
そんな掲示がなされていた。
それを見た少女は、漆黒の長い髪を一つに結い、高校の制服らしきものを纏っていた。
その少女は本気だったようだ。
玄関のベルをならせようとしていた。
すると、
「いらっしゃいませ。ご依頼ですね。」
背後から着物を着た女が言った。
どこか現実離れした生物的でないその女は、
黒の着物を着ていて、長い長い髪を結っていた。顔の口元にはほくろがあり、それが彼女の魅惑的な容姿の仕上げをしていた。口に化粧気はないものの、血塗られた様な赤色で、肌は透き通るような青白さを放っていた。
美しく、又、見るものはみな、吸い込まれるような妖艶さを備えている女だった。
静かな、美しさだ。
少女は、唐突な女の現れ方に流石に驚いたのか、女の色気に酔ったのか、すこしよろけた。しかし、少女ははっきりと答えた。
「ええ。代償も、覚悟しているわ。」
すると、女は言った。幾度もそんな言葉を渡されたことがある表情だった。そして、まるで、幾度もその言葉を放ち、慣れた様に
「それは、頼もしい限りですわ」
と答えた。何処か魅惑的に。何処か懐疑的に。
女は鈴をならし、澄んだ声で、
「ご依頼、賜ります」
と告げた。