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恋物語  作者: まきまき
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なつとかず に

「冗談だよ。お前があまりにも男に免疫ないからからかっただけだよ」

夏樹の胸のボタンを閉めながら僕は笑った。

「さ、宿題やろう」

とボタンを閉め終えて夏樹の顔を見ると、瞳いっぱいに涙を貯めていた。

「な、夏樹…」

と、僕が言い終えないうちに夏樹は部屋を飛び出して行った。

今思えばあのときすぐに追いかけて本当の事を言えば良かったのかもしれないけど、夏樹の涙が痛くて僕は立ち上がる事も出来ずベットにもたれ掛かったままだった。


僕と夏樹は友人同士の両親を持ち生まれる前から親たちは将来結婚させると決めていた。

産まれた日も同じで赤ちゃんの頃からずっと一緒。

幼稚園も小学校も中学校も高校も一緒。


親に言われたからって訳じゃなくて、僕の中で夏樹は小さい時から一番大切な一番大好きな女の子。

だから、中学入って夏樹がモテ始めた時には

「俺の好きな女だから手を出すなよ」

と先手を打って誰にも告白さえさせないようにした。

夏樹は気付いていないみたいだけど、それは今でも同じ。

誰にも告白なんてさせない。


そして女の子たちも同じように

「俺は橋本夏樹が好きだから誰とも付き合わない」

と伝えてあるし

「もしも橋本夏樹に何か言ったりしたりしたら女だろうとただでは済ませないからな」

と言っている。

だから、誰も夏樹には手を出せない。


夏樹は生まれた時から僕の大切な大好きな宝物。

だから誰にも触らせないし傷付けさせない。


ずっとそう思っていたのに…僕は夏樹を傷付けてしまった。


冬休みも残り僅かになったあの日、一緒に宿題やろうって話しになって僕は夏樹を部屋に呼んだ。


小さい頃からお互いの家を行き来して部屋にも自由に出入りしてる仲だし、その日もただ一緒に宿題しようって思ったんだけど、いざ夏樹が部屋に来ると何だか宿題に集中出来なかった。

いや、この日だけではなくて最近…いや中3くらいから僕は夏樹といると色々考えてしまうことが多くて…。


夏樹の細い指を見ると触れたくなり、柔らかそうな唇を見るとキスしてみたくなり、そうすると夏樹を抱きしめたいと思い、そのうち夏樹とヤりたいと思ってしまって…。


でも、夏樹が本当は僕のことどう思っているのか分からなかったから実行してしまう事は無かった。


欲望と理性。


この2つが、いつも僕の中で戦っていていつもは理性が勝っていた。

なのにこの日、立ち上がろうとした僕の腕を夏樹が引っ張った拍子に僕は夏樹の上に覆い被さる形で倒れてしまい、目を開けると間近に夏樹が見えて…僕は理性に負けた。

そのまま僕は今まで何度も触れてみたかった夏樹の唇に指でなぞるとそのままキスをした。

実はこの日のキスが僕にとって初めてのキス。

こんなにも愛しく相手を思えるものだからみんなキスするんだって僕は思った。

今思えば、そこでやめておけば良かった。

夏樹が愛しくてもっと夏樹を知りたくて触れたくて、

僕の唇は夏樹の唇を離れ頬をつたい耳をつたい首筋に…それと同時に僕の右手は夏樹のシャツのボタンを1つ2つと外していった。


愛しい夏樹はどんな顔をしているだろう?と3つめのボタンを外しながら見上げると、グッと唇を噛み締めて瞳には今にもこぼれ落ちそうな涙を貯めていた。


一瞬で僕は青ざめた。

自分がどれだけ自分勝手な事をしてしまったのだろう?と後悔した。

謝るべきなのだろうか?

冗談だと言って無かった事にすればいいのだろうか?


「…冗談だよ。夏樹があまりにも男に免疫ないからからかっただけだよ」


僕は無かった事にしようと思いそう言ったけど、冷静になって考えてみたら、冗談だと言ってしまった事が余計に夏樹を傷付けてしまったんだとそのあとすぐに気付いたけどもう遅かった。


その日以来、夏樹は僕と二人きりになることを避け、話もしてくれなくなった。

何度も謝ろうと試みたけど、謝るきっかけさえ与えてくれなかった。

そのままもうすぐ半年がたつ。


もう夏樹の事は諦めた方がいいのだろうか?

最近僕はそんな事を考える時もある。

彼女でも作ったら夏樹を忘れられるだろうか?

そんな事も考えたりしたけど、夏樹以外の女の子と腕を組んだりキスしたり…申し訳ないけど気持ち悪くてできそうもない。

だったらいっそのこと思いっきりフラれたら忘れられるだろうか?

と思い、僕は中学からの親友の中川に頼んで夏樹を誘ってもらいそのついでに僕も一緒に遊びに行って、あの日の事を謝り、夏樹にずっと好きだった気持ちも言葉にして伝えて最悪フラれようと思った。


中川は快く了承してくれて、僕たちは一緒にカラオケに行った。

夏樹は中川と楽しそうに笑いながら話をしている。

その笑顔を僕以外に見せないで欲しいような気持ちが大きいけど、もしも夏樹が中川の事が好きなら夏樹の為に僕が二人の仲を取り持ってやるのが夏樹への償いかもしれないとも思った。


だから、僕は夏樹に中川を好きなのか?って聞いた。

返事は無かった。

中川とは楽しそうに話してるのに、僕の事はシカトする夏樹の事がちょっと苛立って僕は

「お前、いつまで俺の事をシカトするの?」

と言ってしまった。

すると夏樹は部屋を飛び出して外へ出ていってしまった。


今度こそは夏樹を追いかける。

このチャンスを逃したら僕はどんな結果であろうと一生後悔する。

僕は町のなかに消えた夏樹を探した。


走り疲れて足がもつれかけてきた時に僕とは逆方向の歩道に男に話しかけられてる夏樹を見つけた。


横断歩道を渡り、夏樹の肩を掴む男の手を払うと男はどこかに消えたけど、夏樹は顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。


あの野郎、夏樹に何をしたんだ!

男を追いかけようとした僕の事を夏樹は止めた。


その後、僕たちはベンチに座ったけど、どう話をしていいのか話のきっかけがつかめないまま長い時間が過ぎた。

このまま今日が過ぎてしまったら、もう二度と夏樹とは話も出来ない。


「あのさ…」

僕はあの日の事を夏樹に話した。

本当は冗談じゃ無かったこと、でも冗談にするのが良いのかと思ってあんなことを言ってしまったこと、でもそれが夏樹を傷付けてしまった事も謝った。

そして最後の願い、夏樹のそばにいたいと伝えた。


夏樹の返事は無かった。


きっともう本当に終わったんだと思った。


僕は夏樹を家まで送った。

その間、二人には会話もなくて信じられない位長い時間が過ぎた。

夏樹の家の近くまで来たとき、僕は最後に今までの気持ちを全て伝えて悔いを残さず終わりにしようと思い、

「なつ、最後にどうしてもなつに聞いてもらいたいんだけど、親が言ったわけじゃなくて本当はずっとガキの頃から俺はずっとなつだけが好きだったんた。他の女の子といても、いつもなつだけだった。なつが好きで愛しくてなつに触れたくて…なつを傷付けるもの全てから守ってやりたくて。学校で一番モテる俺だけど、キスしたのもあの日が初めてで女の経験なんて無いからどうしていいのか分からなくて…本当にごめん」

僕は夏樹に頭を下げた。

「なつを傷付けてごめん。でも、今日で終わりにするから」

と僕が言うとなつが優しく僕の頭を撫でながら

「私もずっとかずだけだったよ。でも、あの日あんな風にされてかずは他の女の子にもこんな風にしてるのかな?冗談で出来るのかな?私も他の女の子と同じなのかな?って思って…。私は男の人に慣れてないしかずと同じようには出来ないとも思ったし…」

「なつ…」

顔を上げた僕になつは恥ずかしそうに

「かずは本当に私とキスしたのが初めて?あんな風にボタンを外したのも初めて?」

「そうだよ。他の女の子なんて気持ち悪くて出来ないよ。俺にとって好きな女はなつだけだよ」

と言うとなつは僕が倒れてしまいそうな位の勢いで僕の胸に飛び込んできた。

「かず…好き」










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